『海底47m』この作品に対しての俺の複雑な思いを聞いてくれ

こんにちはえのきです。

7月23日に『海底47m 古代マヤの死の迷宮』が公開されました。
こちらは2017年の映画『海底47m』の続編(とはいえお話として繋がりはないのですが)となっています。

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』のレビューもすぐやりたい!とは思うのですが、色々と自分の中に渦巻く感情が『海底47m』にはあるのでまずはそこについて書かせてください。

『海底47m』もサメが出るのでサメ映画、ではあるのですが(サメが出ればサメ映画なので)これまでムービーナーズで紹介してきたサメ映画とはだいぶ毛色の違うサメ映画です。

というわけであらすじです。

あらすじ

メキシコへ旅行にきていた姉妹、リサとケイト。
初めは楽しく過ごしていたが急遽来れなくなったと聞いていたリサの彼氏について、「君(リサ)は退屈な人間だ」という理由から実はリサと破局していたことが判明する。
ケイトはリサを慰めようと地元民から聞いたケージ・ダイビングにチャレンジすることを提案する。ケージの中から海中のサメを鑑賞するというイベントだ。
気乗りしないリサを半ば強引に参加に誘うケイト。やがてリサも折れて参加することにする。
二人がケージへ入り海底へ送り出される瞬間、トラブルが発生する。
ボートに備え付けられたクレーンが破損、二人を入れたケージは海底へと落下していく。
海底47mで目覚めるリサとケイト。
周囲をサメが泳ぐ海底、ボンベから失われていく酸素、海底故につながらない無線、絶望的状況での二人のサバイバルが始まった……

『海底47m』の特徴であり魅力、その「海底でジリジリと酸素が消えていく、サメもあたりにいる」という極限の状況での展開でしょう。

(C)47 DOWN LTD 2016, ALL RIGHTS RESERVED
数値として酸素残量がしばしば示されるのが緊張感を煽る。
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ケージを壊そうとすらしてくるサメ

映画の大半が海底で展開していき、あらすじであるように酸素がゆっくりと減っていく中助けが来るのか来ないのか、ケイトとリサ自身でどれだけ動くべきなのか判断がつかないまま時間が過ぎていく緊張感がモンスターパニックに寄ったサメ映画とは一線を画するところでしょう。

「海底に落下したケージの中」というシチュエーションであっという間にネタが尽きるのでは、と思いがちですが

・無線が海底では繋がらず少し浮上するためにケージがから出なくてはいけない
・果たして本当に海上の人々は自分たちを助けに来るのか?(見捨てられるのでは?)
・海底で何か光が見えたので助けがきたのかもしれない(酸素が残りすくないため自分たちの場所をケージから出て近づき伝えないといけない)

など海底でありながら状況が二転三転し、「待っているだけでは死ぬしかない」「ケージから出ればサメが来る」という葛藤の中でケイトとリサは悪戦苦闘することになります。
モンスターパニック物のある意味アイドル的なサメと違い今作のサメは理不尽、暴力の象徴であり恐怖そのものと言える迫力があります。

そういった極限状況を描いている作品でありつつ、鑑賞を続けるうちに一つの筋が見えてきます。
主人公であるリサがケイトと対等に成長するという筋です。
中盤にリサは自分が姉でありながら、妹であるケイトに対してコンプレックスを持っていることを吐露します。

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だからこそ彼氏との恋ではケイトに勝てていたと言います。
作中の描写もそこに納得がいくように積み上げられており、リサの心配性で引っ込み思案な様子と活動的なケイトが対照的に描かれています。

海底に取り残された時も当初はケイトが積極的に動いて助けを求めるなどの行動を起こします。
しかし、ケイトの残された酸素残量が少なく、それでも海底に僅かに見えた救援の光へ自分たちの存在を伝えないといけない時からリサの行動が始まります。
ケージの外へ。サメという理不尽な恐怖の存在する海へ。
地上の光すら満足に届かない状況の中でリサは一人でサメをやり過ごしながら海底を泳ぎ、進み始めます。
後半、微かな希望すら打ち砕かれ、絶体絶命の状況になりケイトすらもサメに襲われてしまった時に彼女はついに一人で奮起します。生きるために。妹であるケイトを救うために。

そしてリサは海底で大怪我をしていたケイトを救い出し、救援に合流します。
クライマックスのサメへの抵抗は彼女の成長の一端を示すものでしょう。
リサという主人公の成長物語と見た時に、ケージにもある意味合いを見出せると思います。
すなわち、彼女を取り巻く世界です。

ケージという名の檻の中にいれば確かに危害を加える存在はないが、ゆるやかに死んでいく。外に出ればサメという不条理が襲ってくるかも知れない。
それはリサの生きる現実そのものといえるでしょう。
先んじてケージの外に出て助けを求めていたケイトもまたサメに襲われてしまった。
だが、それでもケージから出なければ生きることはできない。
だからこそクライマックスで海面近くでサメによって襲われたリサがもがき、サメから抜け出すパートがあるといえるでしょう。

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終盤のサメが暗闇から姿を表すシーンなどはなかなか衝撃的
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サメに噛みつかれながらも果敢に抵抗するリサ

不条理に打ち勝つ強さをリサが獲得したからこそ、サメという不条理から逃れられる。
『海底47m』はケイトに助けられてばかりだったリサが、海底というもう一つの現実世界から逃れることで彼女の成長を描いた作品といえるのではないでしょうか。

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海底の息もできぬ緊張感、恐怖としてのサメが存分に描かれた『海底47m』まだ見ていない方は『海底47m 古代マヤの死の迷宮』前に見てみるのはどうでしょう?
それではまた次回!

【海底1m】

【海底5m】

【海底10m】

【海底15m】

【海底20m】

【海底25m】

【海底30m】

【海底35m】

【海底40m】

【海底47m】

って話だと思って見てたんですよ私は!!!!!!!!!!!
あ゙〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!

『海底47m』そういう話に見せかけてそういう話ではありません。
一言で言うと『夢オチ』からの超絶バッドエンド、といったところでしょう。
リサが一人で再びケージから出て助けを求める!怪我を負っていたがギリギリ生きていたケイトを救出!二人で海上へ……という流れは窒素酔いからくる幻覚!リサは助けにきた救助隊をみるも現実を認識できず虚に笑い続ける……というエンディング。

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海底にいるのに救われた幻覚を見るリサ。後味悪すぎる

どうしてそんな冷や水を急にぶちまけるようなことを!!!!!!

ぐあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜騙された〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!ってなるんですよ!なったんですよ!

馬鹿みたいじゃん!真面目な顔して「なるほどこれはリサの成長が……」とか思って見てた俺が馬鹿みたいじゃん!馬鹿〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!

ただ、このバッドエンド何気に伏線は張られているんですよ。
「ん?ちょい都合いいかも?」と思う瞬間はあるんですよ。
水中中で怪我したことが微妙に作劇に活きていなかったり、酸素ボンベ二本目投入について窒素酔いがあるということは言われていたり、水中銃で手をサメに襲われたと思ったケイトが生きてたりするし。伏線、ある。あったよ……

ただ「リサの成長物語」として見立てて鑑賞をしていると怪我したことや窒素酔いといった要素は「ハラハラドキドキ」のための要素としても見れるしケイトも大怪我をしていたりと初見時では「まぁ許容範囲でしょ」と見逃してしまうんですよね。バッドエンドを成立させる前フリよりもハッピーエンドへの前フリの方が丹念に作られているんですよ。

そして何より「リサの成長物語」として見た時の完成度が高い!高かったんだ……

序盤から示されていたリサの気弱なキャラが回収されてかつ、物語の盛り上がりとリサの成長が噛み合っているものだから物語の気持ち良さで流されてしまうんですよね。
そして作っている側も相当そこを狙って作っているんじゃないかと。
ひっくり返して観客を呆然とさせるための丁寧な前フリというか。
だから「あ〜〜〜すごく綺麗にまとまりそうだったのにどうしてこんなぶち壊しするかな!」と考えても

「いや絶対綺麗な余韻のぶっ飛ぶバットエンドにしたくてそうしたんだよな……」

となり、狙いがわかるだけに怒りきれない難しさ。
思いつきでバッドエンドにひっくり返した、というよりも完全に「ハッピーエンドだと思い込んだ観客にショックを与える急展開バッドエンド」冷や水をかけるために要素を配置していた作品になっているんですよ。

だから悔しいけど……上手い……!認めたくない……!めちゃくちゃ嫌な気分になったから……(でも伏線はあったんだよなぁ……という葛藤)

そんな感じなので自分の中で『海底47m』は

「良作サメ映画……良作ではある……良作ではあるかもしれないが……ちくしょ〜〜〜〜〜!!!!!!!!」

といった手触りの作品です。
しかしそれだけのラストに衝撃を受けられる作品、というのはそれだけ道中楽しめたということでもありシリアスよりのサメ映画としてかなりオススメの一本です。

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』が公開中の今、前作である『海底47m』も合わせて見てみるのはどうでしょう?
それでは今度こそまた次回!

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