『ウォー・マシーン: 未知なる侵略者』は、よく行く居酒屋みたいな映画だった。

ツナ缶食べたい

 人にはそれぞれ、「定番の居酒屋」という概念があると思う。お酒を飲まない人は、定食屋やカフェに置き換えて考えてみてほしい。奇抜さや新鮮味はない代わりに、思った通りの味が思った通りの金額でお出しされて、そこそこの満足度でお腹と酔いを満たせる、そういうお店が。

 なぜいきなりそんな問いかけから始まったのかというと、今回ご紹介する映画『ウォー・マシーン: 未知なる侵略者』がまさに「こんな感じ」だったんですよね。とりあえず頼んだ枝豆と唐揚げが想定通りの味で、奇をてらったお通しやメニューがない代わりに誰を連れてきても失敗はしない、安牌の居酒屋のような映画。

 いや、褒めてるんですよ。マジで。

 『ウォー・マシーン: 未知なる侵略者』は、3月6日に配信が始まったばかりのNetflixオリジナル映画。監督は『エクスペンダブルズ3』のパトリック・ヒューズで、主演を務めるのは『アンジェントルメン』でメガネのムキムキマッチョことラッセンを演じたアラン・リッチソン。その他、デニス・クエイドやジェイ・コートニーが名を連ねている。

 あらすじはこうだ。脱落者が続出するほど過酷な訓練で知られる米陸軍レンジャー隊の選抜試験にて、驚異的な忍耐力によってトップの成績を叩き出した「81番」の男を、教官は扱いあぐねていた。2年前にアフガンで弟を失った81番は、その経験のせいで苛烈に自分を追い込む癖があり、いかに能力が高くとも孤独を好むため、リーダーのポジションを固辞していたからだ。それでも彼の素質を見極めるため、上層部は最終訓練のリーダーとして81番を任命する。

 ついに始まった最終の模擬訓練。訓練兵たちの士気も高く、必ず全員で突破しようと誓い合う最終選抜者たち。ところが、訓練が行われる実地には見慣れぬ大型の機械が横たわっており、81番は墜落した飛行機を発見する。異常を察知した81番は退却を指示するのだが、突如謎の機械が起動し、兵士たちを襲撃する。謎の機械の正体とは、宇宙から飛来した大型の殺戮マシンだったのだ!!

 いきなり大ネタをバラしてしまい恐縮だが、これは予告編で明かされている範囲なので、公式的にはセーフだろう。『フルメタル・ジャケット』を思わせるスパルタな訓練模様に始まり、屈強な兵士たちが謎の存在に追い立てられ森でサバイバルを繰り広げる、『プレデター』一作目のオマージュに移行する。これが本作の大まかな構造だ。

 今作に登場する敵の巨大マシンは、『バトルシップ』の敵戦艦に二本足を追加したビグザムスタイルで、機銃の掃射や爆弾を撒き散らして人類を追い詰めるだけでなく、ゴジラめいた必殺技で全てを薙ぎ払っていく。世界の小島監督も配信開始早々に本作をご覧になられたということだが、二足歩行の兵器繋がりで『メタルギア』を思い出す方も多いだろう(本作の日本語吹き替えにはスネークでおなじみ大塚明夫氏も参加)。

 ここまで既存のタイトルを列挙してきたが、本作『ウォー・マシーン: 未知なる侵略者』がまさに過去の名作良作のパッチワークであると感じたからこそ、読者の皆様の映画IQに訴える形の記述を心がけている。過酷な訓練を耐え抜き、硬い絆で結ばれた兵士たち。大怪獣の如く暴れる巨大マシーン。負傷し動けない兵士を背負いながら、見つかったらゲームオーバーというスリルをくぐり抜ける。仲間の屍を背に、トラウマを抱えた主人公が決死の覚悟でラストバトルに臨み、過去の傷を払拭していく。あらすじを読んで思いつく全てがあり、過不足無く整った映画。定番メニューはとりあえず揃っている、安定の居酒屋。

 重厚なミリタリー映画と思わせて実はSFもの、という大風呂敷こそあれど、それ以外は際立った要素もなく、どんでん返しも映画史を塗り替えるような特筆すべきものもない。実直にジャンルのお約束を取り揃え、それが思ったタイミングで提供される。しいて言うならば、敵の攻撃を受けた兵士のダメージ描写がかなり容赦ないのだが、それも本作ならではとは言えまい。

 いったい映画をオススメしたいのか貶したいのか釈然としない文章が続くが、逆にこう言いたい。お約束だけで構成された映画、結構ではないか。むしろ、私たちはこういうジャンルムービーを愛し、型をきちんと守る秀作を、時々現れる珍しいトッピングを追加した意欲作を、旨い旨いと平らげてきたではないか。

 その点、本作の「食べやすさ」は評価に値するものがある。お約束はお約束だからこそ長ったらしい説明は不要!と言わんばかりのパトリック・ヒューズ監督の采配により、冒頭で主人公の過去(トラウマの形成)を最短距離で描写し、すかさず舞台は二年後に移行。訓練兵時代では主人公81番の異様さを描きつつ、後の主要メンバーたちを目立たせてゆく。今どき珍しく107分に収まったコンパクトさも、腹持ち的にちょうど良い。

 本作が不運だったのは、今まさに世界情勢が混沌とし、人道にもとる作戦が展開されてしまっているため、宇宙の敵を退けてイエーイ!が無邪気で場違いに感じられてしまう世相との不和であろう。絶望的な状況を生き延び、これから逆襲へ出向く勇ましさも、どこか空虚に感じられる。映画を自宅や劇場で楽しめる当たり前が、世界のどこかでは望んでも得られぬ贅沢であることを、どうしても意識してしまう時代なのだ。

 であるからこそ、本作がフィクションであり、たとえその年のベストには選ばれずとも観ている間は無慈悲な世界を忘れさせ、ポップコーンを口に運ぶ手が進むような娯楽であり続けることこそが「平和」であり、いつ立ち寄ってもそれなりに満足させてくれる居酒屋でいてくれることを祈りたい。国の官邸が他国への攻撃を正当化する動画として、本作のみならず全ての映画や著作物が勝手に利用される世界など、あっていいはずがないのだから。

 『バトルシップ』『世界侵略: ロサンゼルス決戦』をこよなく愛する同士の皆様へ。ビールとブリトーをツマミにすると最も楽しくなれる映画の最新作がこちらです。ぜひ、ご賞味あれ。

『ウォー・マシーン: 未知なる侵略者』はNetflixにて独占配信中。

https://www.netflix.com/title/81768525

 

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