2022年の日本のアニメーション映画興行はどうだったのか?今年のトップヒット作品はこれだ!

ついに2022年も終わりを迎えます。
今年もアニメーション映画好きとして、私はがっつりアニメーション映画を楽しませていただきました。そんな中で、今年のヒット作品はなんだったのか。そんな上位話題作から2022年のアニメーション映画界がどんな様子だったのかを紹介します。

2022年の興行収入ランキングベスト3

日本の映画興行を振り返ると、ヒット作のない年などないと言えるほど、毎年アニメーション映画の活躍を見ることができます。今年もやはりアニメーション映画が大活躍。多数のヒット作が続きました。例えば2022年の劇場公開作の興行収入トップ3作品は以下の通りです。(2022年12月25日時点での興行通信社発表記録準拠)

1位 ONE PIECE FILM RED 187.8億円
2位 トップガン マーヴェリック 134.9億円
3位 すずめの戸締まり 100.1億円

やはり今年のNo.1ヒット作は『ONE PIECE FILM RED』。歴代のワンピースの劇場版でもぶっちぎりのトップの成績を記録しており、現在も数字を伸ばしています。同じく、現在も興行が続いている作品として、数字を伸ばしているのが3位の『すずめの戸締まり』。どちらもロングラン上映が続いており、2023年に入ってもさらに数字の積み上がりが期待できます。
実質の興行期間としては2022年の方が長い、2021年の公開作として忘れてはいけないのが、2021年の12月24日公開された『劇場版 呪術廻戦0』。こちらも138億円という100億円の大台を超える成績を残しています。
また、100億円にあと一歩及ばないながらシリーズ歴代興収記録を更新したのが、『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』。97.8億円で2022年4位の記録を残しています。今年こそは100億円の壁を超えたかったところですが、その挑戦は来年に持ち越しです。

ジャンプ映画の黄金期到来中!この流れは来年も続く?

まさかのワンピース大ヒット!その意外さたるや!

これらの結果を観てわかるのが、やはり集英社の週刊少年ジャンプ関連作品の圧倒的な興行強さです。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020)、『劇場版呪術廻戦0』(2021)と、ジャンプの新世代作品の圧倒的とも言える活躍がここ数年目立っていましたが、まさか今年原作の連載25周年を迎えたワンピースがここに来て爆発的な記録を残すとは思っていなかったので驚きです。

どれほどの驚きかといえば、ワンピースの映画シリーズで歴代最大のヒットとなったのは『ONE PIECE FILM Z』(2012)の68.7億円。以降の『ONE PIECE FILM GOLD』(2016)は51.8億円、『ONE PIECE STAMPEDE』(2019)は55.5億円とおおよそ50億円程度にとどまっています。映画上映前にTVアニメ1000話の到達や、原作100巻の刊行、さらには長かったワノ国編の完結とそれなりの話題のネタはあったとはいえ、ここにきてまさかこれまでの3倍以上の成績に到達する作品が来るとは予想できません。

東映アニメーション大活躍

連載中の作品だけでなく往年の人気作の活躍も目覚ましい年でした。
6月には『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』、そして記憶に新しい12月には『THE FIRST SLAM DUNK』が公開をスタートし大ヒットとなっています。中でもスラムダンクに関しては、公開以来高水準の興行成績を記録しており、2022年末時点ではまだ前述の作品の数字にまでは届いていませんが、12月26日には興収50億円の突破が発表されるなど最終的な数字はまだまだ伸びそうです。

驚くべきは、『ONE PIECE FILM RED』を含むこれらの作品の制作を担っているのが、東映アニメーションである点。昨今新鋭のアニメーション制作会社の名前が話題に上がりますが、半世紀以上の歴史を持つ東映アニメーションがここに来て、これほどまでにヒット作を連発するというのも、今年を象徴する“色”といえそうです。
東映アニメーションといえば、今年の上半期には第三者による社内ネットワークへの不正アクセスにより、一時的に当時制作中の作品の制作に遅延が発生するなど、厄年とでも言うような事態に見舞われました。そんな状況から、下半期に入り立て続けにヒット作を連発する様子は、もはやそれ事態が主人公のようなムーブ。「ジャンプ作品の映画といえば、東映アニメーション」。そんなことを思い出させてくれる年となりました。

2023年もジャンプ映画の勢いは続く?

もはや毎年一本は、ジャンプ映画の大ヒット映画が現れるのは確実と言えるような状況。すでに来年2023年も多くの作品の上映が控えています。3月には『ブラッククローバー 魔法帝の剣』の公開や、ジャンプ+作品の『劇場版SPY×FAMILY』の制作が発表されたばかり。
劇場版ではないながらも、2月3日からは 『鬼滅の刃』が『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』と題して、TVアニメシリーズ最新作の第1話の先行上映を含む企画上映を実施。引き続き、映画館でのジャンプ作品の活躍は続いていきそうです。

ディズニーの凋落と海外アニメーションの希望、イルミネーション

ディズニーは劇場上映との付き合い方を見直した方がいい?

内作品の活躍が目覚ましい一方で、いまいち盛り上がりに欠けるのが海外作品です。
かつては、『アナと雪の女王』(2013)や『ズートピア』(2016)など多くのヒット作を送り出して、新たなディズニールネッサンスを迎えたと思われたディズニー作品でしたが、アニメーション作品での活躍はそれらの成績に比べるとおとなしめ。
3DCGアニメーション映画の最大手と言えるピクサーチームの『バズ・ライトイヤー』も夏休みシーズンに向けた興行作品だったにも関わらず7月中には興行通信社の発表する動員数ランキングからは10位圏外へと外れていきます。さらに目立てなかったのは11月に公開された『ストレンジ・ワールド もうひとつの世界』。こちらは公開初週にのみランクインするのみで、公開されたことすら知らなかった人も多かったのではないでしょうか。

ディズニー作品の興行成績の低調ぶりは日本だけではなく、世界的にも同様であり、『バズ・ライトイヤー』『ストレンジ・ワールド もうひとつの世界』も成績の低調ぶりの方がニュースになる例が多い状態でした。
作品の評判が決して悪い訳ではない一方で、この低調ぶりの理由として見逃せないのが映像配信サービス・ディズニープラスの存在です。近年ディズニー作品は、劇場公開からひと月程度で、ディズニープラスでの配信を開始しており、こうなってくると無理に劇場に足を運ばずとも「少し待って配信で観ればいいか」という気になってしまうもの。2022年は、当初は劇場上映を発表していたピクサー作品の『私ときどきレッサーパンダ』を予定を変更してディズニープラスでの独占配信へと移行したこともニュースになりましたが、作品自体が良いものでも、いかんせん話題になりにくいのも問題。ディズニープラスとの兼ね合いが、うまくいっているとは言い難い今の傾向を、ディズニーがどう思っているのかは気になるところです。

ユニバーサル勢力がディズニーの地位を脅かすか

そんなディズニーが目立った活躍ができていない中、頑張っているのがイルミネーション・エンターテインメント。イルミネーションは2022年には、3月に『SING/シング:ネクストステージ』、7月には『ミニオンズ フィーバー』を劇場公開し、それぞれ興行収入30億円と40億円を超える好成績を記録しており、映画館を盛り上げる海外アニメーションといえばもはやディズニーよりもイルミネーションとなっています。2023年にはビッグタイトル『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の公開も控えているということで、海外アニメーションといえば……というお株をディズニーから完全に奪う日も近いのかもしれません。

とはいえ、さすがにディズニーリゾートといったテーマパーク運営やグッズの人気などももちろん健在なので、そうそうイルミネーションがディズニーの立場に代わるなんてことはないのかもしれませんが、そんなイルミネーションといえばユニバーサル傘下の会社。同じユニバーサル傘下のドリームワークスアニメーションは今年『バッドガイズ』を発表して、成績こそイルミネーションにはおよばずも、その高水準の出来栄えが話題になっていたり、来年には久しぶりのシリーズの新作『長ぐつをはいたネコと9つの命』の上映も発表されています。東のディズニーと西のユニバというテーマパークの対立構造が、そのままアニメーション映画にも置き換えられる時代がやってきたと言えるのではないでしょうか。

コロナ禍からはひと段落の2022

上位作品を振り返ると、日本作品にも海外作品にも満遍なくヒット作があるのは嬉しいことですが、全体的にもアニメーション映画の客足が戻ってきたと言えるのが嬉しい話。
タイトルに2021と付いていながら2022年公開となった『ドラえもん のび太の宇宙戦争(リトルスターウォーズ)2021』の例を始め、昨年まではまともに映画興行をするのも困難となる時期が度々発生していました。
しかし、今年はコロナ自体の影響が止んだ訳ではないながら、一年を通して何かしらのヒット作や話題作がある状態で、劇場をアニメーション作品が賑わせていたのがアニメーション映画ファンとしては嬉しい限りです。感染予防を引き続き継続しつつ、2023年はもっと気軽に映画館に足を運べて、さらに盛り上がりを見せる年になることを期待したいところ。今回紹介したジャンプ映画の猛攻と、ディズニーvsユニバーサルという見立ては、2023年の様子も眺めていくときにも、きっと新たな発見を与えてくれるはずなので、皆さんもぜひ、アニメーション映画の動向を追ってみてはいかがでしょうか。

興行収入三位内のアニメ作品情報

『ONE PIECE FILM RED』
公開日:2022年8月6日
監督:谷口悟朗
原作:尾田栄一郎
配給:東映
製作国:日本
上映時間:115分
公式サイト:https://www.onepiece-film.jp/

世界で最も愛されている歌手、ウタ。素性を隠したまま発信するその歌声は“別次元”と評されていた。そんな彼女が初めて公の前に姿を現すライブが開催される。色めき立つ海賊たち、目を光らせる海軍、そして何も知らずにただ彼女の歌声を楽しみにきたルフィ率いる麦わらの一味、ありとあらゆるウタファンが会場を埋め尽くす中、今まさに全世界待望の歌声が響き渡ろうとしていた。物語は、彼女が“シャンクスの娘”という衝撃の事実から動き出す。「世界を歌で幸せにしたい」とただ願い、ステージに立つウタ。ウタの過去を知る謎の人物・ゴードン、そして垣間見えるシャンクスの影。音楽の島・エレジアで再会したルフィとウタの出会いは12年前のフーシャ村へと遡る。

『すずめの戸締り』
公開日:2022年11月11日
監督:新海誠
配給:東宝
製作国:日本
上映時間:122分
公式サイト:https://suzume-tojimari-movie.jp/

九州の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)は、
「扉を探してるんだ」という旅の青年・草太に出会う。
彼の後を追って迷い込んだ山中の廃墟で見つけたのは、
ぽつんとたたずむ古ぼけた扉。
なにかに引き寄せられるように、すずめは扉に手を伸ばすが…。

最新情報をチェックしよう!