300本超えの「百合映画」を総まくり! ふぢのやまい編著『「百合映画」完全ガイド』がついに発売!

百合オタクのみなさん、覚悟はいいですか。
これからあなた方は約300本の百合映画を観ることになります。今のうちに寝溜めしておいてください。

ということで、本日6月27日土曜日、全世界の百合オタク待望の書籍、ふぢのやまい編著『「百合映画」完全ガイド』(星海社新書)が発売されました。

『「百合映画」完全ガイド』
編著:ふぢのやまい
著者:牛久俊介、児玉美月、将来の終わり、関根麻里恵、髙橋佑弥、鶴田裕貴、中村香住
装画:志村貴子
発行:星海社
発売:講談社
ISBN:978-4065201794
発売日:2020年6月27日

ライター、マンガ研究者として活動する傍ら、マンガ制作ユニット「dolce.」でマンガの実作もおこなうなど、多岐にわたる活動を続けてきたふぢのやまいが編著として取りまとめた本書は、これまで「百合」の文脈から取りこぼされがちだった「百合映画」を総覧する労作です。

本書はふぢのやまいがコミティア128(2019年5月12日開催)で頒布した『百合映画ガイドブック』という同人誌がベースになっています。『百合映画ガイドブック』の段階ですでに105作品が紹介されており、「世の中にはこんなにたくさんの百合映画があるのか…!」と当時非常に大きな衝撃を受けましたが、本作『「百合映画」完全ガイド』ではなんとその3倍…312本もの映画が紹介されています。

『百合映画ガイドブック』、『百合映画ガイドブック1.5』

本書は「日本編」「海外編」「アニメ編」と分けられており、それぞれ年代昇順で掲載されています。日本編では、清水宏『港の日本娘』(1933年)から深田晃司『よこがお』(2019年)までの89本。海外編ではレオンティーネ・サガン『制服の処女』(1931年)からアリス・ウー『ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから』(2020年)までの193本。アニメ編では『映画 ドラえもん のび太と鉄人兵団』(1986年)から『劇場版 ハイスクール・フリート』(2020年)までの30本を掲載。まさに「百合映画」ガイドの決定版と言えるでしょう。

他にどういった作品が紹介されているのか興味のある方は、星海社が運営するウェブサイト「ジセダイ」で執筆者によるおすすめの百合映画が紹介されていますのでそちらを参考にしてみてください。

今すぐ観られる「百合映画」8選【Netflix編】
https://ji-sedai.jp/editor/blog/yurimoviesselection_netflix.html

『「百合映画」完全ガイド』執筆陣が選ぶ!おすすめ「百合映画」8選!
https://ji-sedai.jp/editor/blog/yurimoviesselection_all.html

執筆者に名を連ねる方々は映画ライターからマンガ研究者、ジェンダー研究者まで様々で、そこにふぢのやまい氏の「百合」に対する問題意識がうかがい知れるとともに「百合」の持つジャンル横断的な射程の長さが感じられます。

装画は『青い花』、『淡島百景』などの作品で知られるマンガ家の志村貴子。女性同士の感情の機微を丁寧に描いてきたことで知られる志村のイラストが本書の魅力を底上げしていることは間違いないでしょう。

本書には一般的に「百合映画」と見なされていない作品や、「この映画を「百合」と称するのはいかがなものか…」と思われてしまうような作品が含まれていることは否めません。「百合とはなんなのか?」「百合の定義って?」。長年繰り返されてきた「百合」をめぐる論争。その定義の難しさ、あいまいさこそが「百合」を「百合」たらしめてきた部分があるのかもしれません。しかし、本書では一度あえてその「百合」をめぐる不毛な論争から距離を取り、ほんのささいな女性同士の指先の触れ合い、視線の交錯をどこまでもフラットに「百合」として扱います。『マルコヴィッチの穴』(2000年)と『リズと青い鳥』(2018年)が「百合」の名のもとに併置されることがこれまであったでしょうか。

そういった姿勢に疑問を感じる方も多数いらっしゃると思います。そんな方にこそぜひ本書を手に取り、まずは「序文」だけでも読んでいただきたい。本書に通底するその問題意識が端的に、そして非常にアクチュアルに記されています。

ここ数年で一気に拡大した「百合」の世界。その中でもなかなか語られることがなかった「百合映画」にスポットライトを当てた本書は「百合」と「映画(批評)」、それぞれの新しい展望を切り拓く一冊となるでしょう。

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