映画『不思議の国の数学者』レビュー|ここが萌えだよチェ・ミンシク!数学オタクおじちゃんと高校生の王道ドラマ

ヤマダマイ

韓国を代表する俳優チェ・ミンシク。

これまで強烈な作品において、その作風に負けないハードな役を演じてきた人物です。例えば…。

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復讐に燃える怪物となった『オールド・ボーイ』とか…。

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逆に復讐の対象となるくらい残忍な殺人鬼になった『悪魔を見た』とか…。

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権力のためなら手段を全く選ばない『ザ・メイヤー 特別市民』とか…。
血の気が多かったりバイオレンスな雰囲気がすごい俳優さんです。

そんなチェ・ミンシクがおよそ3年ぶりに、4月28日(金)公開の映画『不思議の国の数学者』でスクリーンに帰ってきます!

これまで演じてきた役柄とは打って変わって、ちょっと偏屈だけど、数学をこよなく愛するおじさんを熱演していました。

暴力性の代わりに知性(とかわいさ)を兼ね備えた主人公…。これが新しいチェ・ミンシクなのか!?

ちなみに筆者は真剣に受けた数学のテストで0点を取ったり、数学の勉強がストレス過ぎて、爪の根本が膿んで生えてこなくなったりするくらい嫌いです。そういう人が書いた”数学もの”映画レビュー記事になります。

映画『不思議の国の数学者』概要

上位1%の天才が集まる超名門校に通う高校生・ジウ(キム・ドンフィ)は授業についていけず、担任からは普通高校に転校するよう勧められるほど挫折寸前だった。

ある日、寮のクラスメートにせがまれ夜の校舎に忍び込むと、脱北してきた謎多き警備員ハクソン(チェ・ミンシク)に見つかってしまう。学校はジウに一カ月の退寮処分を下し、行く当てのなくなったジウは、ひょんなことから一晩だけハクソンの寮に泊めてもらうことに。

翌朝、学校で数学の宿題を見ると、ハクソンが難問をすべて全問正解で解いていたことを知る。

学校では期末テストの代わりに、超難問ばかりを出題する「ピタゴラス・アワード」の開催が決定。数学が苦手なジウはハクソンに数学を教えて欲しいと頼み込む。

試験や成績に全く興味のないハクソンは、しぶしぶジウに数学を教える。実は彼の正体は、学問と自由のために脱北してきた、天才数学者だった。

数学本来の面白さ、奥深さを教えるハクソンだが、彼にはまだ誰にも話していない過去があった。そしてジウと出会ったことで、ハクソンは思わぬ形で自分の過去と向き合うこととなるーー。


謎多き天才数学者をチェ・ミンシクが熱演するほか、『SEOBOK/ソボク』のパク・ビョンウンがジウの担任で数学の教師、ドラマ「夫婦の世界」のパク・ヘジュンがハクソンなど脱北者の支援者として出演しています。

数学を通して伝えたいこと(とチェ・ミンシクの萌えポイント)

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本作は何かと答えが重視される「数学」を通して「本当に大切なのはその過程であり、答えではない」ことを伝える王道なヒューマンドラマとなっていました。

数学を親の仇ぐらい嫌っている筆者でも十分感動できたので、勉強嫌いな人でも楽しめます。

そもそも映画と数学は相性の良いジャンルのひとつ。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』しかり、『博士の愛した数式』しかり…。さらにはインドの数学者ラマヌジャンを主人公にした『奇蹟がくれた数式』などいろいろあります。

これらの作品も、数学を通して人との繋がりや、人生において大切なことを教えてくれる作品たちです。

『不思議の国の数学者』も例に漏れず、脱北した数学者と挫折寸前の高校生の絆や人生観を描いた良作です。

そして、個人的にはこれまでのチェ・ミンシク出演作を見ているぶん、この作品で垣間見た彼(ハクソン)の“萌えポイント“を押していきたい…!

そこで簡単にですが、今作のチェ・ミンシク萌えPOINTを5つまとめてみました!

萌えPOINT①イチゴ牛乳が好き

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「嘘だろ…」と思わず息をのんだ設定のひとつ。

ハクソンはなぜかイチゴ牛乳を好んで飲んでおり、自宅の冷蔵庫の中はほぼ何もないのに、イチゴ牛乳だけは買い置きをしています。

ビールでもコーヒーでもない。数ある飲み物の中でもイチゴ牛乳…。チェ・ミンシクの過去の役柄とか関係なく、ビジュアルとのギャップがすごいです。

ちなみにハクソンは授業料と称して、ジウからイチゴ牛乳をもらって数学を教えています。

萌えPOINT②スマホと添い寝

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スマホを持たないほどかなり質素な生活をしているハクソン。一方、数学だけでなく音楽も好きなハクソンは、ラジカセでクラシックを聴いていました。

そこでジウがスマホでクラシックを聴かせてあげると、目を丸くして、しまいにはスマホを枕元に置いて添い寝をするではありませんか。

「孫にスマホを教えてもらうおじいちゃん」みたいな構図もまた可愛さを増し増しにしています。

萌えPOINT③JKに甘い

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(※メイキング映像です。)

ハクソンの現職が夜勤の警備員なので、校舎に忍び込んだジウには罵声を浴びせるなど、かなり偏屈で厳しい一面を見せることが多いです。

ところが、ジウのクラスメートであるJKには、そういうことはしないです。声も荒げなければ、素直だし…。顔には出していませんでしたが、たぶん職場とかでは恐れられているけど、孫とか滅茶苦茶甘やかすタイプ。

萌えPOINT④オタクむき出しで生徒との温度差が凄い

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作中では随所でハクソンの「数学愛」が炸裂します。数学との向き合い方を語る様子はさながら「ボールは友達、こわくない」的なアレに通ずるものがありました。

また「数列はこんなに美しい…!」とキラキラした瞳と演出で熱弁するシーンはみどころのひとつ。黒板に書かれた数式が輝いていました…。

しかし、ジウは試験のために数学を学んでいるだけなので、温度差が凄いです。塩対応なジウに対して、ちょっと寂しそうなハクソンおじちゃんでした。

萌えPOINT⑤めっちゃピュアな涙を流す

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ネタバレになるので多くは言えませんが『悪魔を見た』ではあんな血も涙もない役を演じたチェ・ミンシクが、ものすごくピュアな涙を流すシーンがありました。

正直いろんなギャップ萌えをピックアップしてきましたが、ここが一番衝撃デカかったです。

学歴社会にチェ・ミンシクがモノ申す!

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数学者を演じるチェ・ミンシクですが、大切なのは数学の答えではなく、難題を解いていく過程こそが大切だと説いています。

それはさながら、試験の結果で将来が決まる韓国の学歴社会を批判しており、本当に人生で大切なことは何かを考えさせてくれる作品です。

ハクソンが脱北した理由にも、数学を通した人生の価値観が大きく関係しており、壮絶な過去を経験した彼だからこそ「人生の方が数式よりよほど複雑」ということばに重みが出ます。哀愁漂うチェ・ミンシクの演技も必見です。

ちなみに本作は映倫(一般財団法人 映画倫理機構)で新設された「次世代への映画推薦委員会」の推薦作品に選ばれています。

次世代を担う人に観て欲しい映画、という思いで選ばれたこともあって、ハクソンのメッセージも説得力を増していました。

【ガチ数学0点ライター目線で見る】登場する数学に関しては…

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高校時代、まじめにやって0点を取った筆者から見て、本作に登場する数学に関しては、やっぱりはじめて聞くワードばかりでした。

「リーマン予想」とか「うんたら公式」とか…。実在する公式や予測が登場しますが、調べてもさっぱりです。


(↑)wikiの「リーマン予想」ページ。簡単に紹介しようと思ったけれど、マジでさっぱりなのであきらめました。右下にあるグラフの点がぐるぐる回っているのは面白いのでぼーっと見るのに最適です。


登場する問題によってはちゃんと解説してくれますが、自分が「え?…えっ」となっているときに主人公が「そんなの小学生の問題じゃないか!」と言ったときは、下手なホラーより血の気がサーっと引いていくのを感じました。

さらに作中では円周率の数字を音階に置き換えた(…?)「πソング」なるものが登場し、その音階をチェ・ミンシクがピアノで演奏します。

聞きなれないワードや「円周率を音階って??????」となっても、基本的に作品の伝えたいことはしっかり分かるので大丈夫です。

上記でも書いた、韓国における学歴社会を批判する(学歴よりも大切なことを伝えたい)メッセージ性は非常に胸に刺さります。

学歴だけではありません。いい仕事に就いて稼いで、社会的地位を得ることが本当に大切なことなのか?それは果たして本当に自分の意志なのか?周りの価値観に流されているだけではないのか?

このメッセージを”画”として伝える上で、チェ・ミンシクのキャスティングは最高だと思いました。

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(↑)作中では数学の出題者に対してもの申す場面もありました。個人的には「ポケモンSV」でタイム先生の授業を受けて、テラバーストした人にこそ見てほしい作品だと感じます。プレミアボール1個がそんなに大事ですか?(怒)

まとめ

3年ぶりにスクリーンに帰ってきたチェ・ミンシクが(役柄とはいえ)すっかり丸くなっていたこともあり、過去作の役柄とのギャップがとても萌える新境地に突入していました。JKに驚いたりしてますからね。あんなに驚かす側だったのに…。

今後はこうした作風がチェ・ミンシクのスタンダードになっていくのでしょうか。それはそれで目が離せないなと思わせてくれる作品でした!

映画『不思議の国の数学者』作品情報

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【CAST&STAFF】
監督:パク・ドンフン
出演:チェ・ミンシク、キム・ドンフィ、パク・ビョンウン、パク・ヘジュン、チョ・ユンソ

2022年/韓国 117 分/シネマスコープ/DCP5.1ch/日本語字幕:朴澤 蓉子/原題: 이상한 나라의 수학자 英題: IN OUR PRIME/配給:クロックワークス

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公式HP:https://klockworx-asia.com/fushigi/

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