良質B級パニックとZ級モンスターサメ映画のハイブリッド『シン・ジョーズ 最強生物の誕生』

『シン・ジョーズ 最強生物の誕生』

 どうも、お久しぶりです。えのきです。
 サメ映画について筆が止まってしまいだいぶ経ちましたが人生でもう一度サメ映画に向き合わないといけないという天啓が舞い降りてきたのでまたサメ映画について紹介していきたいと思います。
 サメ映画ってのは人生の意味なんだよ!世界の他のことはおまけだおまけ!人類はサメ映画を作るために進化してきたんだ!!!!!!!やめろ!!!!離せ!!!!!!!

 取り乱しました。私は冷静です。

 そんなわけで今回は人類の技術によって異常な進化を遂げてしまったサメが出てくる中華製サメ映画『シン・ジョーズ 最強生物の誕生』

 シン・ジョーズ? 前に取り上げただろ、と思った方は読んでいただきありがとうございます。
 実は『シン・ジョーズ』というサメ映画について以前ムービーナーズで書いています。

 でもこれはまた別のシン・ジョーズ。シンのジョーズが一つと誰が決めた? サメ映画は無限に増えていく。
 なお、本作は前回取り上げた『シン・ジョーズ』とも『シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『シン・ウルトラマン』のそのいずれとも全く関係ありません。

 日本よ、これがサメ映画だ。

あらすじ

水深100メートルの海洋深海ステーションでは遺伝子組み換え実験によるサメを利用した抗がん治療の研究が行われていた。
サメの遺伝子組み替えによる癌の治療で多くの命が救われるはずだったが、強引にすすめた第三段階の遺伝子組み換え実験によってサメは暴走、水陸両用に進化したサメは防弾ガラスの水槽を破壊し、人々を襲い始める。
「このサメ、妊娠している」
オスであるはずのサメの妊娠、なぜ水陸両用へと進化を遂げたのか?
様々な謎がうずまく中、サメはそれを待つことなく襲いかかってくる。
人類と人類の生み出した最強生物の生存をかけた戦いが始まった。 

『ディープ・ブルー』ライクな前半、舐められない緊張感と緊迫感

 さて、冗談みたいなタイトルと冗談みたいな露骨なB級あらすじ。「どーせまたサメが大暴れするクソ映画だろ」と思いがちかもしれませんが、これが中々なめられないクオリティなのが『シン・ジョーズ 最強生物の誕生』のすごいところ。
 前半のシナリオの流れはかの名作『ディープ・ブルー』を踏襲したような「サメを改造したら強くなって凶暴化して人間を襲い掛かってきた!」とお約束な流れですが、要所要所の面白ポイントと物語の展開の起伏、緊張感の作り方が非常に上手い!

言わんこっちゃない!という展開から始まる、がこれがなかなかよくできている
シン・ジョーズ 最強生物Aの誕生より

 研究所の耐圧ガラスをぶち破り浸水した研究所内でのサメから必死に食われないように逃げ惑う人間たち、という閉鎖空間での緊張感の保たれたサメ空間からの脱出という最初の状況で息の詰まるような緊張感を見ていて感じさせられる。
 この時点で「おお、中々やるサメ映画だな……」という作劇の上手さがあるのですが、そんな序盤のサメの危機を脱した後も多種多様なバリエーションあるサメの襲来があって見応えがあります。

 本作のサメ、他の魔境と化したサメ映画界ではもはや基礎スキルレベルではあるのですが遺伝子組み換えによって水陸両用となっているため浸水した研究所での緊張感のあるシークエンスを脱する→地上を這いずり回り襲い掛かるサメから全力疾走で逃げる、とただひたすら息を潜めてサメの襲撃を凌いでいた『静』の流れから一点して生きるために全身全霊で逃げる『動』の場面へと一気に変わります。そしてそのシーン一つ一つの緊張感と緊迫感がしっかりとしていること!

浸水した『静』の展開から一点、地上だろうと全力で追跡してくるサメが怖い!
シン・ジョーズ 最強生物の誕生より

 これが見ていて飽きさせない作品となっていて「中華サメ映画、舐められない……!」となるクオリティ。
 『ディープ・ブルー』などのサメパニックB級映画の面白いところをよりブラッシュアップして出してきており非常に魅力的な前半となっています

ジャンルのスイッチングが見事

 とはいえ『シン・ジョーズ 最強生物の誕生』堅実な作りと見せかけてこんなタイトルをつけられただけの大暴れっぷりはちゃんとあるサメ映画です。
 前半戦は『ディープ・ブルー』を踏襲した良質B級パニックサメ映画ですが、後半戦に差し掛かりどんどん進化をしていくサメの大暴れっぷりはもはや『ディープ・ブルー』はどこいった!?と言わんばかりのクソデカモンスターとしてのサメとして暴れ回り、とんでもない絵面も見せてきます。
 しかしこれまた面白いことに『観れる』クオリティーは維持されている。

 近年のサメ映画は『シャークネード』であったり多頭サメシリーズだったり『シャークトパス』シリーズであったり、とバカサメモンスター映画のムーブメントが強くどうしてもそういう風潮をサメ映画を見ている我々としてもかすめてしまう状態です。
 それは私としては(好きなので)ありがたいことですが、どうしても葛藤もあります。
「これからサメは必ずこういうインフレをしていくんだろうか。じゃあ、そうなるとおもしろさは担保できるんだろうか?」
 バカサメ映画的なモンスターとしてのサメが加速するほど、ある意味でシリアスにシナリオを捉えるのは難しくなります。『ディープ・ブルー』のような緊張感を持ちつつも、B級サメパニックな面白さを維持するのは難しいのだろうか?
 そんな不安に対して『シン・ジョーズ 最強生物の誕生』は見事にアンサーを出していると思います。

前半の堅実な積み重ねから後半の一転したサメが街で大暴れする様は爽快感すらある
シン・ジョーズ 最強生物の誕生より

 前半戦を徹底した緊張感、緊迫感を保ちサメの脅威を描き、サメ退治という軸が現れる後半戦では完全にモンスターと化したサメの大暴れっぷりを出すことで『恐怖の対象としてのサメ』から『打ち倒す敵としてのサメ』へと描き方を自然に変えていく。
そして見ているうちに自然とB級サメパニック映画からB級モンスターサメ映画へとジャンルが転換されている。
これがシナリオ構成の妙、荒唐無稽な設定、あらすじでありながらそれを一本の映画としてまとめあげようとする意志を感じられる。
 それが『シン・ジョーズ 最強生物の誕生』です。

魅力的なキャラクター

主人公ポジションの宋、普段は酒浸りだけど決めるところは決めてくれる良キャラ
シン・ジョーズ 最強生物の誕生より

 シナリオが優れている、ということを書きましたがそれを彩るキャラクターも多彩です。
 サメに犠牲になるモブ的なキャラから、問題の中核にいつつそれをなんとかするメインキャラクターまで皆一人一人キャラが立っていて物語に有効に機能しています。
 主人公のサメハンターである宋さんは日常では酒浸りでダメダメそうなお兄さんなんですが、サメの問題に対しては誰よりも的確に対応しつつ、研究所のメンバーが行った実験に対してのリアクションなど「この人、芯には正義感のある人なんだなぁ」と思わせる描写が効いている。助手、もしくは相棒のブーなんかもコミカルなキャラクターをしていてほどほどにコミカルな要素を作中に与えてくれて見ていて空気が重くなりすぎない。
 サメの遺伝子操作の実験の指示を出した社長なんかは実に味わい深いキャラクターと活躍をしていて終盤の展開なんかは、「この映画、過剰な資本主義に対してのアンチテーゼをサメ映画でやろうとしてるのか?」と想うかのような立ち回りと末路を見せてくれます。

 タイトルは一見するとクソサメ映画感のあるものですが、意外と中身は時流を捉えつつも堅実に良質なサメ映画を生み出そうという意欲に満ちた作品『シン・ジョーズ 最強生物の誕生』Z級のサメ映画も好きだけどやや食傷気味、という方は見てみるのはいかがでしょうか? また違ったサメ映画の魅力に出会えるかもしれません。
 それではまた次回!

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