どうも、2匹の猫(キジ白、白黒)の奴隷兼ライターのヤマダです。
これまでいろいろな猫映画を観てきましたが、今回初めてフランス発の猫映画『ルー、パリで生まれた猫』(9/29・金 公開)を試写鑑賞させていただきました。
猫=ペットという概念を覆しながらも、可愛いツボはしっかり押さえ、(猫の)ロマンスあり(猫を飼っている人からすると)ヒヤヒヤするスリルまで盛り込んだ「ミックス盛り弁当」みたいな内容となっています!(例えが下手)
映画『ルー、パリで生まれた猫』概要
パリで暮らす10歳の少女クレムが屋根裏で見つけたのは、生まれたばかりのキジトラの子猫。母猫とはぐれた子猫を、ルーと名付けて一緒に暮らし始める。両親の不仲に心を痛めていたクレムにとって、ルーとの生活は心安らぐ時間となっていく。そんなある日、森の別荘を訪れたクレムとルーだったが、森である出会いが――。(公式サイトより)
クールだけどちょっとドジなキジトラの猫・ルーは個人の家から見出された子猫が演じており、撮影期間に合わせてルーを演じる猫も大きくなっていきます。
もともと監督のギヨーム・メダチェフスキ(『アイロ〜北欧ラップランドの小さなトナカイ』)はキジトラを主役にしたいという思いがあり、農場や動物愛護協会なども探したそうです。
ちなみに監督は本作の撮影で猫アレルギーであることが発覚しました…汗(コロナ禍での撮影だったため、マスクでなんとかなったとインタビューで語っています)
ルーと共に成長する少女・クレムを演じるのは、本作が映画初主演となるキャプシーヌ・サンソン=ファブレス。
脚本家がクレムのイメージに『リトル・ミス・サンシャイン』(06)の少女をあげており、ちょっとませているけど、周囲の環境の変化にすぐ気づく繊細な一面も見事に演じています。800人の候補者から選ばれただけあって、猫との掛け合いもホッコリです。
またキーパーソンである森に暮らす女性(クレムからは「魔女」と呼ばれている)マドレーヌを演じるのは、ジャック・オーディアール監督『君と歩く世界』(12)や『アムール、愛の法廷』(15)などに出演するコリンヌ・マシエロ。
歯に衣着せぬ物言いをはじめ、猫の金タ〇を「カスタネット」と表現するなど、粋な人物を演じています。
動物目線のパートが盛りだくさん
動物映画を見る際、実際に動物を飼っている人が注目するのは「人間都合の演出がされていないか?」ではないでしょうか?
やたら猫が人間の声で喋ったり、心境がナレーションされたり、CGを駆使した映像なら、人間のような表情の変化を見せたり…(猫はぱっと見、何を考えてるのか分からないところが魅力なのに…!)
その点、本作は猫をはじめとしたあらゆる生き物の動物目線を徹底しています。
例えばルーとクレムが初めて出会うシーンでは、クレアはまるで巨大な怪物のような足音を鳴らし、不穏なカメラワークで登場します。
子猫のルーから見れば、少女クレムも巨大で得体のしれない生き物であることが、たったワンシーンのセリフなしでしっかり伝わってきました。
ルーがクレアやその家族と暮らすときも、人間の足音の聞こえ方やモノの見え方まで、しっかり猫基準になっています。
また個人的にグッと来たのが、ルーとクレアが出会うまでの冒頭部分にかなり時間を割いていたことです。
どういった経緯でルーとクレアが出会うのか?出会う前、ルーはどんな暮らしをしていたのかをしっかりと描いています。
筆者と暮らしている2匹の猫も里親募集で引き取ったため、もとは野良猫です。そのため、我が家に来るまでの2匹の暮らしはまったく不明。
そんな空白の期間に思いを馳せるのも猫飼い冥利に尽きるのですが、その部分をしっかり猫目線で映像化した監督には脱帽です!自分の家の猫も拾われるまではどんな暮らしをしていたのか、妄想がはかどります…。
あくまで猫を「ペット」として描かない
本作は猫の可愛らしさだけが売りではありません。あくまでもルーとクレムの関係性はペットというより友情に近いものがありました。
ルーに限らず多くの猫は人にしつけられたりせず、自由気ままで好奇心の赴くままに、いろんなことをします。
最初はクレムが「ベッドの上で寝ないこと!」というルールが設けますが、ルーは一瞬でその掟を破ります笑
一方で、ルーは好奇心が旺盛なあまりちょくちょく外へ脱走してしまいます。ペットを飼っている人であれば、口から心臓が飛び出すくらいショッキングなシーンですが、意外とクレムの両親は「そのうち帰ってくるでしょ」とドライな様子。その辺はパリのお国柄…なんでしょうか?
また、夏にクレムと家族が過ごす別荘でもルーは脱走します。さすが元野良猫…汗
別荘の近所に暮らす女性マドレーヌも「猫が外に出たがっているなら、出してあげた方が良い」と、終生室内飼いが基本の日本ではかなり驚きの意見が出てきます。
しかし、それはルーをペットという枠に縛り付けるのではなく、あくまで一匹の生き物として尊重しての発言。ペットと人の関係性ではなく、異種間の友情を描くことで、ふだん私たちが見ている猫からは見られない行動や関係性が見られました。
猫の「ゴロゴロ」音デカすぎぃ!(歓喜)
最後にこれだけは推しておきたい…。本作は猫のゴロゴロ音がめちゃくちゃ沢山聞けます!!!
まずオープニングで耳にするのがこのゴロゴロ音(寝息)です。猫は甘えたり、リラックスしているときに喉をゴロゴロと鳴らすのですが、この音は人間が聞いても心を落ち着かせる効果があると言われています。
月曜なのに週末みたいに疲れてる人や、疲れているのに目覚まし前に目が覚める人は、本作を見れば元気になれる可能性大です(当社比)
また筆者はオンラインでの試写だったため、イヤホンを付けて鑑賞したのですが、ゴロゴロの音がなかなかデカい!笑
劇場だと音量がどのくらい調節されるか分かりませんが、少なくとも自宅にはない音響設備で猫のゴロゴロ音が聞けるはず。これはこれで立派な音響体験では…?猫のゴロゴロ音を爆音で聴けるチャンスかもしれません。
まとめ
ペットではなく一匹の生き物として、猫を活き活きと描いた『ルー、パリで生まれた猫』は猫好きはもちろん、異種間の友情モノが好きな人にも刺さる内容だと思います。
あとやっぱりゴロゴロ音ですね。あの脳に直接くる音を、ぜひ劇場の音響で堪能してみてほしいです…!
映画『ルー、パリで生まれた猫の』詳細情報
公開日:9/29(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座他全国順次ロードショー
監督:ギヨーム・メダチェフスキ (『アイロ ~北欧ラップランドの小さなトナカイ~』)
出演:キャプシーヌ・サンソン=ファブレス、コリンヌ・マシエロ等
動物トレーナー:ミュリエル・ベック等
動物たち:ルー(キジトラ猫)、カリーヌ (白猫)、フリョ(ナポリタン・マスティフ犬)等
原題:MON CHAT ET MOI, LA GRANDE AVENTURE DE RROÛ/2023/83分/フランス・スイス/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:横井和子/映倫:G
© 2023 MC4–ORANGE STUDIO–JMH & FILO Films
配給:ギャガ
公式サイト:gaga.ne.jp/parisnekorrou
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