低俗!明朗!百合ックス!百合の原初にして極北の『セーラー服 百合族』三部作を令和に観ろ!

人間無骨

注意!
この映画はおっさんとのセックスシーンの方が遥かに多いのでノーガードで視聴すると悶死します!

いつから百合はジャンルになったのか――その言葉自体は、70年代に男性同性愛者向けの雑誌『薔薇族』編集長であった伊藤文學氏が女性同性愛者を指す隠語として百合族という言葉を提唱したのが起源とされています。

ただしその時点で百合は隠語でした。

そのころは、今より更に暗い時代だった。
薔薇族の万引きを知られた学生が自殺を図ったという事件もあった。

百合が隠語からジャンル名としてより一般的になったのは日活ロマンポルノ映画『セーラー服 百合族』、およびその続編である『セーラー服百合族2』と『OL百合族19歳』が人気を博したから……とされています。
かつて、百合族シリーズのヒロインである、なおみと美和子……『なおみわ』は覇権だったのです

なおみ(左)と美和子(右)
自由奔放のなおみとナイーブで振り回されがちな美和子の組み合わせは今でも通用する造形だ

しかし今、百合というジャンル論の中で『セーラー服 百合族』シリーズの影は薄いのが実情です。

百合映画と言えば?――洋画ならキャロル(2015)、邦画なら迷うところだが下妻物語(2004)あたりが良く挙げられるか

もう古典だから? それともポルノだからでしょうか? 最初期にエスでもレズビアンでもなく百合作品と定義された作品なのにも関わらず、この映画を語る愛好者の言葉は驚くほど少ないわけです。

ならば、私がやります!

キャロルとかの、『間違いないヤツ』は他の評論家に任せておいて、ポルノ百合作家の私が最初の百合映画を語ることにしましょう。

百合族シリーズ、その各作品のつながりは緩いものの、なおみと美和子の関係性は徐々に進んでいきます。

特に最終作であるOL百合族19歳では非常に印象的なラストシーンによって二人の関係が結実することになります。

それでは三作目に至るまでの一作目と二作目から紹介していきましょう。

セーラー服 百合族&セーラー服 百合族2

監督は『ビー・バップ・ハイスクール』の那須博之。ここで某映画を挙げるのはあまりにも不誠実でしょう……
美和子はなおみとレズビアンの関係。まだ男は知らないが、なおみのツボを押さえた愛撫に快感を覚える日々。しかし、一方のなおみは両刀使い。一平ととセックスを楽しみ、生理が来なくなって妊娠したと勘違いするなおみの姿に寂しさを覚える美和子は…。
同年中に撮影・放映された続編となる。アバターシリーズも見習うべきでは??
美和子となおみは高校の同じクラスのレズメイト。ふたりは夏休みに軽井沢のラーメン屋でアルバイトすることに。ある夜、ディスコで盛り上がったふたり。なおみは地元の酒屋の中年と浮気、怒った美和子も東大生とデキてしまう。ふたりの関係の行く先は?

さて、セーラー服 百合族の無印と2に関しては青春映画としても一定の評価がされていますが、詳しく内容を説明するとムービーナーズから出禁になるので、ここではさらりと流しておきます。
ちなみに私はすでにエロ本を書いたせいでAmazonとpixivでBANされたことがあります……

――なおみはしょうもない男に惹かれ、美和子はそれにやきもきして衝動的に別の男に身をまかせるが、最終的になおみは美和子の元に戻り、美和子もそれを受け入れる。

筋に関しては、これで事足ります。

なんなら最終作も似たような流れで、女性が女性を欲するという百合としてのコアの部分はかなりユルユルです。

ここに関しては当時の百合がポルノのバリエーションに過ぎなかったと評価せざるを得ないところです。

そもそも野郎と絡むシーンの方が多く、なおみと美和子もそのことをあまり気にしていないので、どちらかというと自由恋愛(フリーセックス)的な関係性を読み解くこともできるように思います。

またポルノ作品ということもあって、昭和の倫理観は令和に見返してみると非常にアレです。人によってはそれだけで耐えがたいでしょう。

盗撮ドローンまで持ってるガリベン盗撮野郎の公夫(右)このキャプションの直後になおみの彼氏である一平(左)に手コキされるシーンがある。マジでなんで? 続編の2にもマブダチっぽい感じで登場している。

それでも、無印と2に通底しているやたらと明るくてポップでバブリーな空気とノスタルジックな小道具や画面は昭和の良い面も悪い面も感じられて、歴史を感じられる作品です。

OL百合族19歳

監督は那須博之の後輩にあたる金子修介。後にデスノートやガメラを手がけることになる
2022年には再びロマンポルノ『百合の雨音』で百合映画を撮っている。
百合族の縁なのだと思うと、那須監督の死去が惜しまれるところ……

無印と2からノリが変わってくるのが、金子修介監督の手がけたOL百合族19歳です。

初回の絡みが白くて明るい謎空間で二人の特別な関係性を演出するところから、シリーズを知っていると『お、これまでとは違う……?』となる本作、あらすじからも分かるようになおみと美和子は卒業して社会人になっています。
これまで昼間がメインだった舞台も、夜がメインになっていきます。
これまでハッピーだった二人の関係にも陰りが……。

こうした特別感・綺麗感というのは批判されながらも今も百合で使われる表現だろう

社会人となったことでなおみは結婚を意識し始める一方で、美和子はなおみを諦められなくて……とあらすじだけ観るとかなり現代の百合でも通用するテーマではないでしょうか。まぁ相変わらずおっさんと絡むんですけどね!

安定のためになおみは営業部の男に接近し、美和子もそれを(お節介ながら)手助けします。しかし営業部の男は他の女とも関係を持っていました。
それでも、なおみは意地で結婚を選び、美和子まで式場に呼びつけます。

そして――

分かちがたく結びついていた二人は、ウェディングドレス姿で結婚式場から飛び出していくのでした。

あまりにも『幸せすぎる』エンディング
『どこいくの?』という美和子になおみは『どこまでも逃げるのよ!』と返事する……

未だに同性婚もできない日本において、このオチはいささか脳天気すぎるかもしれません。それでも、ラストの晴れやかさを、私は低俗の一言で切り捨てたくありません……。

百合族シリーズは百合なのか?

 百合族シリーズがレズビアンの描き方として、不充分な部分が多いことは間違いないことです。
ではその描写がただ雑なだけかと言えば、決してそうではないと言わせてもらいましょう。
 百合……に見せかけたポルノでは極めてありがちな途中で男が入ってきて3P展開になったりだとか、『男の良さを教えてやる』的な百合を不完全なものと見做すセリフもこのシリーズにはありません

 なおみと美和子はお互いの愛情を疑い、別の相手に走ることはあっても、男女での行為が正常で正統であるという思想性は驚くほど薄いのです。

 各シリーズのクライマックスもなおみが美和子に尖った帽子の人形を入れるもの(無印)から、丸いキャップの化粧品で相互に慰め合うもの(2)になり、OL百合族19歳ではお互いに慈しみ合うものへと変化していきます。

 そこにはなおみと美和子の関係性を尊重する姿勢があり、ゆえにラストシーンは二人が男との結婚式から脱出するというものに結実していくのです。

 百合族シリーズはサブカルチャーとしての百合が成立する前、百合の源流として確かに百合をやっていたというのが私の結論となります。

 百合族シリーズは、まだ昭和だったころのある日『ピンク映画でも観っかぁ~』と映画館に行った誰かに、映画館を出る時『なおみと美和子、幸せになってほしいなぁ~』と思わせることができる力があって、ゆえにこのまま忘れ去られるのは勿体ない作品なのです。

エロシーン抜きでもなんだかんだでいい感じのカットは多い。そこも魅力だ。

だから君らも無難な百合映画ばっか観てないで、四〇年前から確かにそれが『あった』ことを感じろ!!

そして次世代の我々は女と女が逃げることなく、結婚式を挙げる邦画をブチ上げるのだ!!

日活ロマンポルノ公式サイト:https://www.nikkatsu-romanporno.com/
百合族:https://www.nikkatsu-romanporno.com/movies/2017/02/26034.php

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