『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は鬼太郎をどう描く!?近年の鬼太郎アニメ入門

ネジムラ89

  久しぶりに鬼太郎の新作アニメが公開となります。2023年11月17日(金)より映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の公開がはじまります。ただしこの映画、従来の『ゲゲゲの鬼太郎』の劇場版シリーズとは、かなりコンセプトの異なる特殊な映画となっています。

初公開の鬼太郎誕生“前”が解禁『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

 『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』というタイトルにもあるように、今回の映画は鬼太郎が誕生するに至るまでが描かれるという内容です。これまでも数々の“鬼太郎映画”が作られてきたわけですが、そのどれもがその当時に放送されていたTVアニメシリーズに準じた、鬼太郎の活躍を描いたものだったわけですが、すでに直近のアニメシリーズは2020年に放送を終了していたり、鬼太郎の背景について描いていく点などは従来とは大きく異なる映画となっています

 そんな特殊な試みとなっているのも、本作が原作者である水木しげる先生の生誕100周年を記念した作品であるからこそ。従来は視聴者の子供に向けて制作されてきたわけですが、“簡潔な殺傷・出血の描写”が含まれるということで、12歳未満の年少者には親や保護者の助言・指導の上での鑑賞が推奨されるPG12区分に指定されてます。

以前も誕生エピソードがアニメ化していた?『墓場鬼太郎』の件

 ただ単純に鬼太郎の誕生エピソードと聞くと「すでにアニメ化していたのでは?」と思う人もいるはず。実際にその通りで鬼太郎のアニメ化シリーズでも異質でありながらも、正統派とも言える『墓場鬼太郎』というシリーズが2008年に放送されています。この『墓場鬼太郎』では少年誌に掲載される以前の貸本時代に描かれたシリーズを原作としてアニメ化したシリーズであり、物語はまさに鬼太郎がいかにして誕生したのか、というところから始まります

 そうなると、今回の『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』はこの誕生エピソードを再度アニメ化したものなのかと想像するわけですが、実はそうでもないのが今回の映画の肝。『墓場鬼太郎』では鬼太郎が生まれるまでの直前を描いていましたが、今作ではさらにその鬼太郎が生まれる以前を掘り下げて描く試みとなっています。

 これは初めての試みでもあり、その証拠に原作では鬼太郎の父親については晩年の全身を包帯巻きにされた痛々しい姿しか描かれていなかったのですが、今回の映画ではどこか鬼太郎の面影を漂わせる“目玉”だけになる前の鬼太郎の父の姿が登場します。今作では行方不明となった妻を探すために、人間のような姿(幽霊族の末裔なので人間ではないのでしょうが)の鬼太郎の父の物語が展開していくわけです。

先行登場?目玉おやじのかつての姿はTVアニメ第6期ぶりの登場

 ただ、今回登場する鬼太郎の父親の姿にも元ネタにあたる作品があります。それが2018年〜2020年に放送されたTVアニメシリーズ第6期『ゲゲゲの鬼太郎』です。

 本作の第14話「まくら返しと幻の夢」という回にて、鬼太郎を救うために妖怪・まくら返しの力を借りる形で目玉おやじが本来の姿へと戻る展開が登場しているのですが、その姿が銀髪に鬼太郎のように片目を隠した髪型をしており、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』に登場する鬼太郎の父はこのデザインを踏襲したものとなっています。

 そもそも今回の『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は基本的にTVアニメシリーズ第6期に準じたデザインやキャストを揃えているのも特徴です。

 これまでのシリーズよりも頭身が一気に上がったことで話題となった猫娘らも登場し、鬼太郎役の沢城みゆきさん、猫娘の庄司宇芽香さん、目玉おやじの野沢雅子さんらキャストも続投することが発表されています。ねずみ男役を演じていた古川登志夫さんも「ある謎の少年」役で登場しているわけですが、この少年が明らかにねずみ男を思わせる容姿をしているのも気になるところです。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の制作布陣は?

 『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の制作を担当するのはもちろんこれまでも鬼太郎のアニメシリーズをずっと担当し続けてきた東映アニメーションが担当します。
 監督にはTVアニメシリーズ第5期の劇場版にあたる『劇場版ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!』の古賀豪さんが再び鬼太郎映画の監督に登板となります。

https://twitter.com/kitaroanime50th/status/1705389014168354941

 予習作品として『劇場版ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!』を見ておくと、より今回の映画との対比が際立って面白いかもしれません。
 第5期の鬼太郎は高山みなみさんが声優を務め、妖怪横丁に暮らす鬼太郎たちのよりポップなテイストが特徴のシリーズでした。無愛想だったり、エピソードによって必ずしも人間の味方というわけではないにしろ、今作ではいわゆるヒーロー然とした鬼太郎の活躍が描かれる“これまでのオーソドックスな鬼太郎映画”となっています。
 当時は都道府県別に代表の精鋭妖怪・妖怪四十七士が居るという設定が展開されていたこともあり、“地方タイアップ”で日本全国を6地域に分けてそのご当地ネタを盛り込んだ6つのローカルパートを用意するという珍しいバージョン性を設けていたのも特徴。猫娘が日本全国47都道府県を代表するアイテムや場所を訪問するというノリなど、厳密には『劇場版ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!』が唯一の第5期の劇場版であり、シリーズの総括的な側面から本作特有の仕掛けが用意されていることを思うと“オーソドックス”という表現にはやや語弊があるのですが、今回の映画は明らかにテイストやテンションが違うもの。監督の作風の幅を知れる体験にもなりそうです。

 その他、脚本には『マクロスF』の吉野弘幸さん、キャラクターデザインには『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で副監督を務めた谷田部透湖さん、といったそれぞれTVアニメ第6期に参加していたメンバーが再集結。しっかりリッチな作品が期待できそうです。

 これまでのアニメシリーズとも近い要素を持ちながら、ある意味それらとは“切り離された”『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』はファンにとってもかなり特異な存在として映っていることでしょう。果たして、今回の鬼太郎はどんな“未知の体験”を味わわせてくれるのか。大いに期待できそうです。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』11月17日全国公開!
上映劇場情報:https://toei-screeninginfo.azurewebsites.net/theaterlist/02903

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