流行の兆しを見せる「ローポリ」「ローレゾ」表現
以前、ドット絵・ピクセルアートについて取り上げ、レトロの域を超え一つの表現手法として確立されてきていることをまとめた。
同様に、近年表現技法として確立されつつあるものに「ローポリゴン(ローポリ)」がある。
ピクセルアートやチップチューンと同様に厳密な定義が難しく、ミドルポリゴン・ハイポリゴンとの境界は曖昧だが、ざっくりと「少ないポリゴン数で形作られた3D」を指す言葉である。
steamを始めとした個人でゲームを販売できるプラットフォームが整備されたことや、PS4やNintendo Switchのインディーゲームを取り上げる「PS♥Indies」「INDIE WORLD」を公式が運営するなど昨今のインディーゲームの隆盛に伴い、ピクセルアートを用いたグラフィックで表現されるゲームの増加と同様、初代PSやSS期あたりの3Dゲームを意識したタイトルが注目を集めている。
最近では、ローレゾ(低解像度)ホラーゲームファンコミュニティ「HauntedPS1」がインディーホラーゲームの体験版を複数収録したタイトル『Demo Disc』を発表し話題になった。
その他、PSやPS2のグラフィックやイタリアンホラー映画を意識したゲームをリリースするデベロッパー「Puppet Combo」
PS、SS期の3D表現を「レトロポリゴン」と呼び、その魅力を広めるために一條 貴彰氏が制作した『Back in 1995』
ホラーゲームやホラーに近いジャンルを中心に、徐々に盛り上がりを見せるローポリ/ローレゾを表現手段として用いた作品。
ピクセルアートに比べるとまだ数は少なくマイナーな表現ではあるが、今後世間の認知が広がる中で一つのスタイルとして地位を確立することに期待している。
ただし、そのためにはより広いジャンルで認知・評価される必要があるだろう。
そこで、上記で取り上げたホラー作品以外での注目作・注目アーティストを紹介する。
水瓶上のフェルマータ
インディペンデントクリエイターの休符氏(@kyu_fu)が制作中のゲーム『水瓶上のフェルマータ』
ロボットの自キャラ「フェルマータ」を操作し、水没した街の水位を下げることを目的としたアドベンチャーゲーム。
ロックマンDASHのファンであると公言する休符氏、本作でもそのオマージュ要素が含まれているとのこと。
現在公開されている動画では、街や海中を探索するアクションの様子が描かれ、初代PSライクなローポリ表現が退廃的・幻想的な美しさを補強しているように感じられる。
リリース時期は未定だが、今後の進展が非常に楽しみである。
空想料理店 蟹
「空想料理」をテーマとした動画群を中心としたYouTubeチャンネル『空想料理店 蟹』
運営するのは、Vtuver 蟹氏(@kaniegg)。
非常に独特な世界観を持つ蟹氏の動画と90年代〜2000年代を思わせる3DCGや意図的にVHS風に仕上げている(PCでアニメーション動画を制作した後に、VHSテープにダビングしパソコンに取り込んでいる)点の親和性が非常に高く、幻想的な雰囲気がとても美しくも、どことなく胡乱な魅力も感じさせる「料理シリーズ」
その他、最近ではVTuber緑仙のMV制作を担当したことも話題になった。
これまでの紹介したゲーム作品とは異なり、ビデオゲームとは独立してローポリ/ローレゾを表現技法として駆使する蟹氏、純粋な映像分野でのこうした技法の発展・昇華において外せないアーティストとして今後の作品にからも目が離せない。
以上、2人のアーティストを紹介した。表現のスタイルとして確立されつつある「ローポリ」「ローレゾ」表現を用いた作品は今後も増えることが予想されるが、それにより今回紹介したような魅力的な作品が世に生まれることを期待する。