「ハグリッドがいないと入れないのかな?」
ムービーナーズ読者の皆さん、ステューピファイ!始条 明(しじょう・あきら)です。タイトルだけは誰でも知ってる超絶大傑作を改めて観てみよう、という本連載『再見再考!ウルトラスーパーマスターピース』第七回は……クリス・コロンバス監督、ダニエル・ラドクリフ主演『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001)!
〜あらすじ〜
11歳の誕生日を迎えたハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ)のもとに、ホグワーツ魔法魔術学校からの入学許可証が届けられる。不思議な魔法の世界へと足を踏み入れたハリーは、ロン(ルパート・グリント)やハーマイオニー(エマ・ワトソン)ら友人たちとの交流を深めながら、両親が闇の帝王ヴォルデモート卿によって殺されたこと、そして自分がいずれ彼と戦う運命にあることを知る……
マグルの皆さま、あるいは魔法族であることを隠しながら一般社会に溶け込む魔女魔法使いの皆さま、今回は『ハリー・ポッター』であります。やれ嬉しや!
小説から始まり、映画化、ゲーム化、舞台化、果てはスピンオフ小説の映画化……と、広がりに広がったウィザーディング・ワールド……を、世界的に一躍有名にしたのがこの『賢者の石』映画版。
本作は『グレムリン』や『グーニーズ』、『ホーム・アローン』を手がけたクリス・コロンバス監督による子供視点の冒険映画としても不動の名作で……上映当時に子供だった皆さまも、そうでない皆さまも……その子供心に、ガンガンに突き刺さったことでしょう。実はまだ観てない人の心にも、きっと刺さります。
本作の魅力は、まずなんと言っても”ホグワーツ魔法魔術学校”をはじめとした、イギリス魔法界の作り込まれた美術、そしてそれを裏打ちする膨大な設定。現代のドローレス・アンブリッジことJ・K・ローリング先生の手による原作小説から大いにイマジネーションを膨らませた魅力的な世界観は、それ自体が『ハリー・ポッター』を象徴するコンテンツとして成立するほど。この日本でも、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンや、23年6月にできた”ワーナー ブラザース スタジオツアー東京”……は、ワタクシまだ行けてないんですけど……でも、忠実に再現された魔法世界を体験することができます。
『ハリー・ポッター』シリーズには、やっぱり思い入れが強くて……というか、もはやそのことばっかり考えすぎて、本当にホグワーツに通っていた記憶すらありますからね。誰でも一度は、廊下にロッカーが並んでるアメリカのハイスクールとかに通ってる別の宇宙の自分を想像するかと思いますが……まあ、そういう宇宙もあるんですが……僕の場合は、やっぱりレイブンクロー寮のホグワーツ生です。
なんだろうなー。例えばMCUとかスター・ウォーズとかの世界的映画シリーズって、「キャラクターの名前だけは知ってる」とか「ビジュアルは見たことある」とか、そういう反応はよく聞くんですが、こと『ハリー・ポッター』に至っては、メチャメチャ詳しい人が全然ゴロゴロいるんですよね。日本では特に人気が高いとも聞きますけど、コレってたぶん……“小学校の図書室”の存在がデカいんじゃあないかな!?っていうのを、昔から思っていて。学び舎で合法的に摂取できるエンターテインメント、の地位ってやっぱカタいですよ。休み時間に外なんか出ずに図書室にこもってたみんな、あるいは本屋さんでハリポタの並んでる棚を見て”ベストセラー”って言葉を初めて知ったみんな、見てるか?立派なオタクになったかな?なんなら初めて読んだ英語の小説がコレの原書だったりする?ワシもじゃよ。でも日本語訳版もアレはアレで好きだから、あの限定発売の木箱に全巻入れとるよ。
ごめんメチャメチャ原作の話になっちった。まあでも実際、この作品って映画としても面白いんだけど……原作小説、という概念、そのものへの導入、としても結構優れていると思っていて。「もっと知りたい!」と強く思える緻密な世界観や魅力的なキャラクターたちもそうだし……映画のすばらしさにフォーカスし直すと、おはなし(脚本)もかなり大胆に再構成されてるんですよね。『賢者の石』の序盤だけでも、ダイアゴン横丁で買い物をする場面がほぼオリバンダーさんの杖屋だけだったり、ダーズリー家が手紙から逃げ回る場面でいきなり絶海の孤島に引っ越してたり(スゴすぎ)。後のシリーズで言っても……ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズの正体が、結局映画だと説明されなかったり、とかとか。それでいて本作、実は意外と長い152分なんですけど。
『ハリー・ポッター』シリーズとしてはざっくり後半、4作目『炎のゴブレット』あたりから超ハードコアな展開になってくるんですが、第1作である『賢者の石』でもけっこーコワい。事件の裏で暗躍するヴォルデモート卿まわりの描写もトラウマもんの恐ろしさ……個人的には、ポッター家の鍵を開けて侵入してくる描写が怖すぎ!!しばらく家の鍵が勝手に回らないか怖かった……なんですが、それ以外にも、よくわからなくて暗い場所がなんとなくコエ〜、とか、別に悪い人ではないんだけどガンガン詰めてくる大人ってコエ〜、とか。子供視点でのワクワクと同じくらい、子供視点での”怖さ”の描写が的確なんですよね。それこそ『ホーム・アローン』とかにも通じる部分なのかも。
あとはやっぱり、伝説の作曲家ジョン・ウィリアムズによる有名すぎる旋律『ヘドウィグのテーマ』も外せないでしょう。イントロの神秘的なオルゴールみてーな音は”チェレスタ”という楽器の音色で、『くるみ割り人形』とか『夢のチョコレート工場』(ジョニー・デップじゃない方!)とかでも使われてるんですけど……正直……チェレスタの音、ちょっとでも聴くと「うわハリポタっぽ〜い!」って……どうしても思っちゃう!これはもう、魔法族のDNAに刻まれちゃってるから。どうしようもないんです。うん。
かわいらしくも才気に溢れた子役たちをはじめとした俳優陣も、もちろんすばらしいキャスティング……なんですけども、ここであえて強調しておきたいのが日本語吹替版。
公開当時、日本の映画館が大型シネコンへと移り変わっていったタイミングでもあり……ファミリー層への宣伝施策として、それまで主にテレビ放映やソフト販売用に製作されていた吹き替え版を劇場で公開する、という方針が取られたのがこの『賢者の石』。原作が超ベストセラーな児童小説ということもあり、それまではディズニーなどのアニメ作品などでしか行われていなかった(『スター・ウォーズ』とかは、リバイバル上映として日本語版が製作)吹替版の全国公開が行われ……これがまた、声優陣の熱演が子供だけでなく大人にもウケ、大当たりの大ヒット。2014年に『アナと雪の女王』が現れるまで、日本における興行収入3位の座をキープしていました。その後から『君の名は。』と煉獄さんが無限列車でブチ抜いてくるのは、また別のおはなし。
こうして”日本語吹替版”の歴史のターニングポイントとなった本シリーズですが、特に1作目である『賢者の石』の吹替版は子供向けの趣も強く、「プリベット通り」「爬虫類館」「動物園育ち」……といった、看板や手紙の文字もしっかり読み上げてくれる親切仕様。
いまや押しも押されもせぬ超人気声優となったハリー役の小野賢章さんをはじめ、マクゴナガル先生役の国民的おばあちゃん声優・谷育子さんは、前回の記事で紹介した『スパイダーマン』でもメイおばさん役を演じています。謎めいた魅力でシリーズ屈指の人気を誇るセブルス・スネイプを見事に演じきったのは、土師孝也さん。翻訳では「我輩」というすんげえ一人称のスネイプ先生ですが、土師さんほど「我輩」が似合う声もなかなかないでしょう……他にも、後に『ファンタスティック・ビースト』シリーズで主演を務める宮野真守さんが優等生のパーシー・ウィーズリー兄貴の声を担当していたり……いろいろありますが、字幕派のみなさんもゼヒ一度、吹替版でも観てみていただきたいところ。
じゃあ僕、このへんで『魔法の覚醒』のデイリーミッション消化に戻らしてもらいますんで……ほな!(姿くらまし)
最近ゲームも発売して、続編の舞台である『ハリー・ポッターと呪いの子』も日本で上演中。これは単なる懐かしさによる熱ではなく、1作目から20年以上経ってるのにある一定の人気が保たれての今がある感じがする。『ファンタスティック・ビースト』[…]
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