去年からダラダラと転職活動を続けているのですが、求人票を見ると蕁麻疹が出るくらいには嫌になってきました。
たいした職歴も学歴もスキルもない…。そんな絶望的な中、映画を見て現実逃避しています。最近は書類通過もできず弱ったメンタルのおかげで、架空の企業に「就職できそうかなあ」と考えるようになりました。怖い。
たとえば、映画『ザ・サークル』は超大手SNS企業を舞台に、主人公メイ(エマ・ワトソン)が企業の理念である「透明性」という名のプライバシーの破綻を目の当たりにしていくサスペンス。
最高の企業にはヤバい実態が隠れていて…。なんていう定番の展開もあります。
ただ、企業理念が物騒なのに反して、福利厚生や待遇はマジ充実しているんです(羨)
超大手企業が登場する映画『ザ・サークル』とは
2017年に公開された映画『ザ・サークル』は、派遣社員としてコールセンターに勤める主人公メイ(エマ・ワトソン)が、世界一ホットなSNS企業「サークル」に転職する社会派ドラマです。
しかしメイは「全人類をオープンにする」という企業理念に疑問を抱いていくことに。その理念は人々のプライバシーを根底から揺るがし、簡単に自分の情報をシェアできる現代において、プライバシーの必要性を訴える作品となっています。
その代表的な「サークル」の企画が、メイの1日を生配信するというもの。プライバシーを無くすことで、秘密や嘘のない信頼性を打ち出せるはずでしたが…。
主演をエマ・ワトソンが演じるほかに、「サークル」のカリスマ経営者ベイリーをトム・ハンクス。メイの親友で「サークル」の幹部までのし上がったアニーをカレン・ギランが演じています。
「サークル」を有名にしたSNSの開発者には『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でフィン役を演じたジョン・ボイエガが抜擢されました。
そして彼らが働く超大手企業「サークル」ですが、会社の規模をはじめ、待遇、福利厚生、面接などすべてが規格外。いいなあ。こんな会社で働けたら楽しそう…。
架空の求人票を書いて現実逃避をする
というわけで、最近求人票ばかり見ていて精神的に辛いので、現実逃避がてら「サークル」で架空の求人票を作ってみることにしました。映画は慰めに最適です。
なるべくリアルな求人票になるよう書いてみます!
求人票の構成
自分は5回転職をしていますが、世の中には一度も転職活動をしたことがない人も当然いるはず。まずは簡単に求人票の構成を見てみます。
求人票には法律上絶対に記載しないといけないことがあります。
- 仕事内容
- 契約期間
- 試用期間の明示
- 就業場所(勤務地)
- 勤務時間
- 休憩時間
- 休日
- 給与
- 時間外労働の説明
- 加入保険
このほかにも、募集者の氏名や名称、派遣として雇用する際の雇用形態、受動喫煙防止(職場は完全に禁煙か、喫煙ブースがあるかなどの明記)を記載します。
大手転職サイトだと、これにプラスで「この仕事に向いている人」「職場の雰囲気(従業員の年齢層など)」が記載されることが多いです。
ちなみに最近何かと話題の「固定残業代(みなし残業)」の書き方も法律で決まっており、基本給に加え…
- 何時間分の残業と残業代が固定になっているか
- 固定残業時間を超えた場合は別途残業代を支給する
といったことを記載しないといけません。
最近は固定残業代にかかわるトラブルも多いため、厚生省でも正しい記載方法を呼び掛けています。
一方で、固定残業代制を採用しているけど、求人票にあえて残業代の有無を記載しない企業もあります…。
webの求人票ページにて「残業代」などと検索してヒットしなければ、固定残業代制を採用している可能性が高いです。応募する際は、面接のときにちゃんと残業代について確認するか、不安な場合は応募を避けるのがベターでしょう。
必須情報がほぼわからない『ザ・サークル』
(↑)この情報が全て社内でシェアされる…。
話が逸れましたが、映画内で「サークル」の勤務地や勤務時間、正確な給与は明言されません。公式サイトなどにも記載はなく、「世界No.1のシェアをほこるSNS企業」とあるだけでした。
上記に書いた必須事項のうち、明確にわかるのは主人公・メイの仕事内容(顧客対応)と福利厚生くらい…。
メイの仕事を見ると、勤務時間は一般的な9:00〜18:00の様子。給与も不明ですが、メイが前職(派遣のコールセンター)と比較した発言から、並みの正社員よりかなり好待遇であることがうかがえます。
日本の場合、一般的なコールセンター職の初任給が20~25万円(都内)なので、それよりはかなり上と考えるのが自然でしょう。
だいぶ怪しげな求人になってしまった…。
作中では「知らない人はいないくらいの大企業」として扱われている「サークル」なので、実在の企業に置き換えたら「Google」とか「twitter」に近いのでしょうか。確かにGoogleとかの求人って、どこで見れるんだろう…?マ〇ナビとかではみたことないけど…。
仕事内容は意外とシンプル
仕事内容は作中で詳しく紹介されています。とはいっても、「サークル」は超大企業なので、メイの配属する部署は氷山の一角です。
メイが担当する仕事は前職と似た「顧客対応」です。違いといえば、前職が電話対応だったのに対して、「サークル」ではほぼチャットでのやり取りに。会社が運用するサービスのユーザーサポートのようです。ただ、顧客は一般人ではなく、中小企業の法人とのこと。
「顧客体験が優れたものではないと、顧客は離れてしまう」と先輩社員が言っているように、対応後は顧客から必ずアンケートで評価されます。その点数によって従業員を評価する制度が設けられていました。
ざっと求人票風にまとめると、以下のような仕事内容になります。
大手SNS企業なので、さまざまなサービスや商品があるのですが、メイの仕事が法人向けということはわかりました。
コールセンター系の求人は、仕事のやりがい・キャリアプランをしっかりと推すタイプと、マニュアルどおりにやるだけの安定・敷居の低さを推すタイプに別れている印象を受けます。「サークル」は無論前者でしょう。
圧倒的つよつよ福利厚生の数々
なんといっても「サークル」の凄い点は、並みの企業では逆立ちしても勝てない充実した福利厚生です。まずは求人票でよく見る形で「サークル」の圧倒的福利厚生の数々を見てみましょう。
コレだけ充実していれば、社内食堂だって完備されているでしょうし、一般的に「あったらいいな」と思える福利厚生は軒並み揃っていそうです。皆さんが勤める企業と比較してみていかがですか?
作中では僧侶がメイとすれ違うシーンがありましたが、あれはなんの福利厚生なんだろう…ガチ瞑想…?
ちなみにアメリカは医療費が高額なうえに、日本のような国民健康保険制度がないため、企業が健康保険を提供するのは求職者にとって非常に大きなメリットになります。
そのうえ「サークル」は従業員の家族まで企業の保険に加入できるというのだから、めちゃくちゃ福利厚生に力を入れていることが分かります。
ここまで見ると「サークル」が超ホワイト企業に見えますが、人によって明暗が別れるのは「サークル」の社風や理念です。
好みが真っ二つな社風・経営理念
「アットホームな職場です!」「風通しの良い会社です!」というワードをよく求人票で目にしますが、最近では求職者からネガティブにとらえてしまうことも多いです。
そして「サークル」はもろにこの2つを打ち出していました。
上記の訴求ポイントは「会社の仲間は楽しく働ける人がいい!」という人には刺さりますが、「プライベートまで干渉されたくない」という人には逆効果です。
今は企業でも多様性を意識する時代。「仕事にやりがいを見出す人」と「仕事はあくまで生活のための手段」と考える人をそれぞれ受け入れている会社はかなり優良企業だと感じます。
残業してでも稼ぎたい人と、定時でしっかり稼ぎたい人がそれぞれ理想の働き方を実現しているようなイメージです。
「サークル」では少なくともマイノリティを排する様子は一切見られませんでした。一方で「風通しの良さ」と言うと、働き方や成果に関しては徹底的に管理・共有されます。無論、サボったり評価を水増ししたりすることは不可能です。
それは当然のこととして、問題は従業員の個人情報も社内で共有を強いられる点です。プライベートなことはもちろん、従業員の健康状態まで把握・共有されるのです。
この「共有」こそ会社の掲げる経営理念のひとつ。
「サークル」のカリスマ経営者ベイリーは全人類を隠し事なくオープンにする完全な社会を目指しており、人々がいつでも繋がり、経験をシェアし、刺激的な日々を送ることを目標としています。そしてそれらは社内でほぼ実現しているのです。
福利厚生がめちゃくちゃいいのに、社風や理念がキショすぎて一気に応募意欲が失せちゃいました…。
なお、福利厚生欄にサラっと書いた「パーティーランク制度」とは、社内イベント(業務後)に参加することでポイントが加算され、従業員の評価に繋がる制度です。
日本でも社内イベントに参加したり、上司のご機嫌を取れる人の方が評価されるという(良くない)風潮を耳にしますが、それに近いモノを感じます。ちなみに1週間のうちにメイの元に届いた社内イベント案内は8000件でした…。
この企業に入社するのはプライバシーを放棄するに等しい行為でもあるので、給与や待遇のために、プライバシーをゴミ箱に捨てられる人には良い企業だと思います(転職サイトで見かける元職場への嫌味むき出しな口コミ)
実際に求人票を作ってみた
これまで紹介した情報をまとめて、実際にデモサイト風で求人票を作ってみました。デザインの既視感がすごいのはお察しください。ちなみに筆者はエン〇職派です(見やすいので)
実際のページはこちら
いかがでしょうか?最後に「サークル」で働くうえでのメリット、デメリットをまとめてみました。
メリット
・中小企業にはマネできない充実の福利厚生
・給与が高そう
・顧客による評価制度でモチベーションを維持
・陰湿な従業員がいない
・会社の設備がめっちゃキレイ
・有名企業で働けるステータス
デメリット
・プライバシーは皆無
・従業員がほぼ全員ベイリーの信者と化している(多様性のなさ)
・社内イベントにも評価制度がある(事実上の強制参加)
・徹底的に管理されるので裁量権はほぼない
・役員はドーピングしながら働いている(2,3時間睡眠)ので、出世欲が湧かない
恐らく待遇面はどこの企業よりも申し分ないはずです。仕事内容も“やらされ仕事”ではなく、しっかり評価制度が整っている点も評価できます。
一方で、経営理念が「プライバシーの撲滅」のため向き不向きは凄そうです。
「経営理念を気にして働いてる人なんているの…?」という気持ちもわかります。経営理念は社風と通ずるところがあるので、理念=長く勤めることができるか?という見極めポイントにもなるのです。
例えば設立ほやほやのベンチャー企業の多くは「会社も個人も成長していこう!」みたいな理念を推すことが多く、社員も「仕事重視!」「休日もセミナーいっちゃいますよぉ!」みたいな人が集まるので、自然と社風は「仕事にガンガン打ち込む体育会系気質」になることが多いです。
正直こんなにプライベートが保証されない会社が実在したら離職率えげつなさそう…。理念にはいったん目をつぶって、3年くらい福利厚生などの超好待遇を吸い尽くし、企業ブランドを振りかざして転職するのが勝ちパターンな気がします(最悪な発想)転職活動なんてすぐバレそうですが…。
…と、いろいろ書いてきましたが、『ザ・サークル』が伝えたいことは企業自慢ではなく、プライバシーのない世界が人々にとって本当に理想なのかを問う社会派サスペンスです。
仕事とプライベートをしっかり分けたい人が本作を見ると、その企業理念にめまいを覚えること必須なので、反面教師的な作品として非常におススメです。
最新のスリラー映画