『バーバラと心の巨人』ウサ耳少女が巨人を殺す!!…だけじゃない。プロモーションから見る本作の特徴について

『バーバラと心の巨人』(原題:I Kill Giants)

あらすじ

ちょっと風変わりな眼鏡女子バーバラは、秘められし“孤高の巨人ハンター”だ。毎日森から海岸線にいたるまで結界を張り巡らせ、“巨人”から町を守ることに腐心している。学校では変人扱いされ、家族も耳を貸してくれないが、それでも大切な人を守るため、孤高の闘いに身を投じている。だが彼女のあまりに強いその想いは、バーバラを心配する数少ない理解者をも傷つけてしまう。果たしてバーバラは巨人から大切な人を守れるのか、そして孤独な闘いの行方は―。

2018年公開の本作、アメリカでの公開から日本での公開までやや間隔が空いたが、その間、公開前にも関わらず、海外と日本のプロモーションの差異が大きな話題となった。

©I KILL GIANTS FILMS LIMITED 2017

メインビジュアルや予告映像において、「巨人との闘い」をフィーチャーし、壮大なダークファンタジー色を強調している海外に対し、日本国内での予告映像は、ポップなBGMに乗せてハートフルな物語が展開されるようなイメージを押し出している。

©I KILL GIANTS FILMS LIMITED 2017

ポスターとして使用されたビジュアルからも、海外のものとは大きく異なる印象を与えられる。
そもそも原題は、原作と同じ『I KILL GIANT』であるのに対し邦題は『バーバラと心の巨人』というものになっており印象が大きく異なる。

2018年当時、SNS上では日本でのプロモーションに否定的な声が目立ったが、本作は上記のような異なるプロモーションが成立しうる二面性を持った作品だと考える。

2008年にアメリカのIMAGEより発行された、脚本ジョー・ケリー、作画ケン・ニイムラによるグラフィック・ノベル「I KILL GIANTS」が原作となっている本作。

原作本は2012年に国内でも翻訳出版されており、国際漫画賞にて最優秀賞を受賞しているため、国内でもアメコミファンの間ではメジャーな作品だった。
映画の脚本も原作者のジョー・ケリーが手掛けており、概ね原作と同様の流れで物語が展開する。

©I KILL GIANTS FILMS LIMITED 2017

本作における重要な要素「巨人」。
自分の世界に閉じこもり、他者との関わりを避け巨人殺しに没頭するバーバラにとっての「巨人」の正体に迫る過程が物語の軸になるが、海外版ポスターや予告で強調されている「巨人との対峙」と日本版ポスター・予告で描かれる「思春期の少女の苦悩と再生」が本質的に同様のことを描いていると、鑑賞後には納得できる内容となっている。

ファンタジー全開で少女がハンマーで巨人を殺す映画はそれはそれで面白そうだが、本作の内容を考えると日本で用いられたプロモーション手法が必ずしも間違いという訳ではなく、観る側のスタンスによって印象が変わるような特徴をもつ作品だと思う。

また、バーバラを演じたのは『死霊館 エンフィールド事件』で悪霊にとり憑かれる少女を演じたマディソン・ウルフ。奇行に走る様子や、言葉巧みに大人や不良に相対する強烈なバーバラのキャラクターを見事に演じたマディソンの演技は必見。

©I KILL GIANTS FILMS LIMITED 2017

アメリカでも日本でも小規模な劇場公開となり、あまり大きな話題になることのなかった作品だが、先日NETFLIXでの配信も開始したため(2020年11月19日現在)、「ポスター騒動」でなんとなく気になっていた方はこの機会にぜひ鑑賞してみてはいかがだろうか。

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