最強怪獣キングギドラ、子どもたちをさらう。『モスラ3 キングギドラ来襲』

ツナ缶食べたい

 日本国内を超え、今や全世界が待ちわびたシリーズ最新作、『ゴジラ-0.0』の公開まであと一ヶ月を切っている。アカデミー賞視覚効果賞を受賞した『-1.0』の二年後の世界を描くという物語もさることながら、先日公開された本予告にてある怪獣の参戦が予告されたことで、その期待は最高潮まで高まっている。

 ゴジラ最大のライバル、キングギドラ。金星を滅ぼした宇宙怪獣として、あるいは未来人の手先として、またある時は大和のくにの守り神として、ゴジラと死闘を繰り広げてきた三つ首の竜。仮に『-0.0』に彼が登場した場合、国内の実写ゴジラ長編映画にて怪獣バトルが描かれるのは2004年の『FINAL WARS』以来ということもあり、まさしく「待ちに待った」瞬間が訪れる、ということでもある。

 そんなキングギドラ氏だが、実はモスラ映画においてもラスボスを務めた経験があり、その強さは今でも語り草となっている……というのは好事家の間だけであり、案外見逃している方も多いのではないか、という『モスラ3』を今回ご紹介したい。VSゴジラとは異なる、翼を持つ者同士の空中戦においても、ギドラはめっぽう強いのだ。

王の空位を守り抜いた平成モスラ三部作

 モスラ「3」というだけあって、彼女を主役とした三部作についても触れなければならない。1995年の『ゴジラVSデストロイア』によって、いわゆる「平成ゴジラシリーズ」は一区切りが打たれた。ところが、結果として1998年に公開されることとなったローランド・エメリッヒが監督するハリウッド版ゴジラまでの間、シリーズに空白期間が生まれてしまう。

 そこに颯爽と現れたのが、モスラを主役とした新シリーズであった。1992年の『ゴジラvsモスラ』が大ヒットを飛ばし、女性客にも強い人気があったというモスラは、怪獣王不在の数年間を支える救世主。子どもたちの冒険譚という側面や環境保護、モスラと深い繋がりを持つエリアス姉妹の絆を中心に据えた三部作は、モスラらしい極彩色に溢れた華やかな造形や美術が、ゴジラシリーズとはまた異なる魅力を放っていた。

Amazonより引用。三部作を収録したBlu-rayが発売中。

三部作の最後を飾るキングギドラ、まさかの児童誘拐

 平成モスラ三部作は、1996年の第一作にてデスギドラ、97年の第二作にてダガーラと呼ばれる新怪獣と死闘を演じた。そのどれもが凶悪かつ強大な敵怪獣なのだが、モスラはその命を次世代に繋ぎ、さらなる進化を遂げて、私たちの世界を守ってくれた。

 そして来る最終作では、あのキングギドラとの決戦が待ち構えていた。ゴジラシリーズの作品群にて共演こそ果たしてはいるが、サシの勝負は実は初めて。お互い東宝特撮スターを務めて長いが、ゴジラ抜きの共演は、結構レアなのだ。

 本作のキングギドラは、隕石を伴って地球にやってくる。本作が1998年公開ということもあり、ノストラダムスの大予言になぞらえて「恐怖の大魔王」と呼ばれているが、事実このギドラは作中世界においては恐竜を絶滅させた個体なので、今回はなんと人間を滅ぼさんとしてやってくるのだ。

 覚醒したキングギドラは突如として市街地を強襲。翼を広げた三つ首の巨大な竜のシルエットが街を飲み込む圧巻の映像に惚れ惚れさせられるが、このキングギドラ、寝起きにやることが子どもたちの誘拐である。なんでも、人間の子どもを集めて、それらをまとめて自分のエネルギー源にしようとしているらしい。

 そのことに特化してスキルツリーを伸ばした結果なのか、本作のキングギドラは建物を破壊することなく中にいる子どもたちを回収するスキルを身に着けており、大人たちが困惑し恐怖する中、子どもたちがこつ然と消える瞬間は、ホラー風の演出がなされている。かの平成仮面ライダーには「平成生まれだけを吸い込むブラックホール」が登場するが、今作のキングギドラはその先駆けと言ってもいいのかもしれない。

 そんな人さらい行為許すまじ!とやってくる我らがモスラだが、ついに実現したモスラVSキングギドラの初戦こそ、東宝特撮のダイナミックな迫力に満ちた映像となっている。多彩な光線技でギドラを翻弄するモスラだが、三つの意思ある頭を持ち、身体の大きさもまるで異なるギドラに、モスラはまるで歯が立たない。

 モスラとて前二作の激闘を乗り越え、進化を遂げた個体なのだが、恐怖の大魔王キングギドラはさらに強い。本バトルでは光線技の応酬に留まらず、激しい肉弾戦も描かれるのだが、より高く飛翔しては上空からモスラを踏みつけ、左右の首でモスラの両翼を噛んで吊し上げるなど、かなり痛々しい表現が含まれている。可憐で愛らしいモスラが最凶のヒールに踏み潰され、身動きの取れなくなる映像は、かなりショッキングだ。

 キングギドラには正攻法で勝てない、と判断したモスラは、自分が過去に飛び成長する前の若いギドラを倒すことを提案する(この頃のモスラは水中適応や時間遡行もできるくらい強いのです)。何気に善玉枠が『ターミネーター』のスカイネット側の発想に辿り着く物語は相当レアな気もするのだが、かくしてモスラは恐竜たちがギドラに滅ぼされる直前の、白亜紀まで時間旅行を決行。

 この白亜紀パートには、若かりし頃のキングギドラが登場。完全体よりも身体が小さく、必殺の引力光線も撃てないものの、たとえ幼くともギドラなので、めちゃくちゃに強い。その俊敏性を活かしモスラの強力な遠距離攻撃の間合いから逃れたり、やはりその巨体を活かした接近戦を挑んできたりと、その賢さは現代戦とも変わらず。たまらずモスラは、相討ち覚悟で若いギドラを火山に葬り、現代のキングギドラも消失。子どもたちはようやくキングギドラドーム(子どもたちを集めて後で溶かす、エグいドーム)から解き放たれた。

 ところが、モスラによって切断された若いギドラの尻尾の一部は生きており、そこから時間をかけて再生することで再び現代にギドラが襲来。一方、モスラは白亜紀から現代に戻ることができず、ついに人類滅亡か?と思われたその時、最後の奇跡が起こる――。というわけでモスラVSキングギドラの最終決戦に行き着くのだが、その直前にギドラの尻尾が生きていることを示すシーンで、日頃の食物連鎖も忘れティラノサウルスとトリケラトプスが「これヤバない?」と顔を見合わせる迫真の演技は必見だ。

そして、ゴジラ対キングギドラへ

 かくして、モスラ映画においても最強最悪のラスボスを務めたキングギドラだが、『ゴジラ-0.0』は戦後日本、かつ前作のゴジラ襲撃を受けてわずか二年というタイミングでの来襲ということで、今一度この国を絶望に叩き落とすに足る存在と言えるだろう。首を三つ有し飛行する竜など、当時の生物学でも解き明かせるはずもないし、本予告で宣言された「鳴神作戦」も、そのネーミングからむしろゴジラよりもギドラ殲滅を目的とした作戦になるのではないかと予想される。

 今現在、そのデザインすら明かされていないキングギドラ(2026)は、いったいどのような破壊をもたらし、ゴジラ、そして日本人といかなる闘いを繰り広げるのだろうか。その全貌が明かされるまで残り一ヶ月を切っているのだが、強すぎるあまりたぶん作品時空も超えられるであろう平成モスラが最後の手段になるかもしれない。いえ、冗談です。そんなオチにならないことを祈っています。

『モスラ3 キングギドラ来襲』はU-NEXT、Netflixにて見放題配信中
https://video-share.unext.jp/video/title/SID0012628
https://www.netflix.com/title/70189334