韓国発魔法少女ものアニメである『フラワーリングハート』(2016年)を紹介する。
韓国でも多くの魔法少女アニメが存在し、この作品は中でも一定レベルのクオリティーを持った作品だ。
ストーリーは困っている人を放っておけない主人公3人の小学五年生の少女達(ジン・アリ、ウ・スハ、ソヌ・ミン)が、放課後活動の悩み相談部として様々な相談を受け、魔法の力で様々なプロフェッショナルに変身して活躍し解決していくというものだ。どの子も好印象。
3人はフラワーリング王国の第一王子であるチェス王子(本当はイケメンだが普段は呪いにより太ったハムスター、トゥンイに姿を変えられアリと暮らしている)とともに希望エナジーを集める。
アリとチェスの掛け合いが愉快である一方、スハのチェスへの想いも描かれる。これに対しフラワーリング王国の王妃の命を受け、絶望エナジーを集める第二王子のトランプ王子(こっちもイケメン)と、トランプ王子の婚約者であるシュエル(美少女)が暗躍する。
全2シーズン、52話あるが、1話は正味11分の放送時間であり、現地では週に2回放送され(月曜日と火曜日)、2話で一つのエピソードを構成していた。
この作品の魅力は沢山ある。まずはキャラクターの魅力である。3人の主人公は等身大の小学生として描写されているが、困った人を親身に助ける姿には感動するし、トランプに憧れるが正体を知り苦悩するアリなど、悩んだり両王子にあこがれる姿には親しみを覚えるだろう。私も彼女たちにオッパ(韓国語でお兄ちゃんといった意味)と呼ばれてみたい。
2Dアニメで描かれるキャラクターは日本人が観ても親しみやすい。キャラクターデザインは複数のスタッフが担当し、癖のないバランスが取れた造形。実力あるスタジオが担当して作画レベルも安定しており崩れることも少ないのも高評価。またキャラクターの内面の葛藤も魅力だ。
絶望エナジーを集めるシュエルの内面の変化を追っていく事で、彼女が抱えている葛藤が追体験出来る。
最初は悩める人物を追い込んでいたシュエル(没落貴族の出身)だが、主人公3人との関わりを通して自分を取り戻していく。シーズン1の終盤ではアリを絶望させようとアリの飼い犬のハッピーを利用する苦悩が描かれている。ここでシュエルを好きになる人も多そうだ。
声優の演技も魅力がある。キャラクターの年齢に近い子役がキャスティングされており、自然な演技を耳にすることが出来る。とはいえ現地では子役が起用されたことに対しては評価は分かれているようだ(実際に一部キャスティングが後に演技力不足で変更された)。
職業ものとしての魅力もある。魔法少女ものでは様々な憧れの職業に変身することは定番だが、このアニメでも様々な職業に変身する。教師やヘルストレーナー、フィギュアスケート選手、スチュワーデス、婦人警官、海上救助隊、ベビーシッター、電気技術者、トリマー、獣医、など。子供たちは世の中には様々な職業がある事を学ぶ。そして変身した3人の活躍も楽しい。
例えば第42~43話では宇宙飛行士になって宇宙で活躍するスケールの大きさ。そこにアリとトランプの人間関係も加わり盛り上がる。なお第3~4話は悩めるアイドル、ライラを救う展開だが、主役の3人がアイドルに変身する場面だけが切り取られて日本のネットで拡散されたため、『フラワーリングハート』はアイドルアニメだという誤解が少し広まったことがあった(ネットの噂を鵜呑みにしてはいけない)。
オープニングとエンディングも良い曲。作詞は総監督のイ・ウジン、作曲はドン・ミンホ(人気韓国アニメ『ミニフォース』の音響監督も務める)が行っている。歌唱のアン・イェスルは韓国の人気オーディション番組『スーパースターK4』出身の歌手である。
特に大人になる未来への期待と不安を歌ったオープニングは名曲である。作品にぴったりだ。
この作品は現地での評価も高く幅広い年齢層から支持を受け、2016年の韓国政府文化体育観光部長官表彰でキャラクター部門優秀賞を受賞。2017年にはシーズン2も放送されシュエルも仲間に。
人気のためか安全キャンペーン用のアニメにキャラクターが登場している(コンセントの正しい使い方や、交通安全を呼びかける内容)。
製作はペンギンのポロロを主人公にした人気韓国アニメ作品『ポンポン ポロロ』などで知られるIconix Entertainmentだ(ポロロは北朝鮮との合作である事も知られている)。Iconix Entertainmentが手がけるアニメ作品は先に挙げたポロロなど3DCGアニメが多いが『フラワーリングハート』は9年ぶりの2Dアニメであった。
実制作は日本の制作スタジオである株式会社ブリッジや、日本でも様々な作品の制作協力などで知られる韓国のDRムービーといった実力あるスタジオが担当している。
公式コミカライズ作品もある。そして日本語版も存在するという(可能なら観たい!)。また英語版も存在し、主題歌も英語バージョンがあり韓国語の本家に比べてもキュートな歌声だ。総監督はイ・ウジンと韓国人だが、監督は日本人で石平信司が担当している(エンディングを見ると日本人スタッフが多いことがうかがえる)。
石平信司はオープニングやエンディングの絵コンテも担当しているという。シーズン3の放送も待たれる作品だ(実際は現地でイ・ウジン総監督が退任したためシーズン3は絶望視されているようだ)。シーズン2のラストが今後の波乱を予感させる終わり方をしているだけに続きが観たい。
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