『ヒトラー 〜最期の12日間~』、死を待つ者たちは『ジャガイモ酒』で現実逃避した!?/今酒ハクノ映画コラム

『ヒトラー ~最期の12日間~』とは?

明日死ぬとしたら、あなたは最後にどんな酒を飲みますか?

究極の問いですね。
なお、飲まないという選択肢は酒クズなのでよくわからないです。

高いお酒か、それとも思い出のお酒……?
特別な一杯にしたいという方も多いのではないでしょうか。

が、こういう問いになるとどうでしょう。

具体的には分かりませんが、数日のうちにあなたは死にます。
なお、その前に非常に酷い目に遭う可能性があります。
それはあなたの上司のせいであり、逃れることはできません。
さて、今から何の酒を飲みますか?

チョイスする酒の意味合いが劇的に変わってきますよね。
なお、飲まないという選択肢は酒クズなのでよくわからないです。

そんな地獄めいた酒を飲まざるを得なかった人々の映画。
それが『ヒトラー ~最期の12日間~』です。

総統閣下が相当カッカしている映画としてご存知の方も多いでしょう。
まずは真面目に、この映画の内容を振り返っていきたいと思います。

『ヒトラー ~最期の12日間~』のあらすじ

『ヒトラー ~最期の12日間~』は、ヒトラー最期の日々を、彼の秘書や高官などの視点も交えつつ多角的に描いた映画です。

謎の遺物や財宝を残させられたり、奇妙な技術によって復活させられたり。
何かと都合の良い悪役にされがちなヒトラーを、ドイツ人監督の手で、あくまで『人間』として描こうとした作品だと言えましょう。

1945年4月、つまり第二次世界大戦末期。
ヒトラーはベルリンの防空壕に隠れていました。
一部のナチス高官、それから秘書、愛人などの女性たちと一緒です。

が、ソ連軍は既にすぐそこまで迫っており、ベルリン中心地には砲撃がブチ込まれる。
控え目に言ってナチスドイツは負け確の状況にありました。

「兵力的に考えて、押し返すことは不可能」
「最早ベルリン脱出以外に生き延びる術はない」

部下の一部は、ヒトラーにそう進言しました。
が、ヒトラーは手をぷるぷるさせながら眼鏡を外し激昂するわけです。

(C) 2004 Constantin Film

「軍は本当に役立たずで、いつも私の邪魔をしてきた」
「戦争は負けるだろう、だが私はベルリンを離れるくらいなら頭を撃ちぬく」

こんな最期の日々、もう飲むしかない

その後はもう滅茶苦茶です。

ヒトラーは完全にメンタルがブッ壊れており、ものすごい勢いで浮き沈みします。
「戦争は負けだ」モードと「今に戦況がひっくり返りドイツが勝つ」モードの繰り返し。
「逃げたい奴は勝手にしろ」としておきつつ、終戦に向け動こうとする者は逮捕。
それでいて本人の中では、『名誉の自殺』計画がしっかりと進んでいる。
彼が戦争に出した兵士たちは、死に方やその場所なんて選べなかったのに。

残される人々にしてみれば、メンヘラに付き合って共に死ねと言われているに等しいわけです。
ナチズムの理想を心から信じた者は、共に殉ずる覚悟に憑りつかれてしまっています。
いい加減目覚めた者も、ヒトラーに命を捧げたという建前がある以上、ヒトラーがここにいるなら逃げ出すことはできません。

何日後か分からないが、もうすぐ確実に自分の人生は終わる。
とても酷い目に遭った上に殺されることだろう。
そしてそれは、メンタルがやられた上司の下にいる以上逃れようのない事実。
さて……どんな酒を飲みますか。

私ならストロングゼロを飲みます。
記憶が無くなるまで飲んで現実逃避しないとやってられません。

ナチス高官は『ジャガイモ酒・アクアヴィット』で現実逃避した!?

実際に映画を見ていると、死を待つしかない高官たちが、テーブルに鬼のような量の酒を置きガバ飲みしているシーンがあります。
実際にこんなことがあったかどうかは正直史実として微妙らしいのですが、正直分かります。こんなん飲むしかないわ。

当然ですが1945年にストロングゼロはありません。
ですからテーブルの上には、ワイン等の他にいかにも強そうなスピリッツが載っていました。
いかにもキマりそうですが、これは一体何という酒なのでしょう?

ハッキリと答え合わせはできませんが、どうやらアクアヴィットと呼ばれる蒸留酒である可能性が高いようです。

アクアヴィットは『ジャガイモ酒』!?

アクアヴィットとは、ドイツの他スウェーデン、デンマーク、ノルウェー等で作られているお酒です。
名前はラテン語の「aqua vitae」すなわち「生命の水」を意味する言葉が変化したもの。
酒クズのネーミングセンスじゃねぇか。

その原料というのが、なんとジャガイモ
ジャガイモをいい感じに発酵させて蒸留したものに、ハーブ類などで香りづけをして作るそうです。
日本ではあまり馴染みがないですが、北欧では代表的な酒のひとつなんだとか。

ドイツのアクアヴィット『ボマールンダー』飲んでみた!

さて、そうと聞いたら私とて飲まずにはいられません。
というわけで、早速注文してみました。

今回はドイツに思いを馳せるということで、ドイツ産のアクアヴィット、ボマールンダーです。
1760年から作っているということですし、これはひょっとすると本当にナチス高官たちも飲んでいたかもしれませんね。

冷凍庫でギンギラギンに冷やし、ストレートで行くのが本場のやり方だそうです。
それでは早速キメてみましょう。

おおっ、これはかなり好みが分かれそうな味です。

てっきり芋焼酎みたいにジャガイモの香りがもわっとするのかな? と思ったのですが、ジャガイモっぽい味は全然分かりませんね。
やはり衝撃を受けるとしたら、この圧倒的ハーブ感ではないでしょうか。

口に入れた瞬間、高度数の蒸留酒的な刺激と共に、口や鼻へぶわっと広がるこの香り。
中心となっているのはキャラウェイ(ヒメウイキョウ)とアニスというハーブだそうです。
圧倒的なハーブの香りが口を通り過ぎた後は、ほんのりとした甘さとちょっとした苦みが控え目に口に残ります。

ハーブ系のお酒が全然行けるよという方なら、抵抗なく飲めるでしょう。
私もハーブ系のお酒は平気な方なので、折に触れて飲みたいものです。

このお酒は、魚介類との相性が抜群だと言われています。
オイルサーディンやアンチョビ、あるいはセブンで売っているサバのオリーブオイル漬けなんてお供にどうでしょうか?

記憶を飛ばすしかない時もある

38度というこの高度数は、ショットグラスに1杯飲むだけでも人をカッと酔いの世界に誘います。
まして、映画のような勢いで飲んでいればなおのことですよね。

それでも、このガツンとキマった感覚が彼らにとって必要だったというのはよく理解できます。
処刑台の上から降りることができず、しかも刃がいつ落ちてくるかは分からない。
そうなれば、覚悟を持って最期を待ち続けることなんて常人にはとてもできません。
酒があるなら酒で感覚を麻痺させて、恐れや悔しさを麻痺させるしかないでしょう。

こうして強い酒をキメ、いつ訪れるとも分からない無為な死への恐怖から遠ざかる時間。
それも時には必要なのかもしれません。
皆さんもボマールンダーを飲んで、彼らの最期の数日間に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

※『ヒトラー ~最期の12日間~』は5月8日現在Amazonプライムビデオで会員無料視聴可能です。

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