昔大好きだった映画を久々に見てみようと試みたら記憶してた以上にクソバカ映画でした『食神』

マシーナリーとも子

昔大好きだったけど記憶が薄れた映画にふたたび向き合う

 香港が舞台で、叉焼飯が印象的なカンフー映画と言えば!?

 ……そう!

 AmazonPrimeVideoでも配信が始まった『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』……

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 ではなく

 もちろん

 チャウ・シンチーの『食神』ですよね~!!

実写版『ミスター味っ子』のようなリアクションの果てに
死亡(死んでない)

 いや、この映画ねえ……昔から大好きだったんですよ。めちゃくちゃおもしろい! ……と思い続けてきたんですよ。
 なんというかこう……「好きな作品は?」って聞かれたときに答えることにしてる作品ってどのジャンルでもあると思うんですよ。その理由はほんとうにいちばん好きだから、なのかもしれないし、オススメしやすいから、なのかもしれない。あるいはホントはたくさん好きな作品があるんだけどどれも口に出しづらいから無難に好きめなやつにしておこう、とかこれがいちばん好きって言っとくとカッコいいからコレにしとこう、とか……その理由は純粋なときもあれも不純なときもある。あるいは、それらの様々な感情がぜんぶゴッチャになったすえに、チョイスするならコレだ! ってときもある。

 で、『食神』も一時期の私にとって「ソレ」でした。
 その理由は単純にそのユーモアがものすごく好きというのもあったんだけど、やっぱ「すさまじくバカ映画」だからかなあ。
 見たら絶対バカバカしくて爆笑してもらえるだろうし、「みんなは知らないかもしれないけどこんな笑える映画があるんだぜ」ってアピールできるのってやっぱり気持ちいいし。

 が、それから20年くらいの年月が過ぎていった。

 ふとあるとき、気付いた。
 『食神』をオススメしたいのに、一向にサブスクリプションとかで配信されない!
 いや……有料配信もぜんぜん無いじゃないか!
 これじゃあいくら『食神』っておもしろい映画があるんだよ! って伝えても見てもらえないじゃないか!

 そして問題はそれだけではなかった。
 見返すことができなくなったことで、月日が経つにつれ自分の思考すら疑わしくなっていったのだ。
「本当に『食神』はおもしろかったのだろうか?」
「思い出を美化してないか?」
「いま見たら大したことないんじゃないだろうか…」

 そんな心のしこりを抱えながらここ何年かを生きてきた。
そしてこの日。2025年12月……。

 買いました。レンタル落ちDVDを。メルカリで2000円くらいで買えたわ。もっと早く買っても良かったな。

 そして20年ぶりくらいに見た『食神』は……やっぱりめちゃくちゃおもしれえ!

けど!

 記憶してたより遥かにクソバカ映画すぎるわコレ!!!!

ギャグ映画のレコメンドってめちゃくちゃ難しい気がしてきました

 主人公・チャウは香港料理界の頂点に君臨し、「食神」の異名を持つ男。TVでも大人気で彼がプロデュースする料理店は50近く。コラボレーショングッズも山のように発売されており大人気。しかし……

 その正体はロクに料理もできず、傲慢で鼻持ちならない成金のクソカス野郎だった。

 当然、周囲から恨みを買いまくっていたチャウは料理店50店目出店パーティにて助手のトンとライバルチェーン店の社長にハメられ料理会を追放。「食神」の座もトンに奪われてしまう。

造反する助手にキレたチョウは包丁で斬りかかろうとするが…
ティースプーンで弾かれてしまう! このシーン、カッコいいのかギャグなのか反応に困る

 哀れすべてを失いスラムに迷い込んだチャウは、屋台を営む人々に救われ一念発起。彼らと手を組んで新商品「爆発! 小便団子」を創り上げリベンジに挑むのだが……。

落ちぶれた主人公がアウトローから叉焼飯を振る舞われて心を開くのでだいたい『トワイライト・ウォリアーズ』です

 と、以上がものすごくざっくりとした中盤までのあらすじなんですが……。

 いや……この映画ね! 改めてこうして記事で紹介しようとするとね……こう……迷うわ!

 おもしろいんですよ。バカバカすぎるところも含めてものすごくおもしろいんです。テンポもいい! そしてなによりギャグを挟み込む「タイミング」がものすごく絶妙だし果てることが無いんです! 頭からケツまでギッシリギャグが詰め込まれていて、休む暇が無い!

 でもその「ギャグのおもしろさ」が先述したとおりかなりテンポとタイミングで構成されているので、静止画だとおもしろさが伝えづらい!

例えばわざと土地を貸してハメてやろうとする悪役の策略とともに地図が表示され…
その土地を線でつなげると「死」になる! とかは静止画で伝えてもおもしろいんだけど、この映画はもっとアクティブな笑いに満ちてるんだよ! これだけじゃないんだ!

 ていうかそもそも論で言うとギャグとかユーモアの紹介とか説明ってさ……難しいわ!
 ふだんこのコラムコーナーでどんなことを書いてたっけ? って思い返すとさ……例えば「すごく構成が巧みでビビる!」とか「すごくテーマがよくて泣ける!」みたいなことを書いてるわけじゃないですか。でもいやらしい言い方すると、そういうのって割と理屈で書けるんですよ。これこれこういう理由で、いいよね。なぜならこういうふうにできているからだよね。って書けるんですよ。

 でも「おもしろいギャグ映像」の紹介って難しいし一から十まで紹介したら野暮でぜんぜんおもしろくないし!
 じゃあとにかくおもしろいシーンをみんなに見てもらおう! って紹介しまくるとそれはファスト映画となにが違うんだ? ってなるし! 難しい!

おもしろいんですよ!

 マジでほんとうにおもしろいんだけど……もどかしい! どう紹介したらいいんだ!? 教えてくれ!

 この映画のマジですごいところは……「ギャグ映画なんだけど、考えさせられる!」とか「ギャグだけど仲間たちの絆で泣けるぜ!」みたいな見方が……無理をすればできないこともないけど、絶対やってないんですよ! この映画! 逆にいえばそういう小細工を使わず、ギャグをマジでずっとやってやるからな! と割り切り、正攻法でめちゃくちゃおもしろくしてしまっている! これって実はすごいことですよ。笑えるだけでやり切る勇気。

 このあいだ、おもしろいマンガがなかなか描けないから担当編集に弱音吐きに言ったんですよ。そのとき

「どうすりゃいいんすかね? もっとこう、読者に共感を覚えてもらったり生き方を応援するようなテーマ? とかもっと盛り込んだほうがいいのかな?」

 みたいな相談をしたら担当さんがこう言うんです。

「いやまあ、おもしろければ別にいいんじゃないですか?」

 と。

 そのときは「かんたんに言ってくれるなあ」と思ったんですけど、『食神』はそれをやっている!!! つええやつはできるんだ! メッセージ性とかそういうのがなくても!

料理がうまくなりたければ少林寺を学べ!

 この映画、ノリはかなり『ミスター味っ子』とか『包丁無宿』みたいな感じなんですが、そもそもの着想は『料理の鉄人』が香港でも人気を博していたかららしいのです。

 なので最終決戦でも満を持して料理対決が行われます。
 そこでは、傲慢な仮面を脱いで料理修行に打ち込んだチャウと、食神の名を返しはしないと防衛に燃えるトンの、アツく真剣な料理対決が……

 うん……

 アツく真剣な……料理対決を……

 いやほんと……おもしろいんです! おもしろいんですって!
 少林寺の修行シーンとかマジでテンポと天丼っぷりがおもしろすぎていま見ても涙が出るくらいおもしろくて……

 ああでもやっぱダメだ映像のおもしろさを文章で説明できねえ!

 諦めます!!! みんなもメルカリとかでレンタル落ちDVDを買うんだ! そして見ろ!!! 笑え!!! めちゃくちゃおもしろいから……。

 でも久々に見たらオチはクソカスすぎて「バカ映画だからってなにしてもいいわけじゃねえからな!?!?!?!?」ってキレました。

 衝撃のオチは君自身の目で確かめてくれ!

 以上

考えうる限り最悪の名を持つ坊主。特技はフェラチオ
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