

あれ…? もしかして私が見たことあるのってシーズン1とか2か……? って怖くなってきたな
2025年最初の映画は劇場版『忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』にしました。「どうせ……どうせすごくおもしろいんだろう! こういう枠は!」みたいな感じで見に行ったんですが、やっぴよう! めちゃくちゃ良質なアニメ作品でしたわよう!すげー楽しく気持ちよく見られたし……なんか自分の半生を振り返ってしまうような側面もあったよ。良かった……。


『忍たま乱太郎』といえば尼子騒兵衛氏によるマンガ『落第忍者乱太郎』を原作とするアニメで、長いあいだNHKで放送されている……スタートは1993年!? 30年以上前ッ!? だよなあ……。
怖ッ!
と、まあとにかく長きに渡り放送されているアニメです。私もガキの頃見てたわ。あと原作も2冊くらい読んだなー。大人になってから「忍たま乱太郎は忍者描写が『ガチ』すぎてすごい」と評価されてるのを知ったけど、確かに当時読んだときから「なんじゃあこりゃあ」って思ったのを覚えてるよ。忍者刀はなぜ短くて、どんなことに使えるのかとかさ……。
あと「クナイは投げて使うだけの武器じゃなくて、土を掘るのにも使える!」とか知ったのもこのマンガからだったなあ。時を経て『モータルコンバット』でやってるの見て『忍たま』の原作で見た!!!! って熱くなったりしたっけな。


今回の映画は同タイトルのノベライズを原作とした作品となっています。
なんでみんな滝夜叉丸先輩だけは覚えてるんでしょうね
今回の映画の中心になるのは主人公たち1年は組の担任、我らが土井先生だ。


ポスターとか見ればバレバレだし劇中でも即バレするのでネタバレしますけど、今回の映画では土井先生が記憶喪失となって洗脳を受け、ドクタケ忍者隊の一員として忍術学園の敵に回る。
それを取り戻そうとせんとする忍術学園、そして他勢力はどう反応するのか──? という話です。


あらすじだけ見たときはふーんなるほどね、としか思ってなかったんだけどこの構成がすごくいい活用をされていて……ともすれば私のような「久々に、マジでガキのとき以来くらいの勢いで忍たまを見にきた層」にもしっかりと刺してやるぞ、作りになっていて良かったですわー。
なんていうか「土井先生の不在」を描くことで逆にその存在の大きさを描写しているというか……いないことでの影響、各々の心情を描くことで「土井先生という存在の大きさ」がわかるし、それぞれのキャラクターについて「こいつは、いなくなった土井先生についてどう思ってるんだ?」を描くことでそれぞれのキャラクターがどんな奴なのか、がわかるようになっている。


例えば私は例によって、先輩キャラは「なんか……滝夜叉丸先輩っていたよな あの人だけは覚えているな」くらいの感じで見に行って、実際映画を見ていても9割の上級生は「あ、あ、なんか見たことはある。名前と見た目は一致しないけど見たことはあるなあ。どんな人なのかは覚えてないけど」って感じだったんだけども、彼らが土井先生捜索についてどういう判断を下すかとか、戦闘のシーンでどう立ち回るかとかでしっかりとキャラ描写をしてくれるのでこの映画みるだけで区別がついて愛着が湧くようになっていて、いや〜これはうまいなあ! と思わされましたわ。


僕らは大人になってしまった
あと大人たちや上級生の描かれ方も印象的だった。まずめちゃくちゃ強い。土井先生がビビるくらい強いし、かっこいいし、また当然土井先生が超強いので山田先生も超強い。
また、大人たちに負けじと上級生たちも1年生とは次元が違う実力を見せてくれる。君らそんな強いんかい。ぜんぜん実戦に足運んどる! これでまだプロの忍者じゃないってんだから怖いな。すごいな。
それでいて彼らがまためちゃくちゃに優しい。庇護者すぎる。やはりどうしても1年は組が張り切るとトラブルメーカーとして機能しがちで、ついつい「ウワーッ! 余計なことすんなって!」とみてるこっちはヒヤヒヤしてしまうんだけど、そういうことがあっても彼らは怒鳴ったりとかせず、ちゃんとフォローしながら守ってあげるし意思も尊重してあげるんだよね。良すぎる。立派すぎる。


そうした優しさのなかで、特に印象に残ったのが山田先生のあるシーン。土井先生がいなくなったことがわかり、じゃあどうすんだべよと大人たちが顔を合わせて議論している最中に、きり丸が部屋に入ってきてしまう場面だ。
ここで動揺してしまったり、勝手に入ってくるなよと釘を刺したっておかしくないのに、山田先生は瞬時に表情を切り替えてめちゃくちゃ柔和な声と表情で、ものすごく優しい声で対応するんですわ……。
昔はさ、山田先生って土井先生と比べるとよりコメディリリーフな印象が強かった(女装とかするしな)んだけど、あんた……すごい偉大な保護者だったんだなあって今頃親心めいたものに気づいて泣けてしまったよ。
「子どもたちに余計な心配をかけさせないようにしよう」っていう、全力の大人の優しさが滲み出てて、本当に良かった。
同時に、「そうか……忍たまを昔見ていた私は、1年は組に近い年齢と視点を持っていたのに、今となっては山田先生に近くなってしまったんだな……」と刻の流れに想いを馳せてしまった。
きり丸かわいすぎ
で、そう いま話題に出したけどきり丸。きり丸な。子どもの頃から忍たまのメイン3人組だときり丸がいちばん好きではあったんだよ。なんかかっこいいじゃん。スピード担当っぽくて。
でも今回、映画を見ていたら「きっ……きり丸とはこんなにかわいかったのか!?」と思い知らされてしまった。おいかわいすぎるぞ!


そもそもきり丸は土井先生と一緒に暮らしているので、今回の映画では展開上「土井先生を失った悲しみ」をもっとも直球で表している立ち位置であるし、全体的にいじらしく哀れに思えるシーンが多くてどうしたって庇護欲をそそられる描き方はされている。だ、だがそれにしても……それにしてもだよ!?


ていうかよく考えたら四白眼で八重歯キャラなんだから好きに決まってる造形はしていた。なんてこった。マジでたまらなくなるので見てほしい。
ていうかマジで今更なんですけど忍たまのキャラデザのデフォルメ具合って絶妙ですね。1年生の指の描き方とか四肢のバランスとかすごく好きだわ。耳がシルエットだけなのもへぇー! って思ったし、これはキャラデザが載ってるムックとか設定集とか買って研究したい気持ちがある……。ん? 沼か?
ヘイトコントロールうますぎ映画だ
あと、なんだかんだで9割くらいのキャラクターは「知ってる!」「名前と顔は一致しないけど見たことある!」って感じだったんだけどマジで初見だったのが雑渡さん。
「へぇーこんなキャラいるんだ」程度に思ってたらめちゃくちゃ強くてかっこよくてビビっちゃったよ。忍たまってこんなかっこいいキャラいるの!?


雑渡さんは登場する忍者のなかでも圧倒的なプロフェッショナルで、最強クラスの実力を存分に見せつけてくれるんだけど、ちゃんと子どもたちには優しく、すくすく育てと言わんばかりに接してくれるし、部下が嫌われないように怖がられ役も引き受けてくれるしで非常に心配りができる大人でもある。
とはいえ彼はプロ中のプロの忍者なので、洗脳された土井先生が自勢力の脅威になるとわかれば迷わずに殺しにかかる。
が、土井先生を守らんとする者たちの攻撃に対しては決して命は奪わないよう手加減しながら相手して、土井先生を殺そうとしてることについても「これウチの勢力の総意じゃなくて俺の独断ですから」と強調しながら去っていく。配慮がすごすぎないですか!?


なんだろう、結局こういう映画で既存のネームドキャラクター同士が戦うぞってなっても、マジで殺しあいされるとそれはそれで困っちゃうわけじゃないですか。だって殺しちゃったら基本出番がそこでスッパリ終わっちゃうわけだもんな。だから手加減しあって戦うとか、気前よく殺せるようの映画独自の敵を出すとか……あるいは舐めプして殺さないようにするとかそういう手段を取るわけじゃないですか。
でもこの映画では周囲の勢力同士の政治を描くことによって「ここで重要すぎる人物を殺すことは政治的に反感買いすぎてまずいな」とう思惑がしっかり読み取れる作りになっていて「おおこれは……単なる舐めプじゃなくて政治的判断!!」と思えて気持ちよかった。ヘイトコントロールが完璧!!!
そう、マジでヘイトコントロールがうまい。さっきも言ったようなトラブルを起こしがちな1年は組とか、悪役の八宝斎についても適度にいつも通りの慣れ親しんた質感のギャグシーンを用意したり、結果的に事件解決につながるムーブをさせることによって「こいつらの行動ムカつくぜ!」って全然ならないのですごく視聴感が良かった。いやよく考えられてますわ……。


過去最大にシリアスってのを宣伝で推してるけど、同時にギャグシーンの質感が「知ってる知ってるー!」って感じでそのまま維持されてるのも久々に見た身としてはうれしかったし、そのシリアスさとギャグシーンの使い分けと融合がものすごくうまい映画だった。よくできてるよお~!
そういえばU-NEXT入っちゃったからいろいろ見られるんだよな…
そんなわけで大満足だったんだけど強いて言えば山田先生のガチ戦闘シーンが見たかったなー。めちゃくちゃ強いことは伝わったんだけど。もっと大立ち回りをしてほしかったぜ。っていうか土井先生と戦うシーンがあるものかと思っていたぜ。
聞くところによると他の作品で描かれたこともあるらしいので、そっちを見るべきなのかもしれないな……。あれ、これやっぱり深い沼ですか? やばいですか?