ピクセルアートのジャンルとしての確立とインディーゲームの隆盛
「ピクセルアート」あるいは「ドット絵」と呼ばれる表現方法がある。
ピクセルアートは、1970~90年代ビデオゲームにおけるグラフィックの主流であったため、「レトロゲームのグラフィック」「古い」イメージがつきまとうものであった。
その一方で純粋に「ピクセルアート」そのものの魅力を提唱するアーティスト、ファンが増え始め近年、ビデオゲームから独立した一つの表現方法としての地位が確立されつつある。
昨年出版された『ピクセル百景 現代ピクセルアートの世界』のような画集の発売や、2015年から始まり年々規模を拡大し開催されているイベント「Pixel Art Park(ピクセルアートパーク)」








一方、steamを始めとした個人でゲームを販売できるプラットフォームが整備されたことや、PS4ならばPS♥Indiesと銘打ってインディーゲームを積極的に紹介し、Nintendo Switchでは「INDIE WORLD」というWeb番組を立ち上げてインディーゲームを紹介するなど、インディーゲームの盛り上がりにも近年目を離せない。そうしたインディーゲームにおいてもドット絵を利用した表現を用いて世界中で大ヒットした作品が少なくない。
トビー・フォックス (Toby Fox) 氏が開発した『Undertale』
ヨアキム・サンドバーグ(Joakim Sandberg)氏が7年かけて制作した『Iconoclasts』(アイコノクラスツ)
ゲームから独立した形でアートのスタイルとしての地位を確立する一方で、インディーゲームの隆盛によってゲームのグラフィックとしても再注目されているドット絵/ピクセルアートだが、音楽とも非常に高い親和性がある。
ピクセルアートと音楽
映画『怪盗グルーのミニオン大脱走』
本作劇中歌であるPharrell Williams (ファレル・ウィリアムス)の『Yellow Light』のMVではピクセルアートで描かれたミニオンやファレルがゲームのように動くポップなアニメーションが用いられた。
内容としてはゲームをイメージしていることが見て取れるが、実写にピクセルアートを融合したパートでは楽曲のポップさを引き立てるような、単なるレトロではない現代的なピクセルアートとしての魅力も感じる。
『Yellow Light』のような現代的なポップ・ミュージックにおいて、ピクセルアートが効果的に用いられる一方で、よりビデオゲームと関連が深く、ピクセルアートとも近い関係にある音楽のジャンル「チップチューン」が存在する。
ビデオゲームの表現手法という、元々の成り立ちがピクセルアートと共通なチップチューンは、ピクセルアートとの親和性も当然のように高い。
国内チップチューン界のホープ「TORIENA」のMVや、チップチューンアーティスト「USK」がトラックを制作した「DOTAMA」の『通勤ソングに栄光を』のMVを制作したのはピクセルアーティストのm7kenji氏。
楽曲のビデオゲーム的世界観をポップかつ緻密に描いたMVは必見だ。
また、m7kenji氏はVJとして、ライブにおけるミュージシャンの世界観構築にも一役買っている。
その他、ニューヨーク発のチップチューンバンド「anamanaguchi」のMVでは全編ではないが一部ピクセルアート的表現が使用され楽曲のポップさと胡乱さを補強している。
こうした音楽の分野でも、ビデオゲーム的表現の一環、ないしそれとは切り離された形でピクセルアートは効果的に使用され表現手法として成立している。
当時の技術的な制約の下制作されたゲーム音楽を見直しての評価も「レトロ」「懐かしい」が先行してのものだったと思うが、それが昇華され音楽の一ジャンルとして確立されるまでに至った。
ピクセルアートも近年チップチューン同様に、単なるレトロを超えて、新たな表現手法としての地位が確立されつつある。
MVのような映像表現やイラストレーションの他、インディーゲームの世界におけるピクセルアートの可能性に今後も目が離せない。
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80年~90年初頭のPCやゲーム機(主にファミコン、ゲームボーイ等)に搭載されていた音源チップのような制約の多い音源をあえて用いて制作される音楽、またはそうした音源の音色を意識して作られた一連の音楽を指す。
※定義に関しては多様なため上記は厳密なものではない。