注意!
この映画はおっさんとのセックスシーンの方が遥かに多いのでノーガードで視聴すると悶死します!
いつから百合はジャンルになったのか――その言葉自体は、70年代に男性同性愛者向けの雑誌『薔薇族』編集長であった伊藤文學氏が女性同性愛者を指す隠語として百合族という言葉を提唱したのが起源とされています。
ただしその時点で百合は隠語でした。
百合が隠語からジャンル名としてより一般的になったのは日活ロマンポルノ映画『セーラー服 百合族』、およびその続編である『セーラー服百合族2』と『OL百合族19歳』が人気を博したから……とされています。
かつて、百合族シリーズのヒロインである、なおみと美和子……『なおみわ』は覇権だったのです
しかし今、百合というジャンル論の中で『セーラー服 百合族』シリーズの影は薄いのが実情です。
もう古典だから? それともポルノだからでしょうか? 最初期にエスでもレズビアンでもなく百合作品と定義された作品なのにも関わらず、この映画を語る愛好者の言葉は驚くほど少ないわけです。
ならば、私がやります!
キャロルとかの、『間違いないヤツ』は他の評論家に任せておいて、ポルノ百合作家の私が最初の百合映画を語ることにしましょう。
百合族シリーズ、その各作品のつながりは緩いものの、なおみと美和子の関係性は徐々に進んでいきます。
特に最終作であるOL百合族19歳では非常に印象的なラストシーンによって二人の関係が結実することになります。
それでは三作目に至るまでの一作目と二作目から紹介していきましょう。
セーラー服 百合族&セーラー服 百合族2
さて、セーラー服 百合族の無印と2に関しては青春映画としても一定の評価がされていますが、詳しく内容を説明するとムービーナーズから出禁になるので、ここではさらりと流しておきます。
ちなみに私はすでにエロ本を書いたせいでAmazonとpixivでBANされたことがあります……
――なおみはしょうもない男に惹かれ、美和子はそれにやきもきして衝動的に別の男に身をまかせるが、最終的になおみは美和子の元に戻り、美和子もそれを受け入れる。
筋に関しては、これで事足ります。
なんなら最終作も似たような流れで、女性が女性を欲するという百合としてのコアの部分はかなりユルユルです。
ここに関しては当時の百合がポルノのバリエーションに過ぎなかったと評価せざるを得ないところです。
そもそも野郎と絡むシーンの方が多く、なおみと美和子もそのことをあまり気にしていないので、どちらかというと自由恋愛(フリーセックス)的な関係性を読み解くこともできるように思います。
またポルノ作品ということもあって、昭和の倫理観は令和に見返してみると非常にアレです。人によってはそれだけで耐えがたいでしょう。
それでも、無印と2に通底しているやたらと明るくてポップでバブリーな空気とノスタルジックな小道具や画面は昭和の良い面も悪い面も感じられて、歴史を感じられる作品です。
OL百合族19歳
無印と2からノリが変わってくるのが、金子修介監督の手がけたOL百合族19歳です。
初回の絡みが白くて明るい謎空間で二人の特別な関係性を演出するところから、シリーズを知っていると『お、これまでとは違う……?』となる本作、あらすじからも分かるようになおみと美和子は卒業して社会人になっています。
これまで昼間がメインだった舞台も、夜がメインになっていきます。
これまでハッピーだった二人の関係にも陰りが……。
社会人となったことでなおみは結婚を意識し始める一方で、美和子はなおみを諦められなくて……とあらすじだけ観るとかなり現代の百合でも通用するテーマではないでしょうか。まぁ相変わらずおっさんと絡むんですけどね!
安定のためになおみは営業部の男に接近し、美和子もそれを(お節介ながら)手助けします。しかし営業部の男は他の女とも関係を持っていました。
それでも、なおみは意地で結婚を選び、美和子まで式場に呼びつけます。
そして――
分かちがたく結びついていた二人は、ウェディングドレス姿で結婚式場から飛び出していくのでした。
未だに同性婚もできない日本において、このオチはいささか脳天気すぎるかもしれません。それでも、ラストの晴れやかさを、私は低俗の一言で切り捨てたくありません……。
百合族シリーズは百合なのか?
百合族シリーズがレズビアンの描き方として、不充分な部分が多いことは間違いないことです。
ではその描写がただ雑なだけかと言えば、決してそうではないと言わせてもらいましょう。
百合……に見せかけたポルノでは極めてありがちな途中で男が入ってきて3P展開になったりだとか、『男の良さを教えてやる』的な百合を不完全なものと見做すセリフもこのシリーズにはありません。
なおみと美和子はお互いの愛情を疑い、別の相手に走ることはあっても、男女での行為が正常で正統であるという思想性は驚くほど薄いのです。
各シリーズのクライマックスもなおみが美和子に尖った帽子の人形を入れるもの(無印)から、丸いキャップの化粧品で相互に慰め合うもの(2)になり、OL百合族19歳ではお互いに慈しみ合うものへと変化していきます。
そこにはなおみと美和子の関係性を尊重する姿勢があり、ゆえにラストシーンは二人が男との結婚式から脱出するというものに結実していくのです。
百合族シリーズはサブカルチャーとしての百合が成立する前、百合の源流として確かに百合をやっていたというのが私の結論となります。
百合族シリーズは、まだ昭和だったころのある日『ピンク映画でも観っかぁ~』と映画館に行った誰かに、映画館を出る時『なおみと美和子、幸せになってほしいなぁ~』と思わせることができる力があって、ゆえにこのまま忘れ去られるのは勿体ない作品なのです。
だから君らも無難な百合映画ばっか観てないで、四〇年前から確かにそれが『あった』ことを感じろ!!
そして次世代の我々は女と女が逃げることなく、結婚式を挙げる邦画をブチ上げるのだ!!
日活ロマンポルノ公式サイト:https://www.nikkatsu-romanporno.com/
百合族:https://www.nikkatsu-romanporno.com/movies/2017/02/26034.php
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