今更だけどアレ見よう『戦場のメリークリスマス』/ミラナ・ラヴィーナ

ミラナ・ラヴィーナ

こんにちは!映画好きVtuberのミラナ・ラヴィーナです!

今日も観る機会を逃していた名作映画の感想を書いてまいります。
今回のタイトルは『戦場のメリークリスマス(83)』です!

戦争映画と思いきや……?

(C)大島渚プロダクション

本作は1983年公開、大島渚監督作品です。
主演を務め、テーマ曲の作曲・演奏も行った坂本龍一氏の訃報や、コロナ禍の影響で延期となっていた4Kリマスター版がリバイバル上映されるなど世間的な注目が集まっている現状ではありますが、かく言うわたしは「めちゃくちゃ男と男(いわゆるBL)ですよ!」と悪いリスナーからのタレコミを聞きつけ、鑑賞することとなりました。

本作はやはり「戦争映画」というイメージが強く、あんまり興味のあるジャンルじゃないしなあ……なんて思っていたのですが、いざ観てみるといやこれ本当にちゃんと男と男の愛の話じゃん!!聞いてないよ~~!!

(C)大島渚プロダクション

わたしのようなモンは火のない所に煙を立たせるのが仕事というか、匂わせがあるようなないような男と男の関係性を捕まえてはこれ”そういうこと”です!このふたり”有り”ます!と大声を上げることを生業としておりますので、本当にちゃんと同性愛を題材としてる作品を前にするとこれ逆にわたしに出来ること無いじゃん!となってしまうのです、悲しきモンスターですね。

とはいえ真面目に描かれた関係性には真面目に向き合うのが礼儀というものですので、悪いオタクのこじつけはいったん沈めて、冷静に本作の良かったところなどを語っていこうと思います。

同性愛を嫌悪しながらも同性に惹かれるという矛盾

(C)大島渚プロダクション

軍隊という極めてホモソーシャルな状況にありながらも激しい同性愛嫌悪が蔓延しているいびつさの描写が結構しんどいところはあったのですが、そこも含めてあの時代に旧日本軍をちゃんとヤバいものとして描いているところがまずすごいなと思いました。

占領下の島にある俘虜収容所の空気なんてまともな倫理観が無く無限パワハラで成り立っている世界に決まっているわけで、全体的に起こることすべて「すっげ~嫌~……」だったというのが正直なところ。

でもそんな最悪男性社会の中だからこそ発生する男と男の疑似恋愛のような関係に……悔しいけど萌えちまうんだ……。

(C)大島渚プロダクション

本作は冒頭からいきなり俘虜を犯そうとしたある兵士が処刑されそうになるというシーンから始まり、それによって強い同性愛嫌悪が下地にある世界ですよ、という作品内の倫理観が明確に観客に示されます。

しかしこのシーンの重要性はそれだけではなく、中盤でこのふたりの関係が実は純粋な恋愛であったことが分かると、集団全体にはびこる同性愛嫌悪はありつつも個々人の関係によっては愛が芽生える環境でもあるという矛盾をはらんだ構造が示唆され、複数の意味を持たされている事が見えてきます。

そしてそんな構造は、この環境の管理者であるヨノイ大尉(坂本龍一)が同性である美しい男・セリアズ少佐(デヴィット・ボウイ)にどんどん惹かれていくという、困惑と衝動をより際立たせることに非常に効果的だったと感じました。

もうこれだけで大島渚監督、映画が……そして関係性を描くのが……うまい!

(C)大島渚プロダクション

それから、作品のタイトルであり非常に有名なラストシーンでもある「メリークリスマス、ミスターローレンス!」というセリフ。
これは終戦後死刑判決を受けたハラ軍曹が、俘虜収容所で強い関係性を築いていたロレンス中佐に向けて言った最後の言葉なのですが、中盤のあるシーンとの対比として考えるとこの言葉の持つ意味があまりに重く、もうこれほとんど意味が分かると怖い話じゃん!となってしまいました。

全編通して男と男の強めの関係性を描きつつも、最後には驚くほど毒気の強いシーンで戦争の惨さ(と言っていいか分からないですが)を描きもう一度観客を突き放す、大島渚監督、映画がうますぎるよ……。

真面目な話は置いておいて萌えの話をする

(C)大島渚プロダクション

出来ること無いとか真面目に向き合うのが礼儀とかなんとか言いましたが、普通にめちゃくちゃ萌えたことも事実。
ということでここからは萌えたところの話、させてください。

まずヨノイ大尉とセリアズ少佐の出会いのシーンから。
ふたりは拘束されたセリアズ少佐の裁判が初対面となるのですが、もうその時点でちょっと笑えるくらいには全然話を聞いていなさそうにぼんやりセリアズ少佐の顔を見ているヨノイ大尉、明らかに”恋”に落ちているんですよね……。

その後も何かあるたびにヨノイ大尉は「あいつ(セリアズ少佐)はどうしてる?どこにいる?何でいない?」と周りに聞いて、ずっと御執心なのが何ともいじらしく……。

そしておそらく坂本龍一氏はメイクをしてヨノイ大尉を演じていたようなのですが、そのお化粧がどんどん濃くなっていくところにも恋心を感じました。
好きな人の前では綺麗に見られたいよね、分かる分かる。

しかし対するセリアズ少佐はヨノイ大尉のこと何とも思ってなさそうなのが切ない。(萌えでもある)

セリアズ少佐からヨノイ大尉へのキス(といっても頬ですが)も、こいつ俺の事好きっぽいしこうすれば黙るだろ……みたいな意思が丸見え!悪い男!
でもそんな男のキスで腰が抜けるどころか気を失っちゃう大尉、おいたわしや……かわいそうでかわいいよ……。

個人的に一番良かったのはヨノイ大尉が処刑されたセリアズ少佐の髪を一束切り取り、持ち去る終盤のシーンです。
前述したとおり同性愛嫌悪にまみれた環境で、自身もその雰囲気に同調する生き方をしてきたであろうヨノイ大尉が、消しきれない恋心とそんな感情を抱く自分のことを最後に受け入れてあげられたんだなあと思うと切なくて……。

そして、ヨノイ大尉とセリアズ少佐の関係性だけでなく、ヨノイ大尉の周りの部下たちも美しいヨノイ大尉に惹かれていたという構造も良かったですね。

中盤、独房に入れられたセリアズ少佐をある兵士が暗殺しようとするシーンがあるのですが、その動機はヨノイ大尉がセリアズ少佐への恋で苦しむ様子を見かねて……というもの。
その兵士が「奴(セリアズ少佐)は大尉殿の心を乱す悪魔です!」と叫び自刃する様には強く心を打たれました。

セリアズ少佐からヨノイ大尉へのキスのシーンでも、ヨノイ大尉が倒れるのと同じくらいのタイミングでセリアズ少佐に殴りかかった部下からかなり強い愛を感じました。
ヨノイ大尉もまた……人の心を乱す悪魔なんだよなあ……。


ということでマジモンの男と男映画で気合が入ってしまった感想記事でしたがお楽しみいただけましたでしょうか。

次回タイトルは「ショーシャンクの空に」を予定しています。本当に今更だな?!

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