本題に入る前に、少しだけ自分語りを聞いてほしい。
TVアニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の放送を皮切りに瞬く間に広まっていった遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム。当時自分は小学生で、ご多分に漏れず我が小学生でも遊戯王は大流行。誰もが自分のデッキを学校に持参しては昼休みに対戦を重ね、クラスの女子に密告され先生に没収、懲りもせずまた新しいデッキを持ち寄って繰り返し遊ぶのが、大流行していた。が、自分はその波に乗れず、デッキはおろか一枚のカードも持たないまま仲間たちの環に入りそびれた変わり者で、人生において一度もカードゲームにハマったことがないまま社会人になってしまった。
そんな折、インターネットで通じ合った人とのオフ会での熱烈なレコメンドを受けたことで一念発起し、高橋和希先生による漫画『遊☆戯☆王』を読破。さらにTVアニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』全224話を完走し、その旅の終着駅として『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』を昨年に鑑賞。TVアニメのキャスト・スタッフによって綴られる原作漫画のその後を浴びたことで、同世代が青春を捧げた作品の一端を吸収し、一人の少年と名もなきファラオ、数多のデュエリストや仲間と織りなす「友情」の物語に涙した。
その軌跡は私のライター名「ツナ缶食べたい」と遊戯王を併せて検索すれば見つかるのでそちらを参照いただくとして、元来ナードという生き物は「クロスオーバー」が大好物である。屋号を同じくする世界や時代の異なるキャラクターが合流して生まれるマリアージュ。無論、人気コンテンツである『遊☆戯☆王』にもそれがあり、今回取り上げる『10thアニバーサリー 劇場版 遊☆戯☆王 〜超融合!時空を越えた絆〜』では、私の知る武藤遊戯の他に二作品の主人公が入り乱れる共演作品となっている。
今回、いわゆる“初代”しか知らない状態で本作を観ている身の上、知識や固有名詞などに誤りが含まれる可能性もあり、その点をご了承いただきつつ、例えるなら「アイアンマンだけ知った状態でアベンジャーズを観る」という稀有な体験のレポートとして本作をご紹介したい。俺のターン!
冒頭、いきなり見知らぬ誰かが襲われている。今回、映画の公式サイトがすでに消失していたのでWikipediaにて適宜カンニングさせていただいているのだが、彼はTVアニメ二作目にあたる『GX』の主人公・遊城十代。敵の仮面男曰く「精霊を操る類まれなデュエリスト」らしいのだが、そういえば背後にいる謎のモンスターと会話している様子が伺える。なんかアイツ独り言多くね??とか学校で陰口を言われていないだろうか。
舞台は変わり、今度は三作目『5D’s』の主人公・不動遊星。彼は世界が崩壊する悪夢を見て目覚めるのだが、心配する仲間に打ち明けて曰く「俺の親父の研究でこの街は一度滅びた」とのことで、めちゃくちゃシリアスな世界観らしい。そんな遊星を元気づけるために「こんな時のためのデュエルだ!」と気分転換を促す仲間だが、カットが変わると彼らはなぜかバイクで道路を爆走していた。デュエルは?カードショップがめちゃくちゃ遠いのか??
疾走する遊星と仲間たちに、先ほど十代と闘っていた仮面男もバイクで現れる。何やら意味のわからないことを言いながら遊星に因縁をつけてきたので、遊星もそれに応戦。「ライディングデュエル!アクセラレーション!」と叫んだと思うと、これまたカットが変わればバイクの側にモンスターが実体化しており、彼らはデュエルの真っ最中らしい。もしかしてこの時代ってカードゲームとバイクレースが融合してるんですか??前向いて運転して??事故るよ。
遊星は相棒と思わしきモンスター「スターダスト・ドラゴン」を召喚すると、仮面男は白紙のカードにそれを封印した。なんか、平成仮面ライダーの映画に出てくる敵みたいな能力してんな……!!と笑っていたのだが、ドラゴンを奪われたことで歴史が変わり、遊星の住む街のビルが崩壊し始める。仲間たちは過去の記事から武藤遊戯とペガサス・J・クロフォードの存在と、その時代にスターダスト・ドラゴンがいることを突き止め、仮面男は時代を行き来する能力があることを悟る。すると、遊星のバイクが紅く光り、バイクは遊星を過去の時代へ連れ出していく。もうなんかよくわからなくなってきました。
遊星は十代に事の詳細を話し、二人は武藤遊戯のいる時代へと逆行していく。どうでもいいけど、遊星ってちゃんと先輩に敬語使えるんですね。所変わって童実野町。ウォーッ遊戯だ!!!!!!!!!!!!!!!!失礼、取り乱しました。この日は童実野町でのデュエル大会が開かれていて、ペガサスもゲストとして会場にやってくるらしい。そこに突如、実体化したモンスターが町を襲い、ビルの崩落に巻き込まれてペガサスと双六じいちゃんが命を落としてしまう。えっ重……と困惑していたら、遊星は事件が起こる三十分前に遊戯を連れ出し、悲劇が起こる前の時代で事情を説明する。もうバイクの能力には突っ込みません。
仮面男は、その正体を現す。名前はパラドックスと言い、破滅する未来を変えるためにやってきたらしいが、ペガサスを暗殺しただけでそんなに世界って分岐するんですか?後、世界の矛盾を示す上で例に出すのが環境破壊・世界紛争・人間同士の差別なのだけれど、今アンタが喋ってる相手、10代のカードゲーマーよ?背負えないって。
未来は俺達の手で決めるぜ!と言わんばかりに、遊戯・十代・遊星VSパラドックスのデュエルがいよいよスタート。3対1の構図となるが、遊戯ら三人は4000のライフポイントを共有し、一回のターンで行動できるのは基本的に一人だが、伏せカードの使用においては条件が成立すれば誰でも発動できるスタイルだ。
パラドックスの戦法は、フィールド魔法「sinワールド」の効果で強力なsinモンスターを呼び出すもの。その効果は、パラドックス自身はデッキからカードをドローできない代わりにデッキの中のsinモンスターをランダムに手札に加え、sinモンスターは対となるモンスターを墓地に送ることで特殊召喚が可能。これにより、遊星や数多の時代のデュエリストから奪ったであろうモンスターを次々墓地に送り、sin化したそれをどんどんフィールドに召喚していく。攻撃力4000のモンスターを、最初のターンで繰り出す強敵パラドックス。
それに対して、遊星はなんかよくわかんない効果でモンスターを3体特殊召喚して、それを生贄にして「シンクロ召喚」で強力なモンスターを揃える。時代が違えばルールも変わっていくカードゲームの掟。そんな未来のデュエルを見て、ワクワクするぜ!みたいな遊戯と十代。順応性高すぎる。
パラドックスはさらに攻撃力4000のモンスターを追加し彼らを追い詰めるが、ここで十代が「融合」を発動。遊星のモンスターと自身のモンスターを融合させた「ネオスナイト」を召喚に成功する。おそらく映画オリジナルモンスターと思わしきそれは、まさにクロスオーバーの醍醐味。続いてキング・オブ・デュエリスト武藤遊戯の“もう一人のボク”(初代通過済みオタクは風間俊介くんのアテム演技を聴くと泣いてしまう)は相棒のブラック・マジシャンを召喚。さらに「師弟の絆」でブラック・マジシャン・ガールを追加召喚。ちゃっかり二人が会話するファンサービスで、ファンの心を暖めてくれます。
それに負けじとパラドックスはsinブルーアイズとsinレッドアイズを召喚。オイ!海馬と城之内も推しカードをパクられてんじゃねーか!!負けじと応戦する三人だが、パラドックスは自身のライフを生贄に捧げ最強のモンスター「sinトゥルースドラゴン」に変身。あと一発攻撃を受けたら敗北という寸前にまで追い込まれてしまう。
ここで十代は遊戯のデッキの中に眠るクリボーをサーチする効果のあるカードを発動し、遊戯はクリボーの特殊効果でそれを凌ぐというコンビネーションを披露。これは、武藤遊戯の戦法やデッキが後世に伝わり、十代がそれをリスペクトしていたからこそ成し遂げられた奇跡の合せ技。く、クロスオーバーの音〜〜〜〜〜!!!!!!!!!
かくして、スターダスト・ドラゴンの能力でモンスターたちを復活させた遊戯・十代・遊星はコンビネーション技でパラドックスを破り、世界崩壊の危機は回避された。ペガサスが来場特典と思わしきカードを自ら子どもたちに配っている絵面がちょっと面白いのだが、これにてハッピーエンド。遊星は仲間たちの元へ帰り、おそらく当時放送中であったのだろうTVシリーズに繋げる形で「俺達の闘いは続くぜ」ということで、奇跡のクロスオーバーは幕を閉じる。
まだまだ『遊☆戯☆王』シリーズ全般には明るくないが、ちょっとした会話や小ネタを挟むのではなく、カードゲームを介した連携やコンビネーションでクロスオーバーを果たす構成は、題材を思えば本懐とも言うべき作り込みであると思う。時代もルールも違うであろう三人の主人公が、カードの力と能力を信じて強大な悪に立ち向かう。少々重苦しい展開もあるが、カードゲームの創始者が死ぬと世界が崩壊!→カードゲームで世界を守るぜ!な展開はホビーアニメの王道であり、このノリが楽しくもある良作でした。
それはそれとして、『5D’s』の時代はマジで全員がバイクを運転しながらデュエルをするのだろうか。目下一番の興味は、全てこの一点に持っていかれてしまった。
10thアニバーサリー 劇場版 遊☆戯☆王 〜超融合!時空を越えた絆〜
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