どもどもおはげそー。
Vtuberのげそにんちゃんです。Vtuberなのでオリジナルの挨拶があります。月一くらいでしか使ってない挨拶ですがぜひ使ってみてください。ちょっとだけ幸せになれるかもしれません。
ぼくは普段YoutubeやTwitterでフランス語圏を中心に海外のマンガを紹介する活動をしているんですが、今回ご紹介するのはマンガではなく、アニメーション作品。その中でもインディペンデント・アニメーションと呼ばれるジャンルに属する作品です。海外マンガのお話を期待していた方すみません…。次回以降にご期待ください!
ということで、まずインディペンデント・アニメーションという言葉をはじめて聞くという方もいるかもしれないのでめちゃんこ簡単に説明すると、「個人作家が(もしくは少人数で)製作した主に映画祭/Web上で公開されるアニメーション作品」のことです。地上波や映画館で公開される商業アニメーションのオルタナティブな存在で、かつてのアート・アニメーションという言葉に代わる形で使われるようになりました。日本ではひらのりょう1、水江未来2などが有名でしょうか。にじさんじの御伽原江良ちゃんがプレイして話題になった「プラグ・アンド・プレイ」を制作したミヒャエル・フライもインディペンデント・アニメーション作家です。ただ、もちろん商業とオルタナの間にもグラデーションがあり、ここ数年インディペンデント・アニメーションと商業アニメーションの特徴を併せ持った作品も多く生み出されています3。
インディペンデント・アニメーション作品はリソースの関係上その多くが短編であることから、VimeoやYoutubeで無料公開されていることも多いので、ぜひ検索してみてください。また、「tampen.jp」という短編/インディペンデント・アニメーションの総合情報サイトでは、無料で見られる質の高いアニメーションが紹介されていますので、「何から見たらいいのか分からない……!」という方はぜひこちらのサイトをご覧ください。
今回紹介する『エクスターナル・ワールド』(THE EXTERNAL WORLD, 2011)もYoutubeにて無料で視聴可能です。アイルランド出身で、現在はロサンゼルスに拠点を置いて活動しているデイヴィッド・オライリー(David OReilly)による全編CGのアニメーション作品である本作は、オライリーのアニメーション作家としての活動の集大成とも言える作品です。
オライリーのアニメーションにおける特徴はなんといってもそのグラフィックです。ローポリゴンで作られたキャラクターや粗いグリッチ、ジャギーを利用した表現など、それまでのアニメーション業界にあった「CGはリアルであればあるほどよい」という規範を革命的に乗り越え、その後のCGアニメーションに大きな影響を与えました。
アニメーション研究者の土居伸彰はオライリーの革新性についてこう述べています。
オライリーが革命的だったのは、そういう傾向があるなかで、あえて「人工物」としてのCGを活かした表現に取り組んだということです。ポリゴンなど、CGにおける「素材」みたいな状態をそのまま留めたまま、アニメーション作品を作りました。オライリーはそれを「個人でできるCG表現」というようにも言っています。CGをつくるのって、基本的にはお金がかかるんですよね。リアルな映像をつくろうと思ったら、マシンの処理能力も、高価な専門のソフトウェアも、人員も、かなり必要となってくる。そんななか、「ラフにつくる」オライリーの方法論は、個人作家たちにCGの可能性を開放するために必然的なやり方だったわけです。
第4回 ゲームという名の、オルタナティヴなアニメーション デイヴィッド・オライリー&インディゲーム)


(https://www.youtube.com/watch?v=Q2YdJy0w66Y)
本作『エクスターナル・ワールド』でもそのグラフィック面での魅力が最大限に発揮されており、ローポリでPS時代のCGを思わせる「軽さ」のあるキャラクターと、ドラッグキメながら作ったんじゃないかっていう展開と画作りは不思議と調和を見せ、そこにオライリーの一貫した美学(スタイル)が伺えます。


数秒~数十秒で脈絡なく切り替わるシーンは、ぼくたちがストーリーを理解する前に次の展開へと移り、ストーリーを予測する隙を与えません。作り手と観客の間のコミュニケーションを拒絶するかのような挑発的な作品ですが、そこがこの作品の魅力の一つであることは間違いないでしょう。アニメーションを視聴する際にぼくたち視聴者が無意識のうちに認めている約束事(コード)を徹底的に無視、分解していく本作は、アニメーションのあり方自体を問い直す2010年代を代表する傑作となりました。


ということで、短い記事ではありますが、商業アニメーションとは違った魅力があるインディペンデント・アニメーションの世界のその一端をお見せすることができたでしょうか。作家の個性がそのまま反映されるインディペンデント・アニメーションは、一見尖った近寄りがたい世界に見えますが、自分の感性に合った作家を見付けると、バッとアドレナリンが溢れて一気にその世界に引き込まれます。この記事で少しでもそのお手伝いできたなら嬉しいです。
デイヴィッド・オライリー公式サイト
http://www.davidoreilly.com/
参考URL
https://wired.jp/series/world-animation-atlas/04_david-oreilly-indie-game/
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- アニメーション作家、マンガ家。代表作に『パラダイス』(アニメーション、2014年)、『FANTASTIC WORLD』(マンガ、リイド社、2016年)など。
- アニメーション作家。代表作に『DREAMLAND』(2018年)、『MODERN』(2010年)など。現在、オリジナル長編アニメーション『水江西遊記(仮)』を制作中。
- 『君の名は。』(2016)『夜明けつげるルーのうた』(2017)など、近年作家性の強いアニメーションが大きな評価を得ている。