【再見再考】フォレスト・ガンプ【ウルトラスーパーマスターピース】

始条明

エビの串焼き、エビのトマト煮、エビの煮込み、エビの唐揚げ、エビフライ、エビソテー……

ムービーナーズ読者の皆さん、走って!!始条 明(しじょう・あきら)です。
タイトルだけは誰でも知ってる超絶大傑作を改めて観てみよう、という本連載『再見再考!ウルトラスーパーマスターピース』第五回は……ロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)!

知能指数は低いが、心優しくまっすぐな男フォレスト・ガンプ(トム・ハンクス)。アラバマの田舎町に生まれたガンプは、公民権運動、ベトナム戦争、ヒッピー文化、そして愛する女性ジェニー(ロビン・ライト)との出会いと別れを繰り返しながら、激動の1950〜80年代アメリカを走り抜けていく……

フォレスト・ガンプ、だ〜〜い好き。サブスクの画面を開いて、新しいやつを観るでもなしに、なんとな〜く再生しちゃう映画……って あるじゃないですか。自分の中ではその枠の筆頭がこの『フォレスト・ガンプ』なんですよね。ホントになんとなくなので、特に理由があるワケではないんだけど、なんか惹かれちゃう一本。

そんな『フォレスト・ガンプ』……邦題は”一期一会”ってついてるけど、全然メチャメチャ再会することでも有名な本作ですが……個人的に一番のみどころは、アメリカ現代史をいち市民の視点でズアーッと高速履修できるところ。

心優しい男・フォレストがその半生を振り返りながら進んでいく仕立てになっていて、ブレイク前のエルヴィス・プレスリーと出会ったり、ベトナム戦争に従軍したり、ケネディをはじめ歴代大統領と面会したり……この場面は生前のニュース映像に合成して再現!最近の映画でもたまにやってる死者復活技術のはしりですね……などと、彼自身も知らないまま歴史的な転換点に次々と立ち会うことになります。

この『フォレスト・ガンプ』、当時のアメリカ人なら誰でも知ってるいろんな事件を下敷きにすることでストーリーを展開していくんですが……日本に住んでいる我々が(そうでない人も この記事読んでくれてたら超ありがとう!!!)アメリカの映画を観る時とか、音楽を聴く時とか、アメコミを読む時とかって、歴史上の人物とか出来事とか場所とか……を知ってる前提でお話が進むことって よくあるじゃないですか。

そういう時に「あ コレ知ってるぞ!」ってなるのって、ぶっちゃけ他の作品がきっかけで知った……っていう事象が多いと思うんですよ。ちゃんと最初からアメリカ史として勉強してたって人も、元のキッカケを辿れば洋画で興味を持って、とかじゃあないかな。

当時のアメリカの観客的には、知ってて当たり前の色々……を描いていたのが、現代の我々から観ると逆転して「アレとかコレとかの元ネタがバンバン出てきます!」っていう仕掛けになっているという。

そしてやっぱり、主演のトム・ハンクス演じるフォレスト・ガンプが魅力的なキャラクターですな。なんたって、タイトルが名前そのままだし。ハリウッド随一の”いい人”としても知られるハンクスの、感情が純粋に伝わってくるような演技がバチッとハマってて……この人”目に涙を溜める”っていう表情がスゲ〜似合うんですよね。江原正士さん(ソフト版)の吹き替えもすばらしくて、特に「ダン中尉!」の言い方がイイ。

そう、ダン中尉!ガンプが送られたベトナムの戦地で上官となり、彼に命を救われたことで人生が変わっていく軍人家系の男。

ガンプがただ”善き人”として生きることで、周りの人々の人生を次々に変えていく……というこの映画を最も象徴するキャラクターで、いわゆる“鬼軍曹”の典型のような彼が、戦争が終わり、平和に向かう時代まで生き残ってしまったことで葛藤しながら(吹き替えの有本欽隆さんがまた ズシンとくるイイ演技されてるんです)、今でいう“有害な男性性”の呪縛から解き放たれていくところも本作のみどころであります。

あと、ダン中尉を演じたゲイリー・シニーズがその後、退役軍人のためにゲイリー・シニーズ財団を設立したのもステキ。これまでに3億ドル以上を集めたほか、遺族の子どもたちを毎年数百人、ディズニーワールドに招待しています。オタクはこういう話に弱い。

逆に、そういった有害な男性性がのさばっていた社会の被害者として描かれるのが、ロビン・ライト演じる本作のヒロイン、ジェニー。フォレストの幼なじみであり、彼の永遠の想い人であるジェニーですが……幼い頃には父親から虐待を受け、大学は中退、ヒッピーのコミュニティに巻き込まれては暴力的な彼氏に捕まり……と、フォレストとは対照的に、ただ生きようとするだけで苦難に追い詰められていく辛い人生を送ります。

一見すると奔放で破滅的に見えるジェニーですが、では彼女をそこまで追い詰めてしまったのは何なのか……と考えさせられる存在です……と言うには、さすがに彼女ひとりに悲惨さを背負わせすぎだけど。なんぼなんでもヒドくない!?

いま観た時にちょっとどうよ、な繋がりで言うと、かなり……というか そう受け取ろうとして見てみると全体的に思いっきり保守的なんですよね。先に挙げた”有害な男性性”の否定とかをいったん脇に置くと、たとえば50〜60年代を描く上で避けては通れない公民権運動をサラ〜ッと流してたり、ブラックパンサー党に代表される学生運動や闘争から意図的に距離を置いていたり……まあ、そういったことに無関心でいられた当時の白人の視点を逆に皮肉ってる……とも……取れなくはないけど、さすがに無理筋でしょう。

あとはフォレストの戦友で、エビ漁師の家系に育った黒人青年バッバの描き方とか……下唇をやたら誇張する表現もどうかと思うし、キャラクターとしてもまんま“マジカル・ニグロ”だよねコレ、っていう。南部育ちの白人といきなり親友に……!?

でも良いキャラではあるんだよな〜〜バッバ。無意味な戦争の悲惨さを……またコレ 彼に背負わせすぎてはいるんだけど……よく表してるのもあって。まあこの作品に関しては、ある意味フォレストが最もマジカルで超然的なキャラクター(こんないいヤツいねーよ!)だからこそ、現代においても名作として成立してるバランスではあると思う。

ところで読者の皆さん、この映画を観た後はレストラン”ババ・ガンプ・シュリンプ”に行きましょう。ネタバレのため詳細は割愛しますが、言ってしまえば究極のコラボカフェみたいなもので、も〜〜ワタクシ ここ大好きで何度も行っています。ヒーローショーでおなじみの東京ドームシティとか大阪USJの向かいとかにあるので、詳しくは各自お調べください。ただの宣伝でした。よろしくお願いします。マジうまいよ。イチオシはココナッツ・シュリンプとシュリンプカクテルです。

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