Virtual Interactive Musicとは何か by Young yAA(ミソシタ)

CD/レコード、Youtube、SoundCloud等の音楽ファイル共有サービスで再生不可能な「音楽作品」所謂音楽シーンの外側で起きているムーブメントVirtual Interactive Music(バーチャルインタラクティブミュージック)を自身もVIMクリエイターであるYoung yAAが解説していきます。

Young yAA
バーチャルワールドクリエイター/misoshita
バーチャルワールドでの音楽表現を探求するクリエイターブランド。

Virtual Interactive Musicの定義

バーチャルSNSを中心に独自の進化をしたインタラクティブ要素のある音楽

「インタラクティブミュージック」という今まで多くはゲーム演出として使用されていたプロの領域のものだったものが、近年の技術の進化、Unity、Unreal Engineを中心としたゲームエンジンの普及で経験者意外も手が出しやすくなり、主にVRChat等のバーチャルSNSを中心に独自の進化をしたインタラクティブ要素のある音楽を「Virtual Interactive Music」と定義している。
特徴としてはその公開場所が現在はバーチャルSNSの各ワールドに限定されている。
そのことにより一方向の再生に限らない楽曲の作成が可能であり、3DCGによるビジュアル、ゲーム要素と構造的にもリンクした表現が可能である。

この定義で、この名称で呼んでいるのは現在私自身だけであるが、この流れはバーチャルSNSを中心にグローバルに同時多発的に近年起きていてる。

KAI-YOUさんの記事の企画でバーチャルワールドについて対談したキヌさんに先日VRChatのワールドを色々案内して頂く機会があり、インタラクティブ要素のある音楽ワールドを多数体験し実感した。先ほども述べたように同時多発的に起きているもので、製作者はそれぞれ全く別のコンセプトで制作している。「音楽作品」であるというVirtual Interactive Music(以下VIM)という視点を持たなければ結びつけることは難しいほど構造的にもテイストもバラバラである。
ただあえて私がVIMと定義したのは多くの人にそうした音楽の存在が気づかれていない現状をポジティブな方向に持っていきたいという思いがある(実質私も気づいていなかった)。
近年CD/レコード、Youtube、SoundCloud等の音楽ファイル共有サービスで再生不可能な「音源」を探しあてることは非常に難しい。
また音楽ユーザー全体のVRChatクラスタの占める割合はそこまで高くないだろう。
だがVIMにはとてつもない可能性を秘めているし、多くの人が体感すべきものである。

Virtual Interactive Musicに行き着くまで

モンスターを倒すゲーム的な非日常体験の方がバーチャル空間でのリアルな日常といえるのではないか

今年に入りコロナの影響もありアーティストがリアル空間でLIVEが出来なくなったということもあり、バーチャル空間上で3DアバターによるバーチャルLIVEが注目を集めだした。
こうしたバーチャルLIVEはVtuberでは既におなじみであるが、海外のトップアーティストがこうしたバーチャルLIVEを行い、国内でも米津玄師などトップアーティストが3DアバターのバーチャルLIVEを行っている現状がある。

『Fortnite』で行われたTravis Scottの3DアバターLIVE

ではその次のバーチャルによる音楽表現は何か?ということは皆が思うことであろうし、当然私も考えていた中で、一つのヒントになったのが、VRゲーム Half-Life: Alyxだ。
今までのVRゲームとは明らかに違う、もう一つの世界が確かに存在するという圧倒的な体験だ。これまでのリアルかバーチャルかの二項対立ではなく、バーチャルの中でも感じるリアルの度合いは違うことを実感した。

Half-Life: Alyx

バーチャル空間で音楽を鳴らすという事を突き詰めると、演奏しLIVEをする現実世界の模倣だけがバーチャル空間での音楽的リアルに繋がるのでは無いという確信をもった。

銃を撃ち、モンスターを倒すゲーム的な非日常体験の方がバーチャル空間でのリアルな日常といえるのではないか。
そのリアルから生まれる音の可能性を信じてみたいと思ったのだ。

同時期に私自身がバーチャル空間を発表の場に選んでいるプラットフォームClusterでもゲーム機能が実装されたこともありインタラクティブなワールドが作成できるようになり、ゲームワールドも作成してみた。その制作を通じて確実にこの技術は音楽制作としても生かせるという実感を得た。

Virtual Interactive Musicの構造について

Vtuberでは「だれが」VIMでは「どこで」「どのように」音を鳴らすのかが重要なのだ。

バーチャル音楽でいえばVtuberは外せない。VtuberとVIMの構造の違いについて。私自身も音楽系のVtuberを2年ほど制作している。その中から見えてきたのはVtuberでは「だれ」がその音を鳴らすかという事が非常に重要なのだ。Vtuberとして発表する前にsoundcloudで発表していた時は100再生程度の楽曲が、Vtuberとして発表することで30万再生した実例がある。楽曲だけではなく、動画のキャラクターのビジュアル、発言、キャラクター性を構築したうえで鳴らすことは楽曲の世界観を何倍にもする非常に有効な手段なのだ。
一方VIMではキャラクターでは無くバーチャルSNSのバーチャルワールドで鳴らされるものであるし、インタラクティブにどう音が鳴るのかという事が重視される。
つまり「どこで」「どのように」音が鳴るかが重要なのだ。

Virtual Interactive Musicと通常の音源制作方法の違い

(Unityで設定する項目)
・音をバーチャル空間にどう配置するのか。
・どのタイミングで音がなるのか/消えるのか/変化するのか

上記のようにビジュアル表現がMVのように楽曲のイメージを拡張するものというより、楽曲の構築要素に関わるものであり切り離せなくなっているのだ。同様にインタラクティブな操作を可能にするプログラミング部分も切り離せない。
通常ミュージシャン(アーティスト)が音楽作って、デザイナーがCG映像作る、プログラミングはプログラマーというように切り分けをしていたが
アーティストが、一貫して全て作れるくらい技術のハードルが下がってるのだ。その事がVIMを可能にして「音楽作品」の領域を広めている。
近いうちに楽曲制作にUnityを使用することが珍しく無い未来が来るかもしれない

次ページでは実際の作品を例にVIMの構成を解説!

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