東京国際映画祭2023で上陸!この海外アニメーション映画たちは一体何者だ!?作品一挙解説

ネジムラ89

 今年も2023年10月23日〜11月1日にかけて東京国際映画祭が上映されます。日本の古典名作から、海外のまだ日本未公開だった映画など古今東西の映画たちが集結します。
 そんな中で、アニメーション映画からも多数の作品が出品されます。今回はコンセプトを新たに再スタートをするということで、「ビジョンの交差点」というプログラムにて例年にも増して日本未公開の海外アニメーション映画が多数上映されます。実はどれも今年海外で話題になったばかりの最新作。それぞれがどんな映画でどんな評価を受けているのか。予習・復習にオススメの作品と合わせて紹介します。

『アートカレッジ1994』

 タイトルの通り、1990年代初頭の中国の美術大学を舞台にした長編アニメーション映画。学生たちの芸術への追求と現実の生活など、理想や願望が絡み合う青春時代が描かれます。監督のリウ・ジエン監督といえばブラックユーモアを交えた人間模様を描く監督としてもおなじみ。そんな監督が学生の青春時代をどう描くのかにも注目です。
 本作は受賞こそ果たせていないものの、アヌシー国際アニメーション映画祭やベルリン国際映画祭など各地の映画賞にノミネートを果たしている作品。今回の東京国際映画祭がジャパンプレミアとなっていますが、11月2日から北海道で開催される新千歳空港国際アニメーション映画祭の長編コンペティションにもノミネートされているので、こちらでも上映が実施されます。

予習・復習するならこの一本:『Have a Nice Day』(2017)

 リウ・ジエン監督ってどんな作品を作る人なの?という疑問に最適な回答となる作品が、リウ・ジエン監督の名前が世界に知られるきっかけとなった監督作『Have a Niice Day』です。一人の青年が大金を盗んだことをきっかけに周囲の人々が翻弄され、転々としていくお金の行く末が最後にタイトルの意味へと繋がっていく物騒なブラックコメディです。
 本作も中国の長編アニメーションで初めてベルリン映画祭にノミネートを果たした記念作であり、アニメーションの祭典として知られるアニー賞にも参加しかけたのですが中国政府によってストップがかけられるという曰く付きの映画でもあります。

『ロボット・ドリームズ』

 サラ・ヴァロンさんによって描かれたコミック作品を原作に、映画『ブランカニエベス』でスペインの映画賞ゴア賞の作品賞をはじめ多くの受賞を果たしているパブロ・ベルヘル監督がアニメーション映画に初挑戦した作品。
 マンハッタンに暮らしていたドッグは深い孤独を感じていた末に、友人となるロボットを自作します。共に楽しい時間を過ごして、二人の友情は深まっていくのですが、ビーチへ出かけたことをきっかけに二人の関係に転機が訪れるという物語です。
 本作は2023年のアヌシー国際アニメーション映画祭にて、個性的で観客に課題を生み出してくれる挑戦的な作品を対象とする“コントルシャン部門”にノミネート。見事大賞となるクリスタル賞を受賞しました。
 早くも2024年にはクロックワークスにより配給が発表されているので、映画祭に足を運べないという人も、もうすぐ観られる映画となっています。

予習・復習するならこの一本:『ブランカニエベス』(2012)

 ゴヤ賞で作品賞や脚本賞、美術賞……などなど最多の10部門を制覇の快挙を果たしたパブロ・ベルヘル監督の代表作が『ブランカニエベス』。タイトルにある“ブランカニエベス”とは、“白雪姫”のこと。本作は白雪姫をベースに、人気闘牛士の娘であるカルメンが、数奇な運命を辿っていくというダークファンタジー作品です。白黒の実写映像かつ、サイレント映画でもあり、『ロボット・ドリームズ』とのギャップに衝撃を受けることにもなるでしょう。

『深海レストラン』

 今年は中国からももう一本。今年2023年の1月に中国で上映を果たし、アニメーション映画ではなかなか興収1億元を超えるのも大変な中で、9億元の大ヒットとなった長編映画です。
 父の再婚をきっかけに孤独を感じていた少女・シェンシウが、クルーズの途中で海に落ちてしまうのですが、それをきっかけに少しおかしなシェフが働く水中レストラン“深海”にたどり着くという物語。
 3DCGアニメーション映画ではありながら、アメリカの大手制作会社ともまた違った質感と圧巻の色彩で見せる映像がすでに衝撃的。2023年秋現在、日本公開などの発表がなく、今回の東京国際映画祭でのジャパン・プレミア以降の上映予定があるのかも不明な貴重な一本です。

予習・復習するならこの一本:『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』(2015)

  『深海レストラン』のティエン・シャオポン監督の代表作はなんと言っても2015年の『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』です。孤児の少年・リュウアーが孫悟空の封印を解いたことをきっかけに始まる「西遊記」の物語をベースに描いた3DCGアニメーション映画です。
 中国での上映当時は国産のアニメーション映画では到底信じられない興収9.5億元の大ヒットを果たし、本作をきっかけに中国のアニメーション映画興行がより活発になっていくようになりました。
 ちなみに2018年には日本でも上映を果たしており、日本語吹替版の監修を『ゲド戦記』や『コクリコ坂から』の宮崎吾朗氏が務めていた映画でもあります。

『トニーとシェリーと魔法の光』

 2D、3Dと来て、今作は実際の立体物を動かして撮影するストップモーションアニメーション作品。
 体が輝くという特殊な体質を持っているトニーの近所に、ある日シェリーという風変わりな女の子が引っ越して来たことをきっかけに、二人はアパートに出没するという闇の塊の秘密を知るための冒険に出ます。
 本作は『ロボット・ドリームズ』と同じく、2023年のアヌシー国際アニメーション映画祭のコントルシャン部門にノミネートを果たしており、大賞こそ『ロボット・ドリームズ』に譲りましたが、審査員特別賞の受賞を果たしています。
 監督は本作が長編監督初挑戦となるフィリップ・ポシヴァチュ氏です。

予習・復習するならこの一本:『真夏の夜の夢』(1959)

  フィリップ・ポシヴァチュ監督が幼い頃にこの監督の作品を観て育ったとして名前をあげているのが、チェコの名アニメーション監督イジー・トルンカ氏です。人形作家でもあり、チェコの人形アニメ界の礎を作ったと言っても過言ではない人物で、フィリップ監督だけでなくのちのストップモーションアニメーション作家の多くが影響を受けたと明言するほどの人物です。
 そんなイジー・トルンカ作品でも特に美しく煌びやかな作品として挙げるなら、この一本というのが、長編『真夏の夜の夢』です。シェイクスピアの戯曲をベースに描いた人形アニメーションです。チェコの人形アニメーションのかつてと今を本作の上映をきっかけに体験してみてはいかがでしょうか。

『リンダはチキンがたべたい!』

 以前、ムービーナーズでも紹介した( https://m-nerds.com/annecy2023 )『Chicken for Linda !』がついに日本上陸!
 どうしてもチキンが食べたい少女のリンダのために母のポレットは大好物の鶏肉料理を作ってあげようとするのですが、ちょうど町中でストライキが起きているせいで容易には行かず、奮闘するというストーリーの作品です。
 本作は2023年のアヌシー国際アニメーション映画祭の最高賞にあたるクリスタル賞を受賞している最注目の作品であり、東京国際映画祭だけでなく本作も新千歳国際空港国際アニメーション映画祭での上映や、2024年の日本配給が発表されています。

予習・復習するならこの一本:『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』(2016)

 監督のセバスチャン・ローデンバック監督が手がけた長編アニメーション映画が2018年に日本でも公開を果たした『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』です。
 本作はグリム童話でも初版から収録されているという両手を切り落とされてしまう少女の物語を描いた民話「手なしむすめ」をアニメーション映画化したもの。衝撃的な設定でありながらも、筆でサッと描いたようなびっくりするほどの簡素なタッチのビジュアルだからこそ過激な描写も緩和され、一気に物語の面白さに引き込んでくれます。本作から『リンダはチキンがたべたい!』でこの手法をどうパワーアップさせたのかにも注目です。

『スルタナの夢』

 アニメーション部門だけで油断するなかれ。実はワールド・フォーカスのプログラムにも、長編アニメーション映画が出品されています。それが『スルタナの夢』。
 1905年にインドのベンガルで書かれたという同名のフェミニスト短編小説をモチーフに、女性たちのユートピアを探して、主人公がインドを旅する様子を描いた作品です。
 監督を務めるのはこれまで短編アニメーション界で数多くの作品を監督、プロデュースしてきたイサベル・エルゲラ氏。今回の『スルタナの夢』が彼女にとっても最初の長編映画にあたります。

予習・復習するならこの一本:『La gallina cega』(2005)

  イサベル・エルゲラ氏は Vimeoにて自身の過去作品を多数公開しているので、どんな作品を手がけてきたのかは気軽に知ることができます。
 そんな無料で公開されている作品の中で、アヌシー国際アニメーション映画祭やゴヤ賞などに出品されたこともあるのが『La gallina cega』。盲目の男性が、盲導犬を失ってしまったことをきっかけに窮地に陥ってしまうのですが、そこから思わぬ方法で空間を導きだす短編です。空間の捉え方がアニメーションならではで、短い作品でありながら見応えがあります。

 どうしても話題作や最新作の日本のアニメーション映画に目がいってしまうのですが、実は海外のアニメーション映画たちも海外ではまさに今が“旬”の注目作ばかりとなっています。今、海の向こうではどんな長編アニメーションが活躍しているのか。今年の東京国際映画祭では、その答えを体験できそうです。

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