自己肯定感が上がる!人生が愛おしくなる!優しい気持ちになれる映画3選

生きていたら色々なことがありますよね。

良いことばかりならいいですが、その大半が辛く、苦しいことだったりします。僕はこの間お風呂に浸かっていたら、浴室乾燥機からカブトムシの幼虫くらいの大きさのホコリの塊がボトボト落ちてきて人生に深く絶望しました

人生はつらく苦しいことばかり

そんな時、人はどうしても荒んだ心になり、優しい気持ちを失ってしまいがちです。優しい気持ちを失えば、他人を気遣う余裕が無くなり、人間関係もギクシャクしてしまうかも……。

そんなこと、ありませんか?

でも、そんなあなたを救ってくれるかもしれないもの、それが「映画」です。優しい気持ちになれる映画を観ると、きっと周りの人たちとより良い人間関係を築くことができるはず。そして、人生を他者と良好に歩んでいる自分に気づくことで、あなた自身の自己肯定感も上がること間違いなしです。

今回は「優しい気持ちになれる映画」を3本選んでみました。
きっとこの映画たちは、あなたの人生に寄り添ってくれるはず。

セルビア『The Life and Death of a Porno Gang』(09)

The Life and Death of a Porno Gang

内戦の爪痕が深く残っているセルビア。映画監督を志すマルコは、各地でセックス・パフォーマンスをゲリラ上演するヒッピー集団「ポルノ・ギャング」と行動を共にすることに。反権力を志向し、過激なショーを繰り広げる彼らは疎ましく思われ、迫害される。行き詰ったポルノ・ギャングに手を差し伸べたのは謎のドイツ人だった。大金と引き換えに彼の出した条件はただ一つ。「この国には死を望む人間が大勢いる。彼らを殺し、その映像を撮るんだ」

セルビアの鬼畜映画といえば、昨年4Kリマスター完全版が劇場公開された『セルビアン・フィルム』(10)の認知度が高いですが、なんとその前夜にもう一本ドス黒い凶悪映画が制作されていました。それが本作『The Life and Death of a Porno Gang』です。

とにかく全編、絶望の源泉かけ流し状態

ピースフルな革命集団ポルノ・ギャング

内戦への反抗を示すため、平和の活動として行っていたポルノ・ギャングのパフォーマンスは「性行為」という露骨すぎるものゆえ、各地で石を投げられまくります。

それのみならず、「都会モンが、ワシらをバカにしとるのか!」と逆上した田舎の住民たちに男女問わずボッコンボッコン尻を犯される始末。同じ性行為であっても、彼らが「表現」として行っている活動が、現実の「レイプ」という行為へと取って代わられる暴力性は、人間の心を破壊するには十分すぎる惨さ。ポルノ・ギャングの面々が尻を掘られながら力なく笑い続けるシーンは、観ている者の胃に砂を流し込むような重いものを与えます。

さらに、ポルノ・ギャングたちが「自死を望む人々」を殺害してはスナッフビデオを作り続ける境遇に陥る後半は、絶望感がエンジン8千回転級の急加速。

いつしか彼らはスナッフビデオを作るように

自死を望む人々は、それぞれ内戦で深い傷を負った人間ばかり。ラブ&ピース=理想を掲げていたポルノ・ギャングたちは圧倒的な現実を目のあたりにしながら、彼らを殺害せざるを得ないのです。

戦争による被害者をこれ以上増やさないために活動していた彼らが、戦争で人生を踏みにじられた人々を殺さなければならない。金のために。自分たちが生きるために。心を疲弊させながら、死を望む人々を殺し続ける。これ以上に残酷なことがこの世界に存在するでしょうか。

絶望の連鎖が止まらない

『セルビアン・フィルム』が個人の視点からセルビアの抱える闇をあぶりだした作品であったのに対し、本作は事象を追い直接的に国の病巣を描き出しております。また、パフォーマンスという「アート」が、最終的にはスナッフビデオという「産業」へと落ちぶれる様も、戦争により芸術がスポイルされてしまうことへの批判と見て取れます。

戦禍が生み出した人間世界の歪み。それを107分に渡って浴び続けた後には、観客は力なく笑うことしかできないでしょう。圧倒的な暴力に蹂躙されたポルノ・ギャングたちのように。

チリ『Hidden in the Woods』(12)

Hidden in the Woods

社会から隔絶された森の奥。麻薬の売人である父親に育てられたアナとアニーは一般社会に触れることなく半ば監禁されるように暮らしていた。そしてアナは父親に犯され、奇形の子供を産む。ある時、父親が麻薬の元締めから目をつけられたことで、抗争が勃発。アナとアニー、奇形の息子は家から逃走する。社会に放り出された彼らは、生きるために人間としてのタブーを破る行為へと身を落としてゆく……。

地獄とはなんでしょうか?

現実とかけ離れた場所や世界で、ありえない事態に直面し続けるシチュエーションを描いた映画を「地獄巡り」と評することがあります。ですが、ある人々にとっては、この現実こそが地獄なのです。それを歯に衣着せず映像に落とし込んだのが本作『Hidden in the Woods』です。

深い森の奥で身を寄せ合い暮らす姉妹

主人公たち(アナとアニー、そしてその息子)にとって、父親に支配された家は地獄と言って良い場所です。父親に犯され、奇形の子供を産み、社会と隔絶されながら一生を終える。でも、その場所には希望がありました。

父親に犯され生まれた子供は奇形だった

「ここではないどこかへ行きたい」

「理想郷があるはずだ」

彼女たちはそう願い、それに縋り生きることができたのです。

しかし、麻薬組織に家が急襲され、逃げるように都会へと出ていくと、そこもまた彼女たちにとっての地獄でした。

残酷シーンも容赦ない

寝食を与えてくれる人もおらず、頼れる人もいない。
奇形の息子への好奇と差別の目。
理想郷と信じていた場所で、彼女たちはただ「生きる」ために体を売り、人を殺し、その肉を喰らう……人としての禁忌を破り、大いなる負の渦へと身を投じることになります。

行くも地獄、帰るも地獄。
そう、彼女たちにとって地獄ではない場所なんて、この世界には存在していなかったのです。

どこに行っても地獄でしかなかった

生まれた時から豊かな人生が保証されている人間がいる一方で、この世界のどこへ行ってもそこが行き止まりの地獄である人間もいる。本作はそんな事実を容赦なく観るものへと突きつけます。

あなたがふとした時に幸せを感じたら、この映画を思い出してください。
その幸せが踏みつけている下には、きっと誰かの地獄が果てしなく広がっています。
この世界はそういう場所なのです。

アメリカ『Hellroller』(88)

Hellroller
生まれつき足が不自由な青年、ユージーンは車椅子のホームレス。母親代わりのホームレスが彼を介護し面倒を見ている。社会的には底辺の身ながらも、二人は本当の親子のようにささやかな幸せと共に暮らしていた。だが、その日々は突如終わりを告げる。ホームレスのゴロツキ集団にリンチされ、母親代わりのホームレスは殺されてしまう。ユージーンは彼女の仇へ復讐を誓うのだが……。

徹頭徹尾、心ない映画です。

そもそもこの映画は単に金儲けのために作られた映画でして(まあ全ての映画がそうとも言えますが……)、「映画的な感動」「ウェルメイドな演出」とは程遠い場所に存在しています。
映画の大半は、完全に「別撮り」と分かるストリッパーやポルノ女優がクネクネと踊っている尺稼ぎシーン。まるで『死霊の盆踊り』(65)。
しかし、そんな無造作な作りゆえ、おそらく制作者が意図していなかったであろう殺伐とした苦味が迸る作品となっています。

車椅子のホームレス ユージーン

ビデオ機材で撮られたボロボロの映像は、ホームレスたちの生活を飾ることなく映し出します。演出らしい演出もなく、撮影もひたすらヌボーッと平坦。
その映像の愛想の無さゆえ「これは映画である」ことから意識は逸れ、まるでどこかで起きた事象を窃視しているような錯覚に陥ります。

そのように平坦であるゆえ、映画内で起きる事象に観客は敏感に反応させられます。
主人公である車椅子ホームレス、ユージーンの面倒を見ていた母親代わりのホームレスが殺害された時の怒り、憎しみ、絶望。それらの感情の行く末……殺意。

罪のない女性たちへ向く狂気

もしこの映画がマトモな「映画」なら、ここからユージーンが怒涛の復讐へと駆け出す、血沸き肉躍る展開を見せてくれるのでしょう。
しかし、本作はそんな人情を持ち合わせておりません。

ユージーンは車椅子ゆえ、仇敵へと近づくことも出来ず、車椅子をゴミ箱に捨てられ、理不尽な暴力を受けるなど、ひたすら悲惨、ただただ無惨な目に遭うばかり。
一時の日経平均株価のごとく、ユージーンの人生は底割れに次ぐ底割れ。そして彼の抱えている負の暴力衝動の矛先は、全く罪のない一般人へと向くことになります。
それも車椅子のユージーンでも太刀打ちできそうな、非力な女性へと。

こうして映画の中盤からは、ユージーンによる女性の殺人劇場へと突入。
ニョッキリと女性が現れては、前述の通りクネクネと踊り、ユージーン(完全に別撮りなので手しか登場しない)に殺害されるだけ。

こんなシーンばっかり

いったい何を見せられているんだ……という困惑は、不思議なことにユージーンが抱えているであろう「俺は恨みのない人間に対して何をやっているんだ……」という感情とオーバーラップします。
描かないことで、観客と登場人物の感情が重なる。
これは本作の無造作すぎる作りゆえに成しえた映画の奇跡と言えましょう。

殺戮に次ぐ殺戮

ハンディキャップゆえ、非力な女性ばかりを狙う陰惨極まりない行為の後に、ようやっとユージーンは目を覚まし、仇であるゴロツキたちへ殴り込みをかけます。
ですが、現実は非情
ユージーンは一瞬で返り討ちに遭い、首をもぎ取られ、死体をゴミ箱に捨てられその生涯を終えるのです。

この糸クズのようにあっけない終わりゆえ、時にユージーンとシンクロしていた観客の感情は梯子を外されることになります。母を失った絶望、殺意、怒り。それらの感情はブツッと切断され、糸の切れた凧のように行き場を失い、虚無感のみが残ることになります。
怒りも、憎しみも、愛も、あらゆる人生の煌めきも、全ては虚無へと帰すのみ。
まるで禅のような悟りの境地を『Hellroller』は我々に与えてくれるのです。

さて、「優しい気持ちになれる映画3選」いかがでしたでしょうか?
え? どの映画も「優しさ」とはかけ離れているって?

シャラップ!!!!!!

満たされた人々がさらに幸せになる恋愛映画や、お涙頂戴のヒューマンドラマを観たって、きっとその30秒後には皆さん平気で人を殴っていると思うんです。
なぜって、それらの映画は「優しさの対極」=「圧倒的な暴力、恐怖、残酷、絶望、虚無」を徹底的に描いていないから。

優しさの対極にあるものを目の当たりにして、初めて人は「こうなりたくない」「他人を慮ることは大事だ」と優しさの重要性に気付き、その心を意識的に得ることができるのです!

だからこそ、我々はもっと胸糞悪くなるような、残酷で猥雑で後ろ指をさされるような作品と真摯に向き合わなければなりません。
それらの作品を観て嫌悪感を覚えたなら、それはあなたの中に良識や優しさのある証拠なのですから……。

以上、優しさ向上委員会のヒロシニコフがお届けしました。
ビバ! 優しさ!

各作品IMDb
The Life and Death of a Porno Gang:https://www.imdb.com/title/tt1388427/
Hidden in the Woods:https://www.imdb.com/title/tt1920956/
Hellroller:https://www.imdb.com/title/tt0180740/

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