【再見再考】ロッキー【ウルトラスーパーマスターピース】

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パッパーパパパ パパパーパパパ……

ムービーナーズ読者の皆さん、アイウォンチュー!始条 明(しじょう・あきら)です。
タイトルだけは誰でも知ってる超絶大傑作を改めて観てみよう、という本連載『再見再考!ウルトラスーパーマスターピース』第三回は……ジョン・G・アヴィルドセン監督、主演と脚本をシルベスター・スタローンが務めた『ロッキー』(1976)!

 (c)1976 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved

フィラデルフィアに暮らすロッキー・バルボア(シルベスター・スタローン)は、ボクサーとしての才能がありながらも長年それを活かせず、場末の賭け試合や借金の取り立てで日銭を稼いでいた。近所のペットショップで働く内気な女性、エイドリアン(タリア・シャイア)と惹かれ合うロッキーの元に、世界ヘビー級チャンピオンであるアポロ・クリード(カール・ウェザース)とのドリームマッチのチャンスが舞い込み……

ザ・ボクシング映画!あのスタローンの出世作!何者でもなかった三流ボクサーの男が血のにじむようなトレーニングで打倒チャンピオンを目指す!エイドリア〜〜ン!!!

……みたいなね。なんか……超名作映画って、往々にして雑〜なイメージで語られやすいトコありますよね。特にこういう肉体派の名作というか……格闘技ものとかスポーツものとかって、特にあらゆるスポーツを憎むナードの皆さんにおかれましては……若干 敬遠しちゃう部分もあるんじゃあないでしょうか。

あとこの『ロッキー』に関しては、シリーズ何本あるんだよ!?ってのもあるか。先に言っちゃうと2、3、4、5、ザ・ファイナルとあって、次世代の戦いを描いた『クリード』シリーズが2本(で クリードの3本目が2023年の5月に日本公開予定)。えらい多いけど全部しっかり面白いから全部観よう

それはそれとして、第一作『ロッキー』の話。
俳優としてほぼ無名だったシルベスター・スタローンがほうぼう回って持ち込んだ企画で、この映画の大ヒットで彼自身も一躍スターダムに……とか、ベトナム戦争が影を落とす、暗く苦しいアメリカン・ニューシネマの時代を塗り替えた……とか、華々しい伝説と共に語られることも多い名作であることは確かなんですけども。それ以上に人間ドラマとしてスゲ〜〜面白いんですよ。

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まずはやっぱり、主人公ロッキー・バルボアの魅力的な人物像ですよ。穴の空いたタンクトップを着てブタ小屋みたいな部屋に住み、腕っぷしの強さから借金の取り立て人をやりつつも……根が優しいせいで強気に出られなかったり、近所の小さな店で働く女性に猛アタックを仕掛け……るというか、足しげく店に通ってはしょぼいジョークを飛ばしつつ、カメのエサをチビチビ買うといういたたまれなさ。
で……じゃあそれが「男(オトコ)じゃねえ」みたいに、真のオトコならもっとガンガン行くべし!みたいに、描かれるか、というと……全然そんなことはないんですよね。むしろそういった心優しさこそがロッキーという紳士の魅力として描かれていて。

突然舞い込んだドリームマッチのチャンスに挑むロッキーの目標も、打倒チャンピオン!じゃあないんですよね。「15ラウンド戦って……ゴングが鳴ってもまだ立っていられたら……ゴロツキじゃないことを証明できる」というセリフの通り、ロッキーは勝つためでなく負けないために戦う。「マイナス」から「ゼロ」に向かうための物語なんです。

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そんなロッキーの対照的な存在として、ロッキーの親友でありエイドリアンの兄・ポーリーは……酒に溺れて怒鳴り散らし、みすぼらしい自分の存在を打ち消すように虚勢を張りながら生きている、いわゆる“有害な男性性”に囚われてしまった弱い人、として描かれているのもポイント。

……で ありつつ、じゃあ彼を悪者として描くのか?というと そうもならず。ポーリーの弱さや悔しさまでも含めて受け止めてやることで、友としての絆がより強固に結ばれていくんですな。

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この『ロッキー』という映画、やっぱり“敬意”の物語だと思うんですよね。お互いに殴り合うボクシングというスポーツをやる上で、まずやっぱり必要 かつ 戦いのあとに残るものとは何か……っていうと それは相手に対するリスペクト、敬意なんじゃあないかなと。
『ロッキー』の劇中には、ロッキーをとりまく様々な人間が登場するんですが、彼はそのそれぞれに”敬意”を払い、払われていくんです。親友であるポーリーはもちろん、ロッキーのトレーナーとなる老人ミッキーには、彼の人生経験に対して”敬意”を払いますし……対戦相手となる世界チャンピオン、アポロ・クリードにすら、ショーマンとして華やかなパフォーマンスを見せることで後ろ指をさされるアポロに対してすら「奴はピエロじゃねえ、チャンプだ!てめえの腕とガッツでベルトをもぎ取った」と、最大級の敬意を払う。

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あとは何たって、ロッキーの最愛の女性であるエイドリアンに対する接し方にも、彼なりの”敬意”が表れまくるのが真摯だし、ほほえましいラブロマンスとしても楽しめるのが本作のイイところ。
二人をくっつけようとするポーリーの(なかば無理矢理な)後押しを受けたりしつつも、ロッキーはあくまでエイドリアンの意志を尊重し続けるんですよね。毎日のように彼女の職場に通いつつも、決して強引に誘おうとはせず……とうとう彼女を自宅に招く時ですら、エイドリアンが自分から入ってくるまで、家の入口でウロウロ待ちながら食い下がるし。

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はじめてのキスのタイミングにあっては「なあ……キスするぜ」と同意まで取る始末。そのぶっきらぼうな不器用さがまたロマンチックにも見えてくるんですな。
個人的なハイライトは、感謝祭の日にエイドリアンが焼き上げた七面鳥を、キレたポーリーが庭に投げ捨ててしまった後の場面。感謝祭なのにひどい、と泣くエイドリアンに、「どうせ俺、七面鳥、好きじゃねえから……」「君には何でもオレにはただの木曜日だ」と励ますシーン。ぶ ぶ 不器用すぎる……

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と こういった人間ドラマとしての良さもありつつ……もちろんながら、ボクシング映画としても歴史に残るクオリティなのも注目ポイント。

ワタクシ恥ずかしながら、いやもう ホントに お恥ずかしながら、「ボクシングって別に……あんなフカフカなグローブつけて殴り合うんでしょ?痛いの?」などと思っていた時期が……ありました。超恥ずかしながら。
それがもう、この『ロッキー』ね。コレを観て、認識が、180°、いや540°は変わりました。あんなペラペラなグローブをつけただけの拳が、なんならいつもよりデカいサイズに大変身してバンバン飛んでくる!怖すぎ!!!

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スタローンとカール・ウェザース(アポロ役)の鍛え上げられた肉体から繰り出される鋭いパンチ、アゴやボディに炸裂する時の「あ、入った」と感じられるリアリティ、加えてそれを盛り上げる迫真の実況(特に日本語吹替版、メチャメチャ本物っぽくてすさまじい臨場感)!本当に手に汗を握りながら観てしまう名勝負の大一番です。

ちなみに……推しキャラはマフィアの親分、ガッツォさん。なんだかんだ非情になりきれないロッキーをかわいがりながら、部下が彼のボクシング人生をバカにしようとした時はそれを諌めたりとか。ガッツォさんもまた、ロッキーにひとりの人間として敬意を払いつつ……だからこそ彼もまた敬意を払われる、という。良いキャラしてるんです。全員『礼』だッ!

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