目に映るものは妄想か現実か。漫画家のぱげらった氏がシナリオ、イラスト、演出を手掛けるホラーADV『妄想凶ザナトリウム』絵日記

吉田輝和

新しいゲームを買う時、なにを基準に選んでいますか?

ストーリーや世界観に魅力を感じたとか、人によって重視する要素は様々だと思います。小さい頃から僕は事前にゲーム情報を調べず、お小遣いを握りしめてゲーム屋に行って、パッケージを見て買うゲームを探してました。いわゆるパケ買いです。

もちろんシリーズものや、調べなくても情報が勝手に入ってくる超大作などもプレイしていましたが、完全新規のゲームを買う時に基準にしていたのはパッケージの良さです。

パッケージの裏面に載っているゲーム画面すら見ず、なんならジャンルさえもあやふやなまま、なかばギャンブルのようなスリルを楽しんでいました。今ではゲーム屋でゲームを買うことは減りましたが、Steamなどのストアページに載っているメインビジュアルのみを見て買うことが多いです。

今回は、パッケージから良作を見抜く力を養ってきた僕がビビッと来たホラーADV『妄想凶ザナトリウム』をご紹介します。

世界中で妄想や幻覚症状を引き起こすウィルス”スピリア”が流行していた。主人公・玄崎 類(ゲンザキ ルイ)も運悪くスピリアに感染してしまい、妹の萌音(モネ)に連れられて神川サナトリウム病院という施設に入院するのだった。

バスに乗って病院へ向かう途中、外の景色を見ると異形の化け物が闊歩していた。本作は、妄想や幻覚症状を引き起こすウィルスが世界的に流行している以外は、いたって普通の現代日本的な世界観と思われるので、この化け物も幻覚なのだろう。

ただ、ゲーム開始から呑気なBGMが流れていたので、もっとこう、可愛いマスコットキャラのような幻覚が話しかけてきて困るぜ~的な緩い幻覚を想像していたんだけど、悪夢寄りのガチな幻覚でビビる。

そんなガチ幻覚を癒やしてくれるのが妹の萌音ちゃんの存在だ。面倒くさそうな態度を取るも、病院までわざわざ付き添いしてくれているんだし、お兄ちゃんっ子の優しい妹なんだろう。可愛い。

萌音ちゃんの呑気な態度を見るに、幻覚や妄想を引き起こすウィルスといっても世界中で流行しているんだし、意外と深刻なものじゃない……と思っていたんだけど、病院は物々しい門とフェンスに囲まれていた。これ絶対患者を逃さない隔離施設じゃん!

病院自体の外観は清潔感のある佇まいで少し安心した。面会は可能なようで、妹ちゃんも時々お見舞いに来ると約束してくれた。なんだ、意外と普通の病院じゃん!

しかし、案内された4人部屋には、幻覚に怯えて絶叫する女性や、涎を垂らした虚ろな目のおじさんなど、症状が重めの患者がいた。

症状としてはかなり深刻だけど、世界的に流行しているんだから自分だけではないという安心感もある。うーむ、大丈夫ヤバそうの緩急がつき過ぎて、振り回されっぱなしの主人公と僕。

病院の院長が、白髪で銃を構えてガスマスクを装着しているわけなんてない……こともないかもしれない。個人的好みで言えばアリだがそういう話ではない。

こちらは病院で再会した、かつての初恋の少女リザちゃん。

スピリチュアル好きな彼女のために、肝試しやUFOを呼ぶ儀式を行い、楽しい入院生活を過ごす。

だが、日が過ぎるにつれて、次第に悪夢を見るようになる。ゲーム中は主人公の目を通したものが表示されているので、主人公にとってもプレイヤーにとっても、それが幻覚ではないなんて保証はない。目に見えているものが現実なのか幻覚なのか、主人公とプレイヤーは選択を迫られるのだった。

そう、ガスマスクを被ったスタイルの良い院長も、実は幻覚がそう見せているだけで、本来の姿はおっさんなのかもしれないのだ……。

 

2時間もかからずにサクッとクリア出来ました。ルート分岐やバッドエンドもありますが、ミスしても直前の選択肢に戻れるのでストレスなく進められます。

ホラーと言っても、びっくりさせてくるジャンプスケアのような恐怖要素はないし、ギャグ描写も適度に混ざっているので、怖いのが得意じゃない方でも楽しめると思います。

880円というお安めな分、ボリュームは少しすくなめですが、全一巻の短編漫画を読むような感じでサクッとプレイ出来たのは良かったですね!

そうそう、コンシューマー版はKEMCOが販売を手掛けているのですが、元々は漫画家のぱげらった氏が、シナリオや演出、イラストなど、ゲームの大部分を手掛けた個人制作のゲームだったんですよね。

おじさんの絵を描く以外は何も出来ない僕だったら……こうなるんだろうな。



『妄想凶ザナトリウム』は、ニンテンドースイッチ/PS4/PS5/XBOX/PCで配信中!

公式サイト
https://www.kemco.jp/game/horrific_xanatorium/ja/

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