【再見再考】スパイダーマン【ウルトラスーパーマスターピース】

始条明

正義の味方さ 強いクモ〜♪

ムービーナーズ読者の皆さん、シャザーム!始条 明(しじょう・あきら)です。
タイトルだけは誰でも知ってる超絶大傑作を改めて観てみよう、という本連載『再見再考!ウルトラスーパーマスターピース』第六回は……サム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演『スパイダーマン』(2002)!

成績は優秀だが冴えない青年ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)は、隣家に住む幼馴染のメリー・ジェーン・ワトソン(キルスティン・ダンスト)に想いを寄せながら、平凡な日常を過ごしていた。ある日、見学で訪れた先進研究所のスーパースパイダーに噛まれたピーターは、自分がクモの超能力を身につけたことを知る……

スパイダーマンですよ、スパイダーマン。やっぱりスパイダーマンなんですよ!!!(大声)

失礼しました。冒頭にも書いた通り、タイトルだけは誰でも知っている超絶大傑作を改めて観てみよう、というのがこの連載のコンセプト。そりゃあモチロン『スパイダーマン』も対象範囲内だろうということで、今回語っていこうと思うんですけども。

サム・ライミ版の『スパイダーマン』が……(いまやわざわざ“ライミ版”ってつけないとややこしくなるくらい増えまして、大変うれしいですね)……日本で公開されたのは、2002年。90年代末期から続く大型映画館の乱立も相まって大ヒットとなり、2004年初頭にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンにアトラクションがオープン、同年夏に続編の『スパイダーマン2』が公開……などなど、色々ありました。

いま(2023年6月)ちょうどアニメ映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が公開中だったり、みんな大好きMCUにもトム・ホランド演じるスパイダーマンが登場したり……と これまた色々ありますが、特に日本において”スパイダーマン”という存在を一躍メジャーにしたのは、このライミ版『スパイダーマン』から続いた一連のムーブメントなんじゃあないでしょうか。世代にもよると思うけど。

まずなんたって、オープニングが良い!!!ヒーロー映画の曲といえばこの人、ダニー・エルフマンの作曲によるメインテーマをバックに、キャスト・スタッフ陣の名前がクモの巣に引っかかるんですけども。この旋律がなんとも……危機に立ち向かう緊迫感がありつつ、ヒーローらしい壮大さがありつつ……なんかもう、壁を這い回ってビルの間を飛び回るやつのテーマっぽすぎるというか。なんじゃそりゃ。でも正直、この後に作られたスパイダーマン関連のゲーム作品とかのテーマソングも全部ダニー・エルフマンっぽさが抜けてないので(ゴメン)、それだけこのテーマの完成度が高すぎるんだと思います。

スパイダーマンといえば、長い歴史と多数のキャラクターを擁するマーベル・コミックスの世界でもかなり特別な中心人物、マーベルそのもののアイコンに近い存在と言っても過言ではないキャラクターで。マーベル・スタジオとしては当時すでに『ブレイド』や『X-メン』が公開されていましたが、本作は特にザ・ヒーロー映画としてわかりやすい構図になってるんですよね。

まずスパイダーマンのデザインからして、顔の出てないフルマスクに鮮やかな赤と青のカラーリング、そしてデカい目……吊り目ではあるけど、悪役でなくヒロイックさを感じられるバランス……に対して、敵となる凶漢グリーン・ゴブリンのデザインは、コミックからかなり大胆にアレンジ。ほぼ緑一色の痩身なメカスーツに、宇宙人じみた長い頭と耳の仮面にはギョロッとした黄色い目。まさしく“怪人”然とした風貌になっています。

あと身もフタもないことを言うと、子供が飽きずに楽しめる特撮映画として見た時に、この作品って戦闘シーンがけっこう多いし長いんですよね。わかりやすくシチュエーションを色々変えつつ(しかもちゃんと明るい!)、バシバシ格闘するシーンをしっかり入れたりとか。日本の世代的にも、ちょうど平成仮面ライダーシリーズが始まって、等身大のイケメン特撮ヒーロードラマが盛り上がりを見せていた時期だったことも……無視できない影響力があったんじゃあないでしょうか。

で そんな変身前のイケメンといえば……トビー・マグワイアが演じたピーター・パーカー!キレイな青い目と容赦のない叫び声のギャップがチャームポイントです。
日本語吹き替えは猪野学さん……そういえば、映画館でファミリー層をターゲットにした日本語吹替版が頻繁に上映されるようになったのは、本作の前年の大ヒット映画『ハリー・ポッターと賢者の石』からだったりするんですが、それは一旦置いといて……この猪野さんの声がまたカッコ良い〜〜んですよね。当時出てたアニメ版、ゲーム版、あとUSJのアトラクションとかも全部この人が担当されていて。私個人としては“スパイダーマンの声!”っていうと、いまだにこの猪野学ボイスのイメージです。完全に。コミック読んでてもそのまま脳内で再生されちゃうくらい。

彼と相対するヴィラン、グリーン・ゴブリンことノーマン・オズボーン役は、演技派の名優ウィレム・デフォー。顔が……怖い!!!!

ゴブリンのマスク着ける前の方が怖くね?でおなじみのウィレム・デフォー。厳格な父親であり社長のノーマンと、彼の内から現れる凶悪なゴブリンの二重人格を見事に演じ分けています。声の演技もスゴすぎ。

ちなみに私は映画の序盤、茫然自失のノーマンが息子ハリーに助け起こされながら昨夜の事件を回想するシーンで毎回クソビビります。この映画、ホラー出身のサム・ライミ監督らしい若干古めの演出がちょくちょくあって微笑ましいんですよね。「中古車を買ったらMJも振り向いてくれるかなあ〜!」な場面の信じられないくらいダサい演出とかは必見です。

さて、いま観ると……いま観ても、まあ全然チョー面白いヒーロードラマなんですけども。さすがに気になっちゃうのが、ピーターの通う高校の人種比率でしょうか……この学校、マジで白人しかいねえ!!!

このへんはまあ時代というか、いまのところ最新の実写シリーズであるMCUの『スパイダーマン:ホームカミング』では多様な人種のキャラクターが登場していて……アレも別に、ニューヨーク近郊の公立高校の人種比率を普通に描こうとするとあんな感じになるってだけなんですが……そのリアルさを描けるようになるまでには、本作からもうちょっと待たなきゃいけませんでした。

あとはまあ、いまや押しも押されぬ名俳優オクタヴィア・スペンサーがワンカットだけ出演してるとか、続編への布石っぽくエリザベス・バンクス演じるベティ・ブラント(デイリー・ビューグルの受付嬢、コミックではピーターの初恋人)との出会いがなんとな〜く意味ありげに映されるけど……その後 別に何もなかったりとか、コミックからそのまま飛び出してきたかのようなJ・K・シモンズ演じるジェイムソン編集長とか……1960年代から続くコミックそのままのビジュアルすぎて、高校生の叔母にしてはいくらなんでもおばあちゃんすぎるメイおばさんとか、みどころはまだまだ無限にあるんですが……

公開から20年以上が経過しつつも、当時最先端のVFX職人技によってスパイダーマンらしいウェブスイング・ヒーローアクション表現を完成させた色褪せない名作。改めて観てみては……どうでしょうか!?(強制終了)

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