こんにちは。ご機嫌いかがですか?
真冬なのに、やけにあったかい日が最近ありますよね。
こんな日には、倉庫の掃除でもしようかな~。
あっ、このダンボールは……?
ディズニーのビデオテープだ!!
今はもう完全に市場から姿を消してしまったビデオ。DVDが登場したとき、画質とかよりもまず、なんて薄いんだ……と思いましたね。
もうとにかく、ビデオはデカいよ。横にデカすぎます。ちょっと並べればあっという間に棚が埋まっちまいます。だからこうして、ダンボールに詰めて倉庫にしまっていたのですね私は。
それにしても懐かしい作品の数々!
ディズニーの映像ソフトは発売時期によって吹き替えのセリフや楽曲の歌詞が違うのですが、特に後者は(個人的には)昔のバージョンの譜割りが好きだったりするので、ビデオ捨てられへんですね~。アラジンの吹き替えは羽賀研二だし。
とりあえず羽賀……じゃなくて「アラジン」を探そうかな……。
これじゃねえな。
これでもねえな。
なんなんすかこれ。
90年代半ばから2000年代後半にかけ、ディズニーはそれまでに発表した長編アニメーション映画の続編モノをビデオで出しまくりました。
なぜなのか? そしてそれはいくつあるのか?
今回の記事ではそれらについて振り返ろうと思います。
当時のディズニー社に起きていたこと
ウォルト・ディズニーの死後、ディズニー社は大きなヒット作に恵まれず、またテーマパークの開発のために莫大なお金を投資してもいたので、基本ずっと経営難でした。そんな状態だったために、ある実業家に敵対的買収を仕掛けられ、莫大な負債を抱えるはめに……。
ボロボロになったディズニー社は、再起のため経営陣を一新することにしました。新たなリーダーたちから、特に重要な二人を紹介します。
まずは、アニメーション部門の責任者に就任したジェフリー・カッツェンバーグさん。
パラマウント・ピクチャーズで経験を積んだその手腕は凄まじく、彼の指揮によってディズニーのアニメ作品の質は飛躍的に向上し、「リトル・マーメイド(1989)」「ビアンカの大冒険 / ゴールデンイーグルを救え!(1990)」「美女と野獣(1991)」そして「アラジン(1992)」と立て続けに名作が生まれ、黄金期が到来しました。
もう一人は、やはりパラマウント・ピクチャーズからやってきた新CEO、マイケル・アイズナーさん。
元々テレビ業界出身である彼は、就任してまもなく、ディズニーにTVアニメの部門を作りました。ミッキーマウスなどディズニーの主要キャラクターを使用した作品は作れないという制約がありながらも、1987年に放送が始まった「ダックテイル」シリーズがヒット。1992年にはテレビアニメ版「リトル・マーメイド」が製作され、ひとつの作品が映画とテレビ双方で展開されるようになっていきます。
こうした流れを受けて生まれたのが、これです。
アラジン ジャファーの逆襲(1994年)
アラジンのなんも考えてなさそうな顔!!
「リトル・マーメイド」の時とは違い、「アラジン」の大ヒットはある種、想定されていたことでした。そのため、劇場公開を待たずして、すでにテレビアニメ化の計画が動いていました。テレビシリーズでは、映画版で敵だったイアーゴ(鳥)が仲間チームに加わることになったので、そのきっかけとなるエピソードが必要になり、それを1時間のTVスペシャルとして放送する予定が、結果的にビデオリリースということになりました。
率直に言ってまったく出来はよくないです。
映画「アラジン」と比べると画面のきらきらさが歴然としています。キャラクターたちはセリフがないとき全然動きません。もちろん、予算のかかった劇場公開作と比較するものではないですが……。
でも、1作目を観て誰もが抱く「ジャファー、ランプに封印して遠くにぶん投げただけなら、どっかで復活しちゃうんじゃないの?」という疑問に回答する形で物語が始まることや、あんなになんでもありだったジーニーが一度は完全に敗北すること、前述したイアーゴの仲間入りなど、ストーリーにはいくつかの興味深いポイントがあります。マストではないですが観る意義はあると思います。
このビデオはたくさん売れました。企画段階では「ディズニーのブランドに傷がつくかもしれない」とOVAという形態でのリリースに難色を示したアイズナーさんでしたが、発売して一週間で450万本も売れたので、態度が真逆になりました。またこの年にカッツェンバーグさんが会社を去ったことも影響したのか、「どんどんビデオを出そう!」ということに。
1996年に「アラジン 盗賊王の伝説」がリリースされると、アラジンシリーズは一旦完結しましたが、何も問題ありません。ディズニーにはたくさんの作品があるんだから……!
リストで振り返る「ディズニー続編ビデオ」
ここからは年ごとのリリース作品をまとめていきます。作品すべてを紹介することは困難ですから、まあいずれみなさんには全部観ていただくのですが、今日はとりあえずどれだけあるか知っていただいておしまいです。簡易ではありますが、リストをどうぞ。
なお、掲載したのは「ウォルト・ディズニーアニメーション・スタジオ製作の長編アニメーション」の続編のみです。ミッキーマウスやグーフィーの主演作などに関しては省きました(そちらも大量に出ていますが)。
※(☆)は劇場公開作です。
アラジン ジャファーの逆襲
【1996年】
アラジン 盗賊王の伝説
アラジンの親父が出ます。
余談ですが、第一作目の製作段階のプロットにはアラジンのオカンがいました。決定稿では完全に削除されてしまったオカンは本作にも登場しません。
くまのプーさん クリストファー・ロビンを探せ!
美女と野獣 ベルの素敵なプレゼント
いよいよ「アラジン」以外の続編も出始めました。
「プーさん」シリーズに関してはとても扱いが難しく、その理由は劇場版の延長となるような長尺の作品と、テレビシリーズのスペシャルエピソードとが混在しているからです。今回は収録時間で判断し、長編と呼べるものだけ記載しています。
「ベルの素敵なプレゼント」では、フォルテというパイプオルガン(に変えられた音楽家)が登場しますが、「今まで野獣と仲良くしてたのは俺なのにあとから来たベルにそのポジションを奪われたのが腹立つ!」という、こども習字教室でも起こり得る動機でベルを消そうとするヴィランです。マクドナルドのハッピーセットにもなりました。
美女と野獣 ベルのファンタジーワールド
ポカホンタス2 / イングランドへの旅立ち
ライオン・キング2 / シンバズ・プライド
ヘラクレス:ゼロ・トゥ・ヒーロー
「美女と野獣」がまた来ましたが、「2」がつかない理由としては、前作同様に野獣の魔法が解ける前の幕間のお話だからでしょう。「ヘラクレス」の方は、テレビシリーズのいくつかのエピソードを繋げたものだからだと思います。一応「2」にも基準があるということですね。じゃあ「アラジン」ってなんなのって話ですが……。
くまのプーさん / 冬の贈りもの
またまたプーさんですが、「メリー・ポピンズ」「王様の剣」など数々の作品の劇伴を作り、あのイッツアスモールワールドのテーマソングをも手掛けたシャーマン兄弟がまさかの新曲を書き下ろしています。
ティガー・ムービー プーさんの贈りもの(☆)
リトル・マーメイド2
プーさん、とりあえずなんか贈ればいいって思ってないすか? ちなみに劇場公開されています。私もイクスピアリで観た覚えがある……。
「リトル・マーメイド2」は前作と真逆で陸から海へ。主人公は周りの人々に「海に近付いてはいけない」と言われ不満を募らせますが、どうして近付いていけないのかぐらい説明してほしいよねえ。
わんわん物語2
「わんわん物語」といえば、ディズニーの第一次黄金期と呼ばれる1950年代の作品群のひとつです。これまでよりさらに古い作品に、とうとう目をつけてしまいました。じゃあもう、「ピーター・パン」とかいけちゃうんじゃないですか?
ピーター・パン2 / ネバーランドの秘密(☆)
シンデレラ2
ノートルダムの鐘2
ターザン&ジェーン
くまのプーさん / みんなのクリスマス
大方の予想通りのラインナップになりましたね。
「ピーター・パン2」は日本でも劇場公開されておりそこそこヒットしました。主人公・ジェーンの吹き替えに上戸彩さんが起用されたことも話題になっていたと記憶しています。
プーさんがまた冬を満喫しています。
101匹わんちゃん2 / パッチのはじめての冒険
ジャングル・ブック2(☆)
くまのプーさん 完全保存版2 ピグレット・ムービー(☆)
アトランティス / 帝国最後の謎
スティッチ!ザ・ムービー
なぜここにきて「完全保存版2」なのか?
「くまのプーさん 完全保存版」は、「プーさんとはちみつ」「プーさんと大嵐」「プーさんとティガー」の短編3本をひとつにまとめ、最後に(私の大好きな)プーさんとクリストファー・ロビンの桟橋での会話シーンを追加したものです。文字通りの「完全保存版」といえますが、なぜその言葉を「ピグレット・ムービー」に冠したのかが全くわかりません。しかも「完全保存版2」て。「くまのプーさん2 完全保存版」ではいけなかったのでしょうか。
また、「スティッチ!ザ・ムービー」とのことですが、前作「リロ・アンド・スティッチ」がすでにムービーだったわけで、全体的にタイトルの付け方に疑問が残る年となりました。
ライオン・キング3 / ハクナ・マタタ
くまのプーさん / ルーの楽しい春の日
「ライオン・キング」に関しては、ティモンとプンバァが主人公のテレビシリーズがありますが、本作もテイストはそれに近いです。メタが多いです。
ムーラン2
くまのプーさん ザ・ムービー / はじめまして、ランピー!(☆)
ターザン2
リロ・アンド・スティッチ2
くまのプーさん / ランピーとぶるぶるオバケ
ラマになった王様2 クロンクのノリノリ大作戦
ランピーともまだ打ち解けていないのに、ぶるぶるオバケまで紹介されてしまうと、こちらにはもうなすすべがありません。
バンビ2 森のプリンス(☆)
ブラザー・ベア2
きつねと猟犬2 トッドとコッパーの大冒険
三作品の舞台がすべて森です。
この年の5月、ディズニー社がピクサー社を買収し、それによる部門再編の結果として、ジョン・ラセターさんがディズニー・ピクサー両方のCCOに就任しました。非常に重要な人事異動です。
ラセターさんの意向により、計画中であったOVAは全て中止となり、これにより10年以上続いてきた続編リリースはおしまいに。お疲れ様でした。
【2007年】
シンデレラ3 戻された時計の針
【2008年】
リトル・マーメイド3 はじまりの物語
この年以降、2015年までに「ピーター・パン」のスピンオフである「ティンカー・ベル」シリーズが6作も出ていますが、それ以外のディズニー作品の展開は「リトル・マーメイド3」をもって終了しました。
みなさんの琴線に触れそうなタイトルはありましたか?
リストからどれかひとつ選べと言われたら、私は迷わずこれです。
シンデレラ3 戻された時計の針(2007年)
これほどわかりやすいタイトルはないですよ。
シンデレラに意地悪をする義母のトレメイン夫人が、娘のアナスタシアが偶然手に入れた魔法の杖を悪用し、シンデレラが王子と結ばれるという結果をなかったことにしてしまうというお話です。早い段階で魔法使い(フェアリー・ゴッド・マザー)が石化しますので、一体何が解決策になるのだろうか? そこそこの絶望感もあります。だけど結局ディズニーですし、OVAなのでそこまで捻ったシナリオではありません。ベタなんだけど、そのベタが本当にあったけえ……。
もちろん第一作目にはかなわないですが、シンデレラの世界をもう少し観てみたいという人にはおすすめします。「シンデレラ2」は知らないです。
OVAは玉石混交!(石多いけど……)
リストに目を通したみなさんは、ディズニーのOVAがいかに多いことか、非常にびっくりしているところだと思います。
しかし実は完全なものではありません。あくまで「ディズニーの長編アニメーションの続編」をまとめたものだからです。
冒頭の写真の種明かしですが、パッケージに「アラジンの大冒険」とついているものは、同名のタイトルで放映されたテレビシリーズのビデオ化です。ジャスミン単独で描かれていた「プリンセスコレクション」も、やはりテレビシリーズからエピソードを抜粋したもの。これらのような劇場公開でないVHSを網羅しようと思うと、とんでもない量になるのです。さらに、ピクサー作品の続編やスピンオフもありますので、これはもう大変すよ。
もう劇場公開作については全部観てしまったよという人は、これらに手を出してみてもいいのではないでしょうか。現在、Disney+にてすべて配信されています。今がチャンスです。
私と一緒にディズニーOVAマラソンに挑戦してみませんか? 感想を言い合ったらきっと楽しいと思いますよ。だけど、列記したものだけで30作品以上ありますので、1日1本でも1ヶ月かかります。
そんな時間は人生にはないのかもしれない。
準備ができた方からお声がけください。
お待ちしております。
さいなら。
著者のツイッター
https://twitter.com/myaniwani
【参考にしたサイトや動画、本など】
Chicago Tribune(2005/08/04の記事)
https://www.chicagotribune.com/news/ct-xpm-2005-08-04-0508040163-story.html
Yesterworld Entertainment
The History of Walt Disney Home Video
and the Infamous Disney Vault
https://www.youtube.com/watch?v=CE-C8rOeo74
ディズニー王国を乗っ取れ
著:ジョン・テイラー / 訳:矢沢聖子
(文藝春秋・1990年刊行)
ディズニー・アニメーション
Blu-ray & Digital 作品一覧
https://www.disney.co.jp/studio/animation.html