暴力神父!殺人ロボサンタ!クリスマスに殺りたい映画がある!日本未公開クリスマスホラー映画2本立て!

世界を洗脳しまくっている神の子、イエス・キリスト。彼が現世に降誕した日がクリスマスだ。そしてクリスチャンに限らず世界の人々がはしゃいでしまう、いわゆるホリデーシーズンを象徴する日でもある。
日本でも年末のクソ忙しい時期かつ祭日でもないのに、皆が家族やパートナーと食事やプレゼント交換やらを楽しむ習慣がある。ついでにラブホテルが満室になる奇妙な日でもある。所詮、資本主義社会のお膳立てで消費活動をさせられているに過ぎないんですけどね!

斜に構えたウンチクはさておき、クリスマス/ホリデーシーズンといえば秋のハロウィン、夏のサマーキャンプに次いで、ホラー映画が春の猫のごとく盛る期間。え?ホラー映画なんて季節なぞ関係なく盛っているじゃいないかって?
そりゃあそうなんだけど、家族で楽しく過ごす休日が血で染まる様やクリスマスのアイコンであるサンタクロースが人をブチ殺すギャップ、そして白銀の雪が血で染まっていく“画”は最高じゃないですか?だから皆、こぞってあの手この手でネタにするのですよ。
しかも、他の季節ネタと違って、聖夜を血に染める殺人サンタ、ホームパーティを台無しにする怪物の襲来、雪の山荘を舞台にしたミステリーなど、ネタが尽きないのも不思議なところ。さすが神の子が降臨しただけあって、不吉極まりない!今回は、そんなホリデーシーズンホラー2本をご紹介するぞ!

最初に紹介するのは『The Retaliators』(2021年)。品行方正なシングルファーザー神父が復讐の鬼と化すリベンジスラッシャーだ。

© 2020 Better Noise Films

主人公の神父ビショップ––紛らわしい名前だ––は、2人の娘サラとレベッカを男手ひとつで育てているシングルファーザー。彼はクリスマス礼拝にクリスチャンロックバンドを呼んで教会でライブをするなど、今風の「やれる」神父。くだけた礼拝で人々の心をつかむビショップは非暴力がモットー。クリスマスツリー選びでレベッカが割り込みをされても、割り込み相手には文句を言わずに「メリークリスマス!」の一言で済ませる。

「右の頬をぶたれたら、左の頬を差し出しなさい」

を地で行く、素敵な神父であり父親なのだ。

© 2020 Better Noise Films

ところがある日、娘のサラがマッチョなギャングに殺害されてしまう。愛娘を失ったビショップは途方に暮れる。そんな彼の前に現れたのは、元警官のジェド。彼は犯罪者を拉致っては地下室に閉じ込めて拷問するド変態。サラを殺害したギャングを捕まえると、彼はビショップに「ともに犯罪者に天誅を下さないか?」と提案する。
だがビショップの信仰心は、仇討ちの復讐心と同様に強く、彼はジレンマに苛まれる。ジェドはウダウダと悩み続けているビショップにしびれを切らし、「ここで、よーく考えなさい!」と地下室に閉じ込め、洗脳を試みる。熟考の末にビショップが下した判断は、とらわれた犯罪者を逃がすことだった。ところが、長期間地下に閉じ込められた犯罪者軍団は手が付けられないほど狂暴化しており、目に映るもの全てに襲い掛かる凶暴なゾンビとなっていた。「殺らねば殺される!」極限状態に達したビショップの野生が目覚める。

© 2020 Better Noise Films

優しい神父が追い込まれた果てにブチギレ。片っ端から狂暴化した犯罪者を血祭にあげていくゴキゲンな映画だ。

© 2020 Better Noise Films

神父ビショップを演じ、共同監督も兼任したマイケル・ロンバルディはロックミュージシャンでもあることから、劇中曲もパパ・ローチ、アスキング・アレクサンドリア、ファイブ・フィンガー・デス・パンチ等々、エモエモなロックでテンション爆上がり。チョイ役でモトリー・クルーのドラマー、トミー・リーも出演しており、エンディングテーマはモトリー・クルーの書き下ろし曲となっている。
結構な血量かつ、強烈な人体破壊描写が連発するため見過ごされがちだが、宗教的なアプローチをしているシーンがいくつか紛れ込んでいるのも本作の魅力の一つ。

© 2020 Better Noise Films

例えば映画後半、マッチョギャングとビショップが対峙する場面。マッチョギャングの背後からは光がさしておりやたらと神々しい。これはマッチョギャングを神の使いに例え、ビショップが「暴力をもってして制裁を加える」行動をとることで神へ反抗している・・・という意味にとらえられる。
その一方で、殺される女性が受動的であったり、娼婦であったりと性差別的な映画という見方もできる。実際、イギリスのザ・ガーディアン紙では「断固として性差別的作品」と批判されている。しかし、品行方正だった神父が、マチズモに目覚めてしまう映画という見方をすれば、楽しくみられるのではなかろうか?それに“一般的な”女性が暴力の前では圧倒的な弱者であると示すのは、逆説的な社会批判といってもいいのでは……?
うっかり難しいことをかいてしまったけれど、単純にブチギレ神父の暴力行為を楽しもうではないか!だってホリデーシーズンなんだもん!神父だって、人間。むかつけば人も殺すさ!

© 2022 Christmas Bloody Christmas LLC. All Rights Reserved.

次に紹介するのは、我らがジョー・ベゴスの新作『Christmas Bloody Christmas』(2022年)だ。『人間まがい』(2013年)で長編デビュー以降、精力的に活動しているジョー・ベゴス。本国ではソフトスルー作品でも、日本ではイベント上映ながらも劇場公開されている人気監督である。ベゴス作品は色彩感覚と幕間を読ませる脚本、そしてCGをほぼ使わず、豪快な人体破壊と火薬を使った爆破シーンが特徴だ。有り余る制作意欲を発揮させ、前代未聞の同時撮影を行った前作『ブリス』(2019年)と『ベテラン』(2019年)はどちらも最後に極彩色を迸らせながら爆発するぶっ飛んだ作品だった。

『Christmas Bloody Christmas』は、彼の作品では初めての「シーズンもの」である。オモチャ屋さんの店頭に飾る接客用ロボットサンタクロース––要は「呼び込み君」をハイテクにしたサンタクロース––が、プログラムの不具合により暴走。斧を片手に聖夜の夜を値に染めるだけ。これまでのベゴス作品にはなかった軽さは、まさにベゴスからのクリスマスプレゼントといったところか。

※こちらが呼び込み君(Wikipediaより)

しかし、キャラクター設定はいかにもベゴス。殺人ロボサンタに追いかけられるのは、主人公はレコード店で働くトーリとパートナーのロビー。この2人のやり取りが映画好きにはたまらないものになっている。なんといっても映画の続編談義が最高に楽しい。

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トーリが「『ペット・セメタリー2』が良い!」と豪語。「ありえねぇ、なぜだ?」と返すロビー。「エドワード・ファーロングがイケてるからだろ!」とバッサリ言ってのけるトーリ。筆者的には「ありかな」と思うのだけど、一般的には“なし”だろう。『ペット・セメタリー2』は制作当時、1作目の生き残りである少女を主人公に据えるはずが制作会社のパラマウントが日和って、当時『ターミネーター2』(1991年)で人気を絶頂だったエドワード・ファーロングを主役に立ててのは良かったが、あまりも酷味が過ぎる脚本で大コケした作品だからだ。なんと言ってもクランシー・ブラウン演じる極悪親父が可愛いペットのウサギさん殺す件は今でも語り草となっている。未見の方は是非この機会に見てほしい。さらに、このやり取りは「『チャイルド・プレイ』は2、『エイリアン』はコヴェナント」等々、ヒネた映画ファンが歓喜する会話へと発展していくのだ!しかも言葉が汚い!IMDBのトリビアによれば、1分間に5.6回、総計487回の「よくない言葉」が使われているそうな。

© 2022 Christmas Bloody Christmas LLC. All Rights Reserved.

閑話休題。本作は登場人物に対して死が平等に訪れるのがポイントだ。セックスしていようがいまいが、楽しい家族団らん中だろうが、男も女も子供も老人も全員殺す。だって相手は暴走ブログラムロボサンタだもん。忖度無しですよ!
ベゴスは当初、『悪魔のサンタクロース 惨殺の斧』(1984年)のリメイクを提案していたという。ところが、なぜか彼の頭の中ではターミネーター風のアンドロイドサンタを登場させたら面白いんじゃね?となり、この『Christmas Bloody Christmas』が制作されたとのこと。
確かにラスト近くにロボサンタの衣装が剥げて、完全にターミネーターの“それ”になる。だけど「パクりじゃん!」と思う前に、ベゴスの極彩色ライティングと常軌を逸し来た火薬の量はそんな言葉を吹き飛ばしてしまうのだ。

© 2022 Christmas Bloody Christmas LLC. All Rights Reserved.

だって、目から緑のレーザー光線を出すサンタクロースってかっこよくないですか?かの大手海外ホラーサイトBloody Disgustingですら

The Blood-Soaked Robot Santa Movie You Didn’t Know You Needed
(今見るべき、血まみれロボットサンタ映画)

として、このホリデーシーズンのイチオシホラー映画としているのだ!
いまだ16mmフィルムを使うこだわり、長年の付き合いのスティーブ・ムーアが奏でる往年のシンセサイザーをベースとした劇伴。ベゴスマジックはいかなるシーズンでも万華鏡のように我々の目を狂おしいほどに引き付けるのだ。

© 2022 Christmas Bloody Christmas LLC. All Rights Reserved.

以上、2本のホリデーシーズン映画を紹介させていただいた。今シーズンも例年のごとく両手に余るほどの本数のホラー映画がつくられているが、この2本は選りすぐりだ。

今後も未公開映画をモリモリと紹介していくので、引き続きよろしくお願いします!
では、Merry FxxK’in Christmas!!!

The Retaliators予告編
Christmas Bloody Christmas予告編

The Retaliators IMDb:https://www.imdb.com/title/tt11261830/

Christmas Bloody Christmas IMDb:https://www.imdb.com/title/tt22042742/

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