【ネタバレあり】北欧のカルト(?)動物映画『ひとりぼっちのセリク』とは?リアルガチのアザラシを育てて愛でまくれ!

動物映画が好きなライターのヤマダマイと申します。私の家には2匹の猫がいるのですが、うち一匹がだんだん肥えて、床に寝そべる姿はまるでアザラシのようです。

でーん。

…そういえば、以前ムービーナーズで書いた「心からほっこりする動物が尊い映画5選」にて、物珍しさから『続・ひとりぼっちのセリク』という北欧のアザラシ映画について書きました。

この作品、すでにレンタルしているお店はもちろん、新品の販売がなくてメルカリで購入したもの。執筆時は第1作を見つけることができなかったのですが、改めて探した結果第1作の入手に成功しました!

(amazonのマケプレにもあるっぽいです。ちなみにこれは2枚ともレンタル落ちの中古)

ノルウェーの別荘に父親と2人で訪れたティーンエイジャーのカトリーナが、母親からはぐれた赤ちゃんアザラシを見つけて手探りで育て、野生に帰すまでを描いたハートウォーミングな動物映画です。

まとめ記事の方では「アザラシがかわいい」だけでなく「低予算感がヤバい」「ストーリーがふわっふわしている」などいろいろ書きましたが、改めて第1作を観ると、続編の特異性が際立ってきました…。

そこで今回は、きっと“カルト・アザラシ映画”として注目を集め、よりDVDの入手が困難になるであろう『セリク』シリーズの見どころを書き記していきます。

『ひとりぼっちのセリク』(原題:Summer with Selik)

©1993 Berge Film & TV Production

テイスクルベン(テイスクルブンだったかも。ググっても出てこない)というド田舎を舞台に、どこまでも人懐っこいゴマフアザラシの「セリク」と少女カトリーナの仲睦まじい様子を描く第1作。一生懸命育てられ、成長していくアザラシの姿は非常に尊い…。

水族館で見るアザラシとは違い、草原を腹ばいで疾走したり(意外と速い)、人の読書の邪魔をしたり、人の家でうんちをしたりと、非常に珍しいアザラシの姿を見ることができます。

©1993 Berge Film & TV Production
↑家でう〇ちしちゃったセリクと、それを掃除するカトリーナ&パパ。この構図、まんま家で猫がゲロ吐いたときと同じで笑いました。ちなみにアザラシのうんこは人間のそれと似ています。

映画というより、Eテレで放送されそうな雰囲気のセミドキュメンタリー。吹き替えや字幕はなく『バトルロワイヤル』に出演した前田亜季による全編ナレーションで進行します。そのためカトリーナたちの会話の内容は一切分かりません。ナレーション越しからカトリーナの心境を読み取っていきます。

これを観ればあなたもアザラシを育てられる?

©1993 Berge Film & TV Production

本作最大の見どころは「何の知識もない一般人がアザラシを育てる」様子が良くわかる点です。例えば…

  • 赤ちゃんアザラシは4時間おきに餌を上げなくてはいけない
  • 生後三週間で固形の物を食べさせる
  • 魚一匹を丸呑みできるように訓練させないといけないetc…

これらは本編でカトリーナが学んだこと。割とマジでアザラシの生態を楽しく知ることができる良作です。子どもにも見てほしい…。ナレーションの言葉使いが易しいのはそういった客層を狙っているからかもしれません。

カトリーナをサポートする超強力な助っ人たち

©1993 Berge Film & TV Production
↑こんな姿ですが獣医(中央)です。クラッチバックとか持たせたい。

無論、動物を育てるとなれば費用や専門知識が必要。ティーンエイジャーの力ではどうにもできないことも多数あります。しかし病気になったときは近所に住む獣医(見た目がチンピラ)が力を貸してくれるし、パパは漁師なのでエサ代は実質タダ。手探りのように見えて、メチャクチャ手厚いサポート体制も魅力…。

©1993 Berge Film & TV Production
↑セリクがエサをとる練習用として、本来は養殖に使う水槽を購入したパパ。なんやかんや、この映画で一番のアザラシ育成ガチ勢。

ちなみに本作は実話がベースですが、セミドキュメンタリーなのでどこまでが本当の映像なのか判断が難しいところ。

たとえばセリクが崖から落ちてケガをする場面では、実際に落ちたシーンはないものの、内臓をケガして鼻血を出し続けるというショッキングな場面は撮影されていました。あれは演出なのかガチなのか…。ほんわかした雰囲気だったのにいきなり流血沙汰は普通に怖い。

こうした突然に作品の雰囲気が変わる展開は、続編でも見られますが…他にも気になる点が多々あるのです。

『続・ひとりぼっちのセリク』(原題:SELIK AND KATRINE)

©1995 Berge Film & TV Production
©1993 Berge Film & TV Production
©1995 Berge Film & TV Production

第1作と全く同じタイトルカット。低予算すぎぃ!

無事に大きくなったセリクを野生に帰したカトリーナ。しかしその翌年もカトリーナたちが別荘を訪れると、セリクも別荘までやってきてしまいます。どうも他のアザラシと馴染めなかったようです。

今回はセリクの存在が他のテイスクルベンの住人にも知られたことで、地味に苦情まで来てしまいます。事態を重く見たカトリーナは、今度こそセリクを沖にいるアザラシの群れに帰そうとしますが…。

©1995 Berge Film & TV Production

続編とはいえ、相変わらずのEテレ感が炸裂。タイトルカットの背景は、まさかの前作と同じという低予算っぷりもたまりません。

本作でカトリーナはアクアリウムのようなもの(本編では”シーカーリウム”と言っている。これもググっても出ない謎ワード)を作るため別荘に訪れるのですが、実際は新キャラ“マッツ兄弟”に海洋生物の収集を頼み込み、カトリーナはほとんどセリクを沖に戻すために全力を尽くしています。

前作と比べると、アザラシ以外の海洋生物にまつわるトリビアも大幅に増しており、今回も前田亜季による全編ナレーションです。

ちなみに前作で登場した獣医は「ヤン」という固有名詞がついて再登場。今回はアザラシより甲殻類に夢中な様子。

続編は前作のアンチテーゼだった!夢や希望を持たせないカルト(っぽい)作風

©1995 Berge Film & TV Production

前作同様、本作でもセリクのキュートさは炸裂。すっかり大きくなったセリクですが、腹ばいで一生懸命カトリーナの別荘に入ってきたり、草原で昼寝をするなど、本編とは全く関係のないサービスショットが盛りだくさん。

1年前は自由に行き来できたのに、大きくなったことで別荘の階段から降りられなってしまう、おっちょこちょいな姿まで…。

しかしその性格があだになったのか、セリクは謎の男たちに誘拐されてしまいます。その直前には銃声まで聞こえるなど、突然シリアスな展開に…。

©1995 Berge Film & TV Production

…にも拘わらず、次の場面ではマッツ兄弟がひたすらカニとじゃれるシーンが始まりました。今絶対そのシーンじゃなくない?

ナレーションではカトリーナがショックのあまり一人になりたい(本作のカトリーナはやたらと一人になりたがる)と説明が入りますが、あまりにも緊張感のない場面とBGMが続く…。「みんなで探しに行かなくちゃ!」みたいな展開も皆無。

極めつけは、翌日になると何事もなかったかのように帰ってくるセリクです。銃声まで聞こえたのにピンピンしています。港では「アザラシがいたずらをしている」的な苦情が来ていると、うっす〜ら説明していましたが…。多分、視聴者の8割くらいはその伏線を忘れているので、何の前触れもなく誘拐され、そして無傷で帰ってきたという展開に見えてしまいました。

そして「どうやって脱出したのか」「密猟者はどうなったのか」「そもそも銃を使って誘拐したのに無傷で逃げられるとか、そいつ本当に密猟者なのか?」といった疑問をすべて置き去りにして「セリク返還計画」は進み続けるのです。

©1995 Berge Film & TV Production
(↑水槽に入ってくださいと言わんばかりの台があるのはご愛敬で…。)

そして視聴者の大半が忘れかけていたカトリーナのアクアリウム作成ですが、ラストでセリクがお約束のように水槽に入ってメチャクチャにします。あちゃー。

こんなセリク見てをカトリーナは怒れないと、ナレーションによるフォローが入りますが、最後に「この件で私はセリクを沖に戻すと決意した」とも言っていたので多分怒ってます。

結局無事セリクは沖へと戻っていきましたが、セリクが荒らしたカトリーナのアクアリウムがどうなったのか、マッツ兄弟のその後などは何もわかりませんでした…。

ただし、前作が「ケガした野生動物を善意で保護する」という尊さを描いた中で、続編は「野生動物は自然の成り行きに任せるべし」とアンチ前作の内容になっています。あんなに頑張ったカトリーナの行為はむしろ自然界の法則を乱しかねない、というメッセージ性を強めるために、あえて前作を否定した構成に脱帽です。

『ひとりぼっちのセリク』に勝るアザラシ映画は登場するのか…。今後のアザラシ映画界に注目が集まるばかりです…!

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