『けいおん!』は過去の作品???いや現役ですって!!!!
軽音楽部に入部した高校生の学園生活における青春と、ガールズバンドとしての成長を描いた漫画作品『けいおん!』。
2009年から2011年の間アニメ化され一大ムーブメントを巻き起こした本作を覚えているだろうか?
秋山黄色を始め、ミュージシャンとして活躍している人の中にもけいおん!をきっかけとして音楽に出会ったと公言している方も多い、非常に大きな盛り上がりを見せた作品だ。
大げさに言えば、現在25歳〜35歳くらいのオタクはけいおん!の影響でだいたいギターかベースが弾ける。この世代でギターをやっている人の赤のムスタング所有率が異常に高いのもけいおん!の影響だろう。
当時の熱狂を知らない方向けにわかりやすく説明すると、アニメの5話で登場人物(澪)が使っていたヘッドフォン通称「澪フォン」は『K701』というモデルに酷似しており、K701は当時の販売価格で約8万円(今は結構安く買える)したのだが、オーディオマニアというわけでもない当時のアニメオタク達がこぞってこの高級ヘッドフォンを購入した。それくらい影響力のある作品だった。
劇場版『けいおん!』の公開から10周年を迎えたこともあり、昨年12月には話題に上がることも多かったが、当時ハマった人もそうでない人にもまず知ってほしいのが本作が現役の作品であるということだ。
原作『けいおん!』が終了後は大学生編の『けいおん! college』や、本編で後輩キャラだった中野梓を中心とした『けいおん! highschool』といった続編が刊行されたが、両作品は2012年で終了、そこから6年の期間を経て2018年から『けいおん! Shuffle』の連載が始まり、現在も続いている。
2020年2月に第1巻が発売され、先日2022年7月に第2巻が発売された『けいおん! Shuffle』について以下で概要を説明しよう。
『けいおん! Shuffle』とは?
けいおん!の舞台である桜が丘高校の学園祭でたまたま軽音部の演奏を見た他校の生徒が強い影響を受け、自分の学校で軽音楽部に入ろうとするところから本作は始まる。
つまり、けいおん!本編と同じ世界観を共有しているが、完全に新規キャラクターのバンドを通した成長が描かれているのが『けいおん! Shuffle(以下Shuffleと表記)』という作品である。また本作開始が桜高の学園祭の時期であることから、時系列としては続編ではなく本編と並行して進行するストーリーとなる。物語の中心となるキャラクターの学年は本編での唯・澪・律・紬と同じ学年(開始時点で1年生)となっている。
本編では後にギターを手にすることとなる唯を中心にストーリーが進行するがShuffleでは、ライブで見た田井中律のドラムに心惹かれ、ドラマーを志望する佐久間紫(さくま ゆかり)を中心に進行する。
本編での律と澪のように、紫の幼馴染である清水楓(しみず かえで)がベースを担当するという流れになり、リズム隊を中心に進行する珍しい音楽漫画でもある。
紫・楓の通う高校では、軽音楽部は部活として認可されておらず同好会扱いとなっており、1巻では諸事情で散り散りになった2年生の先輩陣が改めて同好会に集まる過程と、ギター担当としてバスケ部との掛け持ちで澤部真帆(さわべ まほ)が加入した1年生陣がバンドとして演奏を行うまでの過程が描かれる。
1巻は現在(2022年8月)、Kindle Unlimited にて無料で読めるため会員の方は今すぐに読んでみると良いだろう。
『けいおん!』本編との繋がり、旧作キャラは出るのか???
アニメ1期の6話で描かれた学園祭ライブは我々視聴者のテンションを上げ、楽器屋に足を運ばせる熱量があったが、そのライブに影響を受けた同世代の高校生がいて、楽器を始めていたという当時のオタク達ともシンクロするような舞台設定だけでも非常に感慨深くなるが、Shuffleでは時系列が本編と並行していることもあり本編登場キャラクターとの絡みも描かれる。
Shuffleの中心となる3人は音楽自体にはあまり精通していないため、コピーしたいバンドや曲がない状態からバンドを始めることとなる、そこで3人は桜高学園祭で見た「放課後ティータイム」の曲をコピーする流れになるものの、音源が一般に流通しているわけではないので、情報を集めるために桜高に潜入する紫の姿が描かれる。
そこでは、名前は出ないものの、10年前けいおん!に熱中した俺たちがニヤッとできるようなキャラクターが登場する。
その他、2巻では初心者の紫にスティックの選び方を助言する親がジャズバンドをやっている小学生のような中学生が登場する等、あくまでサブキャラクターとして本編キャラクターが登場する。
現状大きな絡みはない(名前を聞かない等意図的に避けているような描写もある)が、うっすらとした絡みの中で旧作キャラが新キャラにバンド活動における強い影響を与えている構図は、新キャラが喰われることなく非常に良いバランスだと思うので、まだ登場していない旧作メインキャラクターがどのようにShuffleに再登場するのか期待が高まる。
ただ、アニメがブームになった頃には同い年くらいだったキャラクターがまだ高校生なのにも関わらず自分は10年くらい歳をとってしまった現実に少し涙したのも事実だ。
『けいおん! Shuffle』は面白いのか???
前述した通り、旧作との繋がりも描かれるため、けいおん!ファンにはオススメできる作品だが、作品単独として面白いのかという点も重要だろう。
元々けいおん!はアニメの評価が非常に高く、独特なカット割りやパン等、山田尚子監督の演出による描き方の妙が光る作品だと思う。しかしながら、キャラクター性やバンドを通した高校生の成長や青春といった基本要素は原作漫画に依る部分が大きく、Shuffleにおいてもその良さが見受けられた。
1巻で描かれる、メンバー間の意思疎通が不十分で実質解散してしまっていた先輩達のバンドが再結成に向かっていく流れは、アニメ1期11話で描かれた律と澪の喧嘩回を彷彿とさせ、オチとしてもグッとくるものがあった。
ギターの上達で悩む真帆に対して助言する上級生、岩崎しなの先輩のセリフも正反対の個性を持った二人のギタリストを結びつける「音楽」そのものに対しての向き合い方として非常に心打たれるものがある。
楽器初心者の高校生がバンド活動を通した紆余曲折を経て、楽器のスキルだけでなく人間的にも成長していく、けいおん!本編とも共通する物語の基礎は、バンドを題材にした作品として良作だと感じた。
まんがタイムきらら方式の4コマ作品に抵抗がなければ多くの人にオススメできる内容となっている。
あの頃けいおん!にハマっていた君へ。『けいおん! Shuffle』を読め!
【オマケ】時代設定は2010年前後になるが…
昨今、古い作品を観ると多くの人が気になるのが「携帯電話」だろう。
現在ではスマホが一般的で、フィーチャーフォン、いわゆるガラケーが登場すると「古いなぁ」と思ってしまう。
初代iPhoneの登場が2007年で、ガジェットマニア的な人以外にも一般的に普及し始めたのが2010年頃(iPhone4あたり)なのでけいおん!はその過渡期とも言える時期の作品だが、本編ではがっつりガラケーやメールを使用する姿が描かれる。
しかしながら、同じ時代設定のはずのShuffleではスマホを使用し、演奏時の姿を記録する様子等が描かれる。
本編では何も説明されないが、1巻のオマケ的なページで非常に強引な方法でスマホの使用を読者に認めさせる技を駆使されてしまい思わず笑ってしまった。
懐かしさと現代の新鮮さが同居する新作『けいおん! Shuffle』を読んでぜひその強引な手法を体感して欲しい。
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