『海底47m 古代マヤの死の迷宮』前作と繋がりのないシナリオでありながらもその精神性を継承した正統続編

こんにちはえのきです。

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』が7月23日、海の日に公開されました。(海の日に公開する映画ではないだろ!)
雨が続いたりと夏が近いとはいえなかなか開放的になれない今日この頃。
水にたくさん浸かったり、サメが出てくればそれはもはや海水浴を堪能したのと同じなのでは!?

というわけで今回は『海底47m 古代マヤの死の迷宮』を紹介します。
前作『海底47m』とシナリオ的な繋がりはありませんが、便乗詐欺タイトルではなく正式な続編です。

©THE FYZZ FACILITY FILM 11 LTD 『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
あらすじ

物語はミアがいじめられっ子にプールへ突き落とされたところから始まる。
いじめられっ子のミアは父親グラント、義理の母親のジェニファー、そして義理の姉のサーシャともギクシャクとした関係で日々を過ごしていた。
父の提案により船中からサメを鑑賞するツアーへの参加をすることになったミアとジェニファー。しかし、そのツアーにはミアをいじめているグループも参加することが判明。
直後にその場に現れた義姉のサーシャの友人のアレクサとニコールに誘われ別場所での遊泳をすることになる。
もっとスリリングな遊びをしないかと誘われ、やがて皆は四人でマヤ文明の移籍が眠る海底洞窟へのダイビングを行うことにする。
不安ながらも参加するミア。
ダイビングも初めは楽しく、神秘的なマヤ文明の遺跡を楽しんでいたがアクシデントにより石柱が倒れ一行はパニックに陥る。
偶然、遺跡調査のために作業をしていたベンというグラントのアシスタントと出会いパニックから平静を取り戻しかけたその時、サメが襲撃しベンを食い殺してしまう!
サメは盲目でありながら異様な進化を遂げたホオジロザメだった。
パニックになりながら泳ぎサメから逃げるミア、サーシャ、アレクサ、ニコール。
しかし、サメの襲撃により遺跡が揺れ、崩れ落ちて出口が塞がれてしまう。
自分たちがここにいることは誰も知らない、ボンベの中の酸素も減る一方、彼女たちの絶望的な状況が始まった……

©THE FYZZ FACILITY FILM 11 LTD 『海底47m 古代マヤの死の迷宮』

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』の強みは前作同様、水の底の閉塞感と絶望感。そしてその状況から抜け出そうとする主人公たちを理不尽に襲撃するサメ。
シチュエーションの息苦しさは洞窟内にエアポケットがあったりとやや緩和されているもののそれでも劇場で見た時の息の詰まり方は並々ならぬ重さが存在しています。
そこに襲撃してくるサメの恐怖は前作以上!
息苦しさの中で微かに見えた希望がサメに粉砕されていく様子の連続には心拍数が跳ね上がり、劇場の暗さや息を潜めないといけない感覚とシンクロして絶妙な(サメ)映画体験を味わえます。
実際声上げかけましたよ……びっくりした……

さて、今作は『海底47m』の続編でありながらストーリーとしての繋がりはない作品となっています。そのため一応「今作から見ても大丈夫!」という作品ではあるのですが、いやはやこれがなかなか、単純に「水の底でサメが出るからOK」といったノリとは違います。

しっかりと前作『海底47m』の要素を踏襲した正統続編、といえる作品になっています。

©THE FYZZ FACILITY FILM 11 LTD 『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
ひたすら酸素残量を気にしなくてはいけない物語は映像もあってとにかく息が詰まる。

前作のリサ・ケイトという姉妹であり、二人が対等に並び立つという成長の物語の側面(いやまぁ前作のエンディングは……というのはあるのですが)が今作でミア・サーシャという義理の姉妹として踏襲されています。
『閉じ込められた水の底』というシチュエーションでいかにもがき、成長していくか、という点はしっかりと今作でも踏まえられており「うおお!ちゃんと海底47mやってるじゃん!」となるのは嬉しい悲鳴どころ。

内向的なミア、対外的なサーシャという正反対であった(義)姉妹がトラブルを通じて時に第一印象と異なる行動を行いながら繰り広げられるドラマは単純なシチュエーション・サメ頼りとはならない起伏を生み出しています。
また前作では海底に閉じ込められるのはリサ・ケイトという二人だけでしたが今作はサーシャの友人であるアレクサ、ニコールも含め四人が水の底に。それぞれが中々にキャラが立っており二転三転する展開にダレずにみることが出来たのも作品の強みといえるでしょう。

©THE FYZZ FACILITY FILM 11 LTD 『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
左からアレクサ、ミア、ニコール、サーシャ。この後水中の遺跡を泳いで回ることになり……
©THE FYZZ FACILITY FILM 11 LTD 『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
白濁した瞳がマジで怖い今作のサメ。めちゃくちゃ驚かせてきます。

緩急の効いたサメの襲撃もまた味わいがあって面白いところです。
今作のサメは盲目の人喰いザメ。両目が白く濁っていて威圧感のあるフォルムがすばらしいです。

前作と違って暗闇の洞窟の中ということもあり、『洞窟内で追いかけてくるサメ』『全くサメの姿が見えない中での襲撃をされる』等のパターンが入り混じっており「これあの有名サメ映画じゃん!」みたいなビックリシーンがあるところにニヤリとしてしまうところも。

そんな『海底47m 古代マヤの死の迷宮』、「怖いサメが見たいんだよ!」な人にもオススメしたい良作サメ海洋パニックスリラーとなっています。
雨が続きっぱなしで海にもいけない今年の夏、そんな時期こそ海水浴代わりにサメ映画はどうでしょう?
劇場での暗闇と静かさが作品の緊張感をより加速させてくれるので可能ならば劇場で是非!
それではまた次回!

【海底1m】

【海底5m】

【海底10m】

【海底15m】

【海底20m】

【海底25m】

【海底30m】
ネタバレ注意

【海底35m】

【海底40m】
この下ネタバレ注意

【海底47m】

前回はバッドエンドで「どうしてこんなことするの!」と冷や水を浴びせ私をショック状態にさせた『海底47m』

今回は今回で冷や水を浴びせるポイントがあった〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!

意地悪いよ作ってる側!でもそんな意地の悪さに一貫性を感じて好きになってしまう!!!!!さすが『海底47m』の続編!!!!!!

どんなところが意地が悪いと思ったか。
今作、「サメを邪悪な存在としてキャーキャー言ってるけど映画見てるお前(映画を見ている自分)の方が邪悪だからな」
ということを突きつけてくる映画、と解釈しました。

どういうことか書いていきます。

今作は前作と違い、ハッピーエンドに終わります。
幻覚でもなければ夢オチでもなし。主人公であるミア・サーシャはかろうじて死の迷宮から脱出、船中からサメを鑑賞する観光ツアーの船にサメに襲われながらも救出される生還エンドとなっています。
そこで元いじめられっ子であったミアは冒頭でプールに突き落としていた、いじめっ子(この子のグループは観光ツアーの船に乗っていた)をもはや意に介さず、視線で引かせる、という成長を示します。

©THE FYZZ FACILITY FILM 11 LTD 『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
開幕プールに叩き落とさずぶ濡れのミア。ちなみに前作も開幕はプールに落ちるところからスタートなので芸が細かい。

冒頭ではいじめっこによってプールという水の中に突き落とされていたのことの対比になっているんですよね。
ミアの成長が引き立つようにいじめっ子が配置されている。
ただ同時に見ていてちょっとした疑問符がありました。

「確かに成長はあったと思うけど、この件に限って言えばいじめっ子は正式に安全の担保されたツアーに参加している。ミアやサーシャはむしろ危険な遊びに自ら立ち入って危機に陥ったので、それで成長した、いじめっ子より(物語的な)正しさがあるように振る舞うのはフェアじゃないのでは?」

と思ったんですね。もちろん生還後に、そこのメンタルを応用していじめっ子に打ち勝つ、というのなら納得なのですがある種のスクールカースト上位に対しての当て付けめいた演出というかミアに視点が寄っているなと。
とはいえ「でも楽しかったしいいか」と違和感を忘れてエンディング。スタッフロールとなります。
「あー今作はハッピーエンドか」と思っていたところ本当にスタッフロールの最後の最後でこんな感じのメッセージが急に流れます。

『本作の撮影に実際のサメは傷つけられていない』

なるほどなるほど。動物愛護とかの観点からの配慮なのかな〜と思っているとさらに文は続きます。

『サメに食べられる人間は年間10人にも満たない』

あ〜有名ですよね結構。ジョーズ以来だいぶサメ=人喰いというイメージがついてしまいましたが実際そんな人をバクバク食う生物じゃないそうなんですよね。

『調査によると――毎年一億匹以上のサメが人間によって殺されている』

やられた。

一応前作のスタッフロールとか近年の有名作の『MEGザ・モンスター』あたりのスタッフロールを確認したけど特段こう言ったメッセージのテンプレはなさそう。(少なくともお約束ではないため、意図的な挿入では?)

今作でそれまで散々映画を観ている側はサメに怯えているわけですよ。

「うわーサメマジ怖い!」って感じでびっくりしたり震えたりしているわけです。
理不尽とか恐怖の象徴のようにサメが描かれているんです。
だからこそラストでのサメに打ち勝つようなミアの成長に感動するわけですね。
んで、このメッセージ

「実際こんなサメいないからな。サメ映画を観たい皆に望まれた“怖いサメ”だからな!」

って叩きつけてきてると思うんですよ。
そう考えてみるとラストのいじめっ子に対して打ち勝つというか畏怖されるような描写もどうかなと……観ている自分、サメ映画が好きな私にとって「都合の良いハッピーエンド」ではなかったかなと。
この都合の良い幻想に溺れたまま物語が終わる、という点で前作主人公のリサと今作の鑑賞者が重なります。
前作は都合の良いハッピーエンドを直前で取り上げることで鑑賞者に冷や水を浴びせたのに対して、今作では都合の良いハッピーエンドを与えた上で、
「これはお前に合わせて作り物だからな」
と強調して叩きつけるやり口。やめてくれ、その刺し方は普段サメ映画を観ている私に効く……

私は『海底47m 古代マヤの死の迷宮』これまで前作を踏襲している、といったことをこの記事で紹介しました。
しかし、スタッフロールでの文章も含めて深読みすると

「終わりで冷や水を観客に浴びせる」というところまで前作を踏襲しているのでは?

と思うのですね。

そう考えると徹頭徹尾前作のコンセプトを完全維持、最後の最後まで考え尽くされた『正統続編』と言えるのではないでしょうか。
いや自分、雑なバッドエンドって好きじゃないんですよ。
逆張りというか、「こうしたら驚くでしょ?」がどうしても先行してしまいがちで。
でも『海底47m』のバッドエンドってかなり練られているな〜というか。「でもハッピーエンドにも出来たじゃん!」って感情があるから受け入れ難いだけで、バッドエンドの布石がよくよく考えると丁寧に打たれている。
だから「やられた……」という気持ちが大きかったのですが、今回はある意味反則技というか「はい今作はハッピーエンドですよ」とした上でスタッフロールでキャラではなく鑑賞者自身を刺してくるという。

絶対に観客を気持ちよく帰らせないぞ、という最高に意地の悪い鋼の意思を感じて震えてしまいましたね……

ですが「ふざけんな!」よりも「その意気や良し!というかすごいです、はい、完敗……」といった心地。
サメ映画でありながらサメ映画自体に対してのある種の批評の側面伴っているなと。
こういうレイヤーを一つ上にした観点でテーマを叩きつけてきているように解釈できる作品も魅力的ではないでしょうか。

とはいえこう言った見方もあくまで一つの見方。
「なんか最後に申し訳程度にサメへの配慮があってウケた」でも良いわけです。そしてそれだけ楽しめる一本の映画に『海底47m 古代マヤの死の迷宮』はなっている。

そんなわけでつらつらと書いてきましたが、今年劇場公開される数少ないサメ映画として『海底47m 古代マヤの死の迷宮』オススメです!
まだ公開されたばかりですのでいく予定がある方は是非!
それでは今度こそまた次回!

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