『女優霊』
『リング』『仄暗い水の底から』をはじめとしたヒット作を生み出したJホラー界の巨匠、中田秀夫監督の映画デビュー作であり、Jホラーの原点とも言える作品です。
まったく毛色の違うものに仕上がっていますが、ハリウッドリメイクも存在します。
フィルムや窓ガラス越しに不意に姿を見せる霊の存在感が不気味で、じわじわと撮影現場を蝕んでいくような描写に怖さを感じる、Jホラーの礎を築いた1作。
本作に登場する霊は黒髪ロングで白装束を纏っており、後に「貞子」の原型になったキャラクターですが、この霊は映画の進行に伴って主張が強くなっていき、終盤では実体化して大笑いしています。
そんな霊と遭遇した、主人公(柳ユーレイ)の情けない悲鳴と終始大笑いしている幽霊のハイテンションにはやや面白さを感じてしまうものの、お歯黒の霊が大笑いしてる姿はかなり不気味。
『降霊』〜KOUREI〜
仲むつまじく静かな生活を送る、効果音技師の克彦と純子。しかし一見平凡そうに見える純子は実は霊能者で、純子の力に興味を持つ大学院生、早坂の紹介で降霊術を時々行ったりしていた。そんなある日、逃走中に事故を起こして犯人が意識不明になるという少女誘拐事件が起こる。警察は早坂を通して行方不明のままの少女の居場所を探ろうとするのだが……。
小説『雨の午後の降霊術』を原作に、1999年にTV放送され、後に劇場公開された作品。
監督は『CURE』や『クリーピー 偽りの隣人』の黒沢清監督です。
タイトルから霊的なホラー作品がイメージされますが、霊の存在やホラー演出同様、誘拐事件に巻き込まれた夫婦の描き方が恐ろしく、異常な事態に巻き込まれたことによって本心が露わになる人間の恐ろしさや、ジメジメした後味の悪さが印象的な作品です。
サスペンス展開から終盤の怒涛のホラー展開、さらにクライマックスの非常に居心地の悪い降霊術シーンと、目が離せない展開が続きます。
8巻で印象的だった「光の力」
役所広司が光の力で自分の分身と闘うシーンは必見。
『ゲット・アウト』(原題: Get Out)
ニューヨークで写真家として活動している黒人のクリス(ダニエル・カルーヤ)は、週末に恋人の白人女性ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家に招かれる。歓待を受けるが、黒人の使用人がいることに違和感を覚え、さらに庭を走り去る管理人や窓に映った自分を凝視する家政婦に驚かされる。翌日、パーティーに出席した彼は白人ばかりの中で一人の黒人を見つける。古風な格好をした彼を撮影すると、相手は鼻血を出しながら、すさまじい勢いでクリスに詰め寄り……。
2017年公開されたホラー映画で、コメディアンであるジョーダン・ピール初監督作品の『ゲット・アウト』。
監督の持ち味を活かしたコメディ要素に、社会風刺、スリラー要素を加えてホラー映画として成立させた本作は高く評価され、第90回アカデミー賞では主要4部門にノミネート、その内脚本賞を受賞するという快挙を成し遂げている作品です。
仕掛けが満載でネタバレなしで観るべき作品のため、映画については言及しづらい部分がありますが、チェンソーマン9巻及び本作を鑑賞済みの方は、9巻で起こるある展開に対して「そういうことか…」と納得できるチョイスになっています。
チェーンソーが象徴的な『悪魔のいけにえ』をはじめ、6巻に記載された『コララインとボタンの魔女』を彷彿とさせる「人形の悪魔」の登場や、9巻で言及された『ゲット・アウト』等、作者コメントで言及されている映画作品の特徴やギミックは、少なからず『チェンソーマン 』にも影響を与えていると思われるため、作者、藤本タツキ先生が言及しているこれらの映画作品を鑑賞することで、チェンソーマンもより深く読み解くことができるかもしれません。
『ジェイコブス・ラダー』
旧約聖書のヤコブの話をヒントに、悪夢と現実の間で翻弄されていくベトナム帰りの男の奇妙な体験を描いたサスペンス・スリラー。ニューヨークの郵便局員であるジェイコブは最近夢と現実の区別がつかなくなるほど奇妙な出来事に遭遇していた。疾走する地下鉄に乗る得体の知れない人々。掛かりつけの医者の死亡。自分を轢き殺そうとした車に乗る異様な人物。そしてベトナムの悪夢や幻覚までもが見え始め……。そんな時、ベトナム時代の戦友から電話がかかってくる……。
1990年に公開された本作は、主人公が見る現実と妄想、過去と現在が混ざり合った情景をホラーテイストで描き、混沌とした世界観や不気味で悪魔的なキャラクターの造形がカルト的な人気を博している作品です。
エイドリアン・ライン監督は、H・R・ギーガー、フランシス・ベーコン、ジョエル・ピーター・ウィトキンなどの絵画や写真を参考にこの不気味なイメージを作ったと語っており、劇中で特に印象的な「頭を振る男」は強くジョエル・ピーター・ウィトキンの影響を受けていると思われます。
『チェンソーマン』でも闇の悪魔の造形や地獄の描き方など、ベーコンやピーター・ウィトキンなどのアーティストの作品を彷彿とさせるようなものが登場し、その影響を窺い知ることができます。
チェンソーマンのビジュアルイメージのルーツとなっているかもしれない『ジェイコブス・ラダー』ですが、2019年にリメイク版が制作されており、オリジナル版とはやや毛色の異なる作品となっているため鑑賞の際はご注意を!
1990年版と2019年版の違いについては以下の記事をご参照ください。
コワすぎ!シリーズ
【コワすぎ!シリーズ一覧】
- 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-01【口裂け女捕獲作戦】
- 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-02【震える幽霊】
- 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-03【人喰い河童伝説】
- 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-04【真相!トイレの花子さん】
- 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!劇場版・序章【真説・四谷怪談 お岩の呪い】
- 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!史上最恐の劇場版
- 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!最終章
- 戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!FILE-01【恐怖降臨!コックリさん】
- 戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!FILE-02【暗黒奇譚!蛇女の怪】
2012年に1作目の『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-01【口裂け女捕獲作戦】』がリリースされ、ニコ生ホラーやTwitter等ネットを中心に話題となったホラーモキュメンタリー作品の「コワすぎ!シリーズ」。
投稿された心霊映像を取材班が検証する過程で起こる怪奇現象を収録した作品で、特にディレクターの工藤を中心としたキャラクターの濃さが特徴となっている作品です。
「口裂け女を車で轢いて捕獲を試みる」「河童と素手で戦う」「コックリさんをバットで殴る」など、暴力的で破天荒な工藤のキャラクターが際立ちますが、1つの作品の中で1本の投稿映像のみの検証を行うという心霊ビデオとしても非常に斬新なフォーマットを採用しており、個性的な作品として非常に高い人気を誇る本作。
よくある投稿映像や噂話程度の個人レベルの小規模な話題から世界規模のスケールにまで発展していく様子は、チェンソーマンの展開とも共通する部分があるように思います。
7作目の『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!最終章』で一旦幕を閉じ、同じ見た目・名前で若干性格の異なるキャラクターが登場する別世界の物語「超コワすぎ!」シリーズに移行し、未だに完結していない本シリーズですが、メインキャラクターの「工藤」「市川」は現在『心霊マスターテープ2~念写~』にて「限界戦慄ファイル ヤバすぎ!」の獅童、市山として登場しているため、コワすぎファンはぜひ「心マス2』もチェックしてみよう。
『チェンソーマン』作者コメント言及作品一覧
- 悪魔のいけにえ
- ヘレディタリー
- 貞子VS伽倻子
- デス・プルーフ in グラインドハウス
- コララインとボタンの魔女大好き!
- 女優霊
- 降霊
- ゲット・アウト
- ジェイコブス・ラダー
- コワすぎ!シリーズ
中には配信などはされておらず視聴難易度の高い作品もありますが、大体はAmazonプライムビデオ等で視聴可能な名作揃いなので、チェンソーマンと併せて、ぜひここで紹介した映画もお楽しみいただければ幸いです!
前作『ファイアパンチ』同様、映画が物語に関わり、シネマティックな展開や有名映画へのオマージュも見受けられた作品『チェンソーマン』。
3/4発売の11巻にて第一部完となりましたが、続編やアニメへの期待も高まり、今後も目が離せません。
- 超バニアバトル バニバト! 13話
- 大人たちの優しさと政治に舌を巻き、自分が忍たまだったことを振り返る良作『忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』
- ナースのキクミカワさん 3話
- もうちょっとで危うく恋するところだった 本日発売!
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- ハンターハンターにおける幻影旅団の理想としての恋のエチュード (サイキンオセン) 関連
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- サキュバスのメロメロ 19話/マー
- ぢごくもよう 第三十五話『古着の怪』
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監督デビュー作の撮影中、ラッシュフィルムに一本の未現像フィルムが混じっていた。その中に謎の女が映っていたが、どうやらそのフィルムは昔、製作中止になった作品のものらしい。
しかし、そのフィルムを見てしまった時から次々と撮影現場に奇怪な出来事が起こり始め、ついには死人まで出てしまう。果たして、謎の女は誰なのか?
過去の女優のたたりなのか?映画の完成間近、次は何が…?