8月11日(火)1:59から日テレ「映画天国」にて『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』の地上波初放送が決定した。
そこで、本作の魅力並びに制作スタジオである「ライカスタジオ」について紹介しよう。
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』原題:Kubo and the Two Strings
あらすじとしては、日本(に非常に近い世界観)を舞台に、三味線で折り紙を操ることのできる少年「クボ」がサルとクワガタをお供に、自分の命を狙う祖父「ムーンキング」に対抗すべく、不思議な力の込められた三つの武具を集める旅に出る。といったものだ。
かなり分かりやすい冒険譚をベースに、「桃太郎」や「竹取物語」的な要素が加えられ、非常に馴染みやすいファンタジー作品に仕上がっている。
伝説の武具を集める旅、主人公クボの成長、巨大なモンスター(妖怪)とのバトルなど正統派冒険ファンタジーでストレートなエンタメ作品として非常にクオリティが高いクボだが、さらにその魅力について解説する。
純度の高い日本リスペクト、形式だけではない「和」の物語
前述の通り、日本では馴染み深いおとぎ話を彷彿とさせる物語や「祭り」「紅葉」「折り紙」などの舞台装置によって、「和」を感じさせる本作。
洋画で描かれる「日本」はどこかエキゾチックで怪しさが漂う(それも愛おしいのだが)ものが多いが、本作は非常に現実的な形で日本を描いている。
情景や小道具はもちろんのこと、登場人物の1人「クワガタ」が語る「侍の矜持」や、物語でも重要な役割を持つ「灯籠流し」における死生観の描写などかなり徹底した「日本感」で描かれている。
また、仲間である「サル」「クワガタ」には桃太郎における「敵を倒すお供」以上の物語上の役割があり、本作における敵キャラ、クボの祖父である「月の帝」は、月の民特有の特殊能力を持つ等、竹取物語的なSF要素を設定に組み込んでいる。
このように、馴染み深いおとぎ話を再構築することで物語の深みを増し現代でも通用するエンタメに仕上げている。
こうした日本を舞台にした伝承やおとぎ話を再構築した作品に、クローバースタジオが制作した名作「大神」があるが、大神の世界観が好きな方はきっとクボも気にいると思うので、クボをまだ観ていない大神ファンの方はぜひ観て欲しい。逆にクボは好きだが大神は未プレイという方は今すぐに大神をプレイして欲しい。
圧倒的な「ストップモーション」、ライカスタジオの力の秘密
クボを制作した「ライカスタジオ」の特徴は圧倒的なストップモーションアニメの制作力だ。
本作でもその技術がこれでもかというほど発揮され、度胆を抜く映像が作られている。
尋常ではない緻密なストップモーションは冒頭から体感でき、荒波の中、小舟の上で三味線を構えるクボの母、その繊細な表情と風に煽られなびく髪の毛、三味線を搔き鳴らし波の中に道を作る(!)、映画開始1分弱でこれまでにはない映画体験ができるはずだ。本当にすごい。
歌川国芳の作品を彷彿とさせる「がしゃどくろ」との戦闘シーンもとんでもない迫力で圧倒される。
巨大がしゃどくろをCGではなく実際に人形を用いた撮影を行なっている点もぜひメイキングで確認して欲しい。
本編103分の制作期間は約94週間(114万9015時間)で、1週間で制作される尺の平均は3.31秒だという。
クボだけではなく、他のライカ制作映画でも同様の緻密さがあり、2009年『コララインとボタンの魔女』では主人公コララインの人形だけで28体存在し、用意された表情の数は20万通り以上存在した。
これまで5本の長編アニメーション作品を制作したライカスタジオだが、ここまで高品質な作品を制作しているのにも関わらず、日本国内では少々知名度が少ない。
2009年アメリカ公開の『コララインとボタンの魔女』
日本でも人気の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のヘンリー・セリックが監督したこともあり、翌年2010年に日本国内でも劇場公開され、またプロモーションも充実しており話題を呼んだが、続く『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(12)
はアメリカ、カナダでは興行収入上大ヒットだったが日本では奮わず、続く『ボックストロール』(14)
は日本では劇場公開されずビデオスルーとなっている。
クボについても、2016年にアメリカ公開の際、日本での公開の話がなかった為、多くのライカファンは海外盤を購入し鑑賞していたが、ギャガ様配給により国内劇場上映が決定した。
その際、「#一生のお願いだからクボを観て」といったファンの熱心な呼びかけにより口コミ的に知名度・人気が急上昇し賞賛されたことは記憶に新しい。
クボによって日本国内でも知名度がやや上がったライカスタジオだが、お世話になったことがない人がいないくらい有名なあの企業と密接な関わりがある。
ナイキだ。
最近では『バンブルビー』(2018)の監督も務めた、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』で監督デビューを果たしたライカスタジオCEO「トラヴィス・ナイト」氏はナイキの創業者「フィル・ナイト」氏の息子であり、そもそもライカスタジオ自体の成り立ちとして、前身の「ウィル・ヴィントン・スタジオ」が経営困難になった際に、ナイキ(フィル・ナイト)が買い取り、ヘンリー・セリックをアドバイザーに迎えて社名を「ライカ」に変更したという経緯がある。
常軌を逸したレベルの高品質な作品を制作するにあたって、こだわりと手間暇かけられる制作環境は「フィル・ナイト」「ナイキ」あってのものだろう。
クボに続くライカスタジオ5作目の作品『ミッシング・リンク』はゴールデン・グローブのアニメ映画賞を受賞。第92回アカデミー賞ではアニメーション映画賞ノミネートされている。
日本国内でも2020年秋に公開が予定されている本作の予習も兼ねて、ぜひこの機会に『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を鑑賞してみてはいかがだろうか。
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