以前、映画『アナザーラウンド』に登場する0.05%の検証したライターのヤマダです。検証記事を書いたときは本編をまだ観ていませんでしたが、この度本編を観ることができました!
一言でいうと『アナザーラウンド』はお酒をテーマにした人生賛歌。「先の見えない人生に不安…」「人生何が起こるかわからなさ過ぎて怖い…」なんて人にこそ見てほしい最高にアガる作品だったのです…!ありがとうマッツ!ありがとうお酒!
今回は映画『アナザーラウンド』の魅力を(シラフで)書くと同時に、執筆した検証記事と実際の本編の内容を比較してみます!
映画『アナザーラウンド』概要
【あらすじ】
マッツ演じる冴えない高校教師とその同僚3人は、ノルウェー人哲学者の理論を証明するため、仕事中にある一定量の酒を飲み、常に酔った状態を保つというとんでもない実験に取り組む。すると、これまで惰性でやり過ごしていた授業も活気に満ち、生徒たちとの関係性も良好になっていく。同僚たちもゆっくりと確実に人生が良い方向に向かっていくのだが、実験が進むにつれだんだんと制御不能になり…。(公式サイトより引用)
酒が強いか弱いかなんて関係ない!人生モヤってる人は観てほしい!
本作は”お酒映画”かと言われるとちょっと違う気がします。人生を上向きにしたい中年男性4人がお酒の実験を通して、人生とどう向き合うかを描くヒューマンドラマの要素が強いです。
人生なんて辛いことや嫌なことばかり…。だからちょっとくらいお酒に逃げたっていい…。でもそれで解決にするのではなく、向き合うこと自体が大切だと教えてくれました。
とはいえ、いわゆる“中年の危機”を迎えたおっさん4人が酒の力で人生アゲていこうとする姿は可笑しくもあります。自分の子どもに口酸っぱく説教していたことを酔った自分がやらかす場面なんて、下戸からすれば死ぬまで他人事として笑えるコメディです。
オープニングで高校生(デンマークは地域によって16歳から飲酒が認められる)が馬鹿みたいに酒を飲んで、人の迷惑顧みずに電車で騒ぎまくるパリピシーンも最高。日本だったら「イッキ飲みだろ!」って絶対怒られそうなことがデンマークのお酒文化としてメジャーであることにも驚き。日本では絶対にマネしないでほしい「酒を大量に飲んだり吐いたりしながら湖の周りをレースする」場面は必見です。マジでマネしないでほしいので…汗
監督の制作背景を知ると、”人生万歳度”マシマシ
「酒飲んで人生上向きになりゃ苦労しないよ…」と思うかもしれませんが、監督のトマス・ヴィンターベアは『アナザーラウンド』の撮影中に、娘のアイダを交通事故で亡くしています。(参照URL:https://front-row.jp/_ct/17448695)
もともと娘のアイダも映画に出演する予定だったそうですが、監督はこの悲劇を受けたことで、あえて人生を肯定するドラマに脚本を修正しました。
こうした背景を知ったうえで本作を観ると、この映画が持つ説得力をビシビシに感じられます。娘を喪った監督でさえ、作品を完成させることで人生と向きなおれたのか…なんてことも考えられ、本当に説得力のすごい人生賛歌となっていました。
世代の垣根を越えて酒を飲もう!
「中年の危機」というと、『アナザーラウンド』は若者に刺さらない内容では?と感じるかもしれませんし、実際高校生と主人公たちのジェネレーションギャップも描いています。
ただ、悩みを抱えているのはおっさんだけじゃない!若者は若者なりに悩んでいて、そんな時に大人が酒を勧められるのもデンマークのすごいところです。
そして(お酒の力を借りつつも)みんなが人生を最高に楽しんでいる場面では、高校生も教師も関係ない盛り上がりがそこにはあり、まさにアンチ・ジェネレーションギャップを痛感した作品でした。中年が若者に人生の説教をたれることもなく、若者が中年の陰口を言うこともなく、皆が楽しくてアガる空間がそこにはあったのです…。
あとマッツ・ミケルセンが出し惜しみに出し惜しんだジャズバレエも必見です。この映画、応援上映みたいに発声ありの上映とかニーズありそうですけど、実現したら凄そう…。
【おまけ】検証記事と映画本編の答え合わせ
※ここからは前回執筆した0.05%の検証記事と映画本編の内容が実際にあっていたかを比較します。結末に関するネタバレはありませんが、念のためご注意ください。
検証記事で書いた筆者の予想
オンライン試写があったのにまんまと機会を逃した状態で執筆した、「下戸でも0.05%の検証は成立するのか」という記事。未見ゆえに、作品の内容に関してはすべて予想で書くという体たらく…。ライターとしての戒めもかねて、ここで実際の本編と検証記事での筆者考察がどこまであっていたのか、比較にお付き合いいただけると幸いです…。
【主な考察ポイント】
1.アルコール度数をあげる演出は、同じ飲酒量では酔いが弱くなり仕方なくアルコール度数を上げざるを得なかった。
→全然違いました。予告編でどんどん度数の強い酒を飲むような演出がありましたが、普通に「もっと血中濃度が上がれば検証結果もいいんじゃね?」という割と安直な理由です。いい大人が4人もいるんだから、そんなことしないだろ…と思ったら、そんなことしかしていませんでした。中年を買いかぶりすぎたようです…。
2.「アルコールを問題解決の道具にするべきじゃない」というメッセージ性
→これは正解でした。酒を完全に毒として表現するのではなく、「毒にも薬にもなる」メッセージ性をはらんでいます。とはいえ、すでに監督などのインタビューでも「お酒がメインの映画というわけではない」とあったので、正解して当たり前といえば当たり前…。
3.“0.05%=ほろ酔い”の定義は人による
→これは下戸である自分が検証する際にも疑問に思った点です。作中でも一応言及はされていましたが、それはあくまでもっと酔っ払いためだけの口実。本編の検証は三章に分けられており、自分が検証で行った内容(血中濃度ではなく症状で行う)は厳密に言うと「第二章」に該当しています。0.05%を絶対のボーダーラインに定めていたのは「第一章」です。
4.人知れず飲酒する方法の紹介
→一番恥ずかしいのがこちら。ドヤ顔で「人知れず飲酒するならこの方法だ!」と、わざわざほかの配給会社の作品まで引っ張り出しておいて、本編では4人とも息をするのと同じようにこの手法で酒飲んでいました。『自己責任』とか偉そうに書いているのホント恥ずかしすぎる…。酒があったらがぶ飲みしたい…。(あと0.05%を維持するために、授業中にお酒を飲む場面が高校生の早弁と同レベルで笑えました)
まとめ
本編を観ると、改めてお酒の好き嫌いは映画の面白さに影響しないと分かりました。酒が強かろうが弱かろうが、この映画の魅力は変わりません。個人的には今年公開された映画の中でダントツのエモさでした!
あとコロナが収束したら「発声・飲酒OK」ののんべえ上映とかしたら面白そうだなあ…。
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