衝撃の真実! 『スーパー特急マジンガー7』(1983年)の秘密!

かに三匹

今回は韓国のスーパーロボットアニメ『スーパー特急マジンガー7』を紹介したい。

ところで、皆さんは、衝撃の事実に気づいたことがあるだろうか。私にはある。しかも韓国アニメ作品についてだった。

どういうことか。

韓国アニメについては未だに「韓国アニメはパクリ」の言説が流布している。

近年の作品では、露骨な流用もなく、徐々に「パクリ」の言説は払拭されてきてはいる。とは言え、未だに「韓国アニメと言えばパクリ」という言説を耳にすることも多く、苦々しく思う気持ちがあった。

괴수대전쟁(1972)

しかし今から40年ほど前の韓国アニメでは、日本アニメからの「パクリ」は頻繁に起こっていたのも事実である。具体的にはデザインを流用する事が多かった。デザインの流用は古くはウルトラ怪獣や『黄金バット』のものをトレースした『怪獣大戦争』(1972年)がある。

また既存の日本製の玩具をアニメに登場させることが多かった。『スペースガンダムV』(1983年)、『宇宙黒騎士』(1979年)、『ソーラー123』(1982年)などなど具体例を挙げればきりがない

スペースガンダムVより引用

『スペースガンダムV』は『超時空要塞マクロス』に登場するバルキリーが元ネタだ。『宇宙黒騎士』は登場キャラクターが『機動戦士ガンダム』から、主人公が乗り込む戦闘機は玩具『ミクロマン』のミクロ円盤からの流用であった。『ソーラー123』は『六神合体ゴッドマーズ』と『ロボット8ちゃん』が元ネタで、韓国現地で発売された玩具は元ネタ通り腕と脚に変形するものだったため、現地の子供たちは、何故、腕と脚に変形するのか疑問だったという。

他にも日本のフィルムを無断使用して一本の映画としてでっち上げた『ビデオレンジャー007』(1984年)なんてものもあった。『科学忍者隊ガッチャマン』は韓国でも大人気だったが『鉄人007』(1976年)、『太極少年白いハゲワシ』(1979年)というガッチャマンを勝手にリブートした作品もあった。

UFOに乗ってきた宇宙人の王子より引用

日本ばかりではなくアメリカからも「パクリ」がある。例えば不朽の名作である映画『E.T.』はその餌食になっている。『黄金の鉛筆と宇宙少年』(1983年)、『UFOに乗ってきた宇宙人の王子』(1984年)、この2作はわかりやすい。何故なら両アニメにはE.T.に似た宇宙人少年が登場するのだ。他にも韓国アニメにおける「パクリ」の具体例を挙げていけばきりがない。

このような沢山の事例がある為「韓国アニメはパクリ」だと思っている人が多いし、それを楽しんでいる人も多い。正直私も楽しいと思う気持ちはある。しかし、私は「パクリ」を指摘する以外にも当時の韓国アニメを楽しむ手段はいくらでもあると思っていたし、面白いものは面白いと主張したいと思っていた。

スーパー特急マジンガー7より引用

そんななかで出会った韓国アニメが『スーパー特急マジンガー7』である。この作品も当時多かった「パクリ」ものの一種で、タイトルからわかる通り韓国における『マジンガーZ』人気の高さにあやかってネーミングされたものだ。

『マジンガーZ』は韓国でもテレビ放送されて高い人気を誇っており、韓国で製作されたロボットアニメ『ロボットテコンV』(1976年)はデザイン面などで『マジンガーZ』の影響を受けている。

スーパー特急マジンガー7より引用

マジンガー7やテコンV以外にも『走れマジンガーX』(1978年)、『スーパーマジンガー3』(1982年)、『スターチャンガ2 スーパーベータマン マジンガーV』(1990年)とマジンガーの名前を冠した作品が多くある。

そんなマジンガー的な作品のひとつである『スーパー特急マジンガー7』は顔こそマジンガーっぽいが、身体は『逆転イッパツマン』の後半に登場する三冠王を基にしたデザインで、玩具版の三冠王と同様、戦車にも変形する。
しかも当時韓国で人気だった『銀河鉄道999』の人気にあやかったのかマジンガー7は宇宙列車とも合体するのである(なお同年の『スーパータイタン15』(1983年)でもロボットが分離し宇宙列車に合体するというギミックが登場し如何に『銀河鉄道999』の人気が高かったかが分かるというものである)。

こうした作品だけに、普通なら『スーパー特急マジンガー7』は数あるパクリアニメの一つとして歯牙にもかけられないだろうが、私はこの作品をいたく気に入ってしまった。理由は戦闘シーンの演出に見るべきものがあったからだ。

スーパーマジンガー3より引用

40年前の韓国のロボットアニメの戦闘シーンの多くは退屈である。先に挙げた『スーパーマジンガー3』などを例に挙げると、ただ戦っているシーンが画面に羅列されるだけで変化に乏しいのである(そういう意味では『ロボットテコンV』はストーリーや演出が冴えており人気が高いのも頷ける)。

スーパー特急マジンガー7より引用

しかし、『スーパー特急マジンガー7』の戦闘シーンは光っていた。敵味方の攻防が描かれているのである。例えば中盤に描かれる『勇者ライディーン』の体躯を赤く塗った敵との戦いはロボットアニメとしての手順を踏まえており観ていて面白いと思った。

その為、私は機会がある度に、この『スーパー特急マジンガー7』はデザインこそ流用が多いが、演出は優れた当時の韓国アニメにおけるオーパーツ的な存在だと人に触れて回った。韓国アニメが好きだから故に褒めまくったのである。

スーパー特急マジンガー7より引用

しかし、ある日、そうした気持ちとは裏腹に私は事実に気づいてしまう。それはマジンガー7の身体の元ネタとなった『逆転イッパツマン』を見直していた際の事だった。

第25話『こまった! 大コマ回し』の回で主役ロボットである逆転王と敵のロボットが立ち回りを演じるのだが、見覚えがあった。見覚えがあるどころではない、全く同じものを見たことがある。それが先に紹介したマジンガー7と赤いライディーンの戦闘シーンそのものだった。

戦闘の段取りや展開まで、全く同じであった。違うのはマジンガー7の使う武器がトマホークだったことくらいである。

そう、『スーパー特急マジンガー7』は、ロボットのデザインだけでなく、演出まで含めて日本アニメのコピーをしていたのである(ちなみにこうした例は他の作品でもあり『宇宙海賊キャプテンハーロック』を演出まで、そのままコピーした『宇宙隊長 片目』(1982年)というものもある)。

……それに気づいた時の私の気持ちは非常に複雑なものだった。何か信じていたものに裏切られた気分だった。そして人に「マジンガー7は、戦闘シーンだけは良いんですよ!!」と力説したことが、限りなく愚かに思えてきた。

今では笑い話であるが、気づいた瞬間は韓国アニメの歴史に翻弄されたような気分だった。それでも、韓国アニメが嫌いになれないのは我ながら、あきれたことだと思う。

でも、好きなんだよ!

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