相も変わらず日本にやってこない映画を漁っている。
基本セル版を買っているので、外れた時のダメージはとんでもないが、その分、当たりの映画に出会えた時の喜びは大きい。最近、明らかに日本で公開される映画の数が減っていると思う。国内のリリースだけに目を向けていると見逃してしまう作品が多い。
というわけで今回も、そんな埋もれてしまっている素敵な映画を紹介していきます。
まずは『Don’t Speak』だ。
タイトルは『ドント・ブリーズ』から丸パクリ。その中身は、音で標的を感知する化け物に町が占領されて、そこに知らずにやってきた一家が決死の脱出を図るという話で、つまりは『クワイエット・プレイス』の完全なるパクリである。
こういった類の映画は大抵が大外れなものだが、なんと本作、かなり面白いのだ!
価格が2ドルと異常に安かったこともあり、あまり期待せずに鑑賞したのだが、思ったよりもだいぶ良く出来ていて面食らってしまった。こういう出会いがあるから映画漁りってやめられないですね。
開始早々、怪物の襲撃シーンでロケットスタート。しかも怪物がCGではなく着ぐるみというのが素晴らしい。この時点でこの映画を好きになっていた。
町が怪物の巣窟になっているとはつゆ知らず、そこに住む祖父母の家を訪ねる家族。彼らが舞台にやってくる理由付けにも納得がいく。本筋に至るまでのテンポもよく、サクッと登場人物を紹介すると残り時間は全てサバイバルに費やす構成。音を立てずに逃げなければいけないというサバイバルルールを、本家よりよっぽどちゃんと守っている。
クリーチャーによって体に卵を植え付けられる『ミスト』的な生理的嫌悪感を煽る描写もあり、非常に欲張りで満足度の高い作品。もちろん、グロシーンもちゃんと拝むことが出来る。
『クワイエット・タウン』とか適当なパチタイトルを付けられて日本に来ていないのが不思議。もし今後ひっそりと国内リリースされていたら、是非手に取ってほしい1本だ。
2本目は『Monsternado』。
なんだか聞き覚えのタイトル。そう、これは『シャークネード』に対抗する映画である。モックバスターの王たるアサイラムの作品にパチモンをぶつけてくるとは、中々気概がある。
本作の製作会社はイギリスにあるダークアビスで、ネッシーが襲ってくる映画とか安い映画を作っている、早い話がイギリスのアサイラムみたいなところだ。イギリスとアメリカでアニマル竜巻対決がひっそりと繰り広げられていたとは全く気付かなかった。映画の世界は広い。
シャークネードの竜巻はサメだけを巻き上げるが、本作のそれはタイトルの通り、サメだけでなくあらゆるモンスターを巻き上げて街に降らせる。
バミューダ海域で発生した竜巻なので、サメや巨大人食いタコといった実在の海の生き物だけでなく、プテラノドンや古代の殺人虫や古代の最強モンスターも竜巻と同化する。これらがまとめて都心にやってきて、至る所にまき散らされ、人間を襲いまくるというわけだ。そのため、見せ場が非常にバラエティ豊かで、単調さを感じさせない仕上がりになっている。
あっちではシャークネードさながらのフライングサメアタック、こっちでは頭から殺人虫が降り注ぎ、そっちでは巨大なタコが触手で人間をさらう。頭上には翼竜が飛び回り、外に居ようものなら即、空に連れ去られてしまう。
恐るべしモンスターネード!
CGはアサイラム映画並みに安っぽいものの、なぜか時々クオリティが上がる場面がある。その点ではアサイラム超えに成功していると言っていいかもしれない。アサイラムを超えたところで……ではあるが。
そんな本作は、色々手当たり次第に話を進めて、取っ散らかった見せ場を次々と投入して、クライマックスで一番活躍するのが巨大人食いタコという、まさかの『オクトパス in NY』リスペクトな展開を迎える。お前は…お前は、ヌー・イメージすらも取り込もうとしているのか……!!
恐るべしダークアビス。この会社が今後どのような方向に進むのか、今から目が離せない。いいですか、A24もスペクターヴィジョンももう古い。時代はダークアビスですよ!!
ここまでイロモノ(とはいってもちゃんと楽しいよ)が続いたが、次に紹介するのは極めて真っ当に面白い作品だ。タイトルは『There’s Something in the Barn』。長いが、日本語にすると「納屋になんかいる!!」である。
本作は、『グレムリン』にオマージュをささげた、少しブラックな要素のあるファミリーホラーである。
フィンランドの山奥の家に引っ越してきた家族。ある日、息子が納屋の中で小さいお爺さんの姿をした妖精を見つける。2人は次第に距離を縮めていくが、妖精と良好な関係を続けるには、いくつかのルールを守ることが必要だった。しかし、それを知らない家族は次々とルールを破ってしまう。その行為に完全にブチ切れた妖精は、仲間を率いて襲撃を開始する!
前半~中盤までは、雪の街の素敵な光景とあわせて、妖精との交流を中心に描いていく。この過程がとても丁寧で、何ならこのまま平和に終わっても十分に楽しめそうだ。だがそう上手くいかない。
それこそグレムリン的に次々とルールが破られ、妖精が殺戮モードに突入!それまでとは一転して『要塞警察』ばりの籠城アクションへと変貌していく。
家の中に突入してくる妖精たち!家族も負けじとその場にある物を武器にして撃退!DIY精神あふれる攻防戦が何とも楽しい。
人間も犠牲者が出るし、妖精もバンバン死ぬ。グロシーンはほぼ無いものの、しっかり容赦ない。後半はガッツリとバトルを描きながら、その中にハートフルな展開も盛り込んでおり、鑑賞後の満足度は非常に高い。劇場公開してほしいくらい良く出来ている。
これは、日本に上陸したら是非吹き替えでも堪能したい一本だ。
最後に紹介するのは『Malum』。
これは以前からホラー好きの中で話題になっていた作品だ。信頼できるホラー映画監督アンソニー・ディブラシが、かつて手掛けた『ラスト・シフト 最期の夜勤』をセルフリメイクしたのが本作。一部展開が変わっているが、大筋はオリジナルと変わらない。
基本的には閉鎖間近の警察署で一人夜勤をする女性警察官が、それはもうメッチャクチャ怖い目に遭いまくる!これだけである。
オリジナル版は、心霊現象の手数がとにかく多かった。
電話が鳴りまくり、ドアが開きまくり、怪現象が起きまくる。息つく間もない、イップ・マンのチェーンパンチ並みに怪異が襲い来るラッシュホラーであった。
本作もその要素がしっかりと継承されている。相も変わらず電話が沢山鳴る。それに加えて、元の内容と比較してグロ描写とモンスター要素が大幅に強化されている。恐らく使えるバジェットがかなり増えたのだろう。それを異形やインパクトのあるショックシーンに費やし、まさに悪夢のような映像を成立させている。
特に終盤の地獄絵図はすさまじい。
顔面肉片お化けを経ての、ラスボスモンスターのビジュアルは、ここ数年のホラー映画に出てきた化け物たちの中でもトップクラスで素晴らしかった。これを見せるために、ここまでのあらゆるお膳立てがあったのだ。こんな素敵なものを披露してくれるんですか!?と、観ているこちらの腰が引けちゃうくらい眼福。
ラスト・シフトと大体同じだが、アップデート部分がことごとく素晴らしかったので大満足。ディブラシ監督のホラー演出スキルの向上っぷりと特大のサービス精神を堪能できる傑作。ホラー好きなら観ない手はない!
というわけで、今回は4本の埋もれている作品を紹介しました。これらの作品も早く日本に来ることを祈っている。とはいえ、再始動したV/H/Sシリーズが未だに1本も日本に来ていないような状況なので、中々厳しいかもしれないなあ……。
紹介した作品の作品情報と予告編
制作年:2020年
上映時間:83分
監督・脚本:スコット・チェンバース
出演:ステファニー ロッジ、ジェイク・ワトキンス、ライアン・デイヴィス
amazon:https://amzn.to/3Ozo23U
制作年:2023年
上映時間:81分
監督:タイラー・ジェームス
脚本:デレク・ミラー
出演:デレク・ミラー、ダニエル・スコット、クロエ・カー
楽天:https://item.rakuten.co.jp/americanpie/uckd9509dvd/
制作年:2023年
上映時間:100分
監督:マグナス・マルテンス
脚本:アレクサンダー・カークウッド・ブラウン
出演:マーティン・スター、アムリタ・アチャリア、キラン・シャー
制作年:2023年
上映時間:92分
監督:アンソニー・ディブラシ
脚本:アンソニー・ディブラシ、スコット・ポイリー
出演:ジェシカ・スーラ、ナタリー・ヴィクトリア、モンロー・クライン
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