赤いガンダムVSフリーザ軍?色々とアウトな韓国特撮『ガンダグファイター』

かに三匹

『ガンダグファイター』は、1992年の韓国特撮作品だ。ビデオスルーで全三巻のシリーズだ。日本語にすると『度胸ファイター』という意味となるだろう。
第一巻は「ルイス惑星の侵略者」、第二巻は「催眠術の女王ビューティ」、第三巻は「黒竜派一党との対決」というサブタイトルがついている。

主人公の少年刑事のペク・イルタンは事故により重傷を負ったが改造手術によりガンダグファイターに変身する能力を身に着けた。彼はその能力で様々な悪と戦うのだ。

『ガンダグファイター』、その特徴を一言で言えば様々な要素をぶち込んだ寄せ鍋のような作品なのである。
まずペク・イルタンという主人公の名前は『月刊コロコロコミック』に連載されていた小林たつよしによる日本の漫画作品『リトルコップ』の韓国で出版された海賊版の主人公の名前から取られている。

主人公の名前からして、もう、なんとも、ややこしいぞ。この作品、大丈夫なのか? 早速心配になる。

そしてペク・イルタンが使う武器は日本の特撮作品『特警ウインスペクター』に登場するギガストリーマーが、そのまま使用されている。劇中もウインスペクターのフッテージを使用している(おそらく無断流用だろう)。

さらにペク・イルタンが変身するガンダグファイターの姿は、赤いSDガンダムだ。その口には二本の牙が生えており(正義の変身ヒーローのデザインじゃねえよ!)オリジナルのSDガンダムにあった可愛さを台無しにしているのだ。なお劇中でも、その姿はガンダムと呼ばれている。

戦う相手も曲者だ。その姿は日本の漫画作品である『ドラゴンボール』に登場するフリーザ一味の戦闘服のコスプレである。

なおペク・イルタンの役者は韓国でいつの間にか実写化されていた『ドラゴンボール』などで主演を務めたソ・ホンテなのも、ドラゴンボールみを高めている。見方によってはドラゴンボールの悟空がガンダムに変身してフリーザ一味と戦うというメタな展開なのである。

このように『リトルコップ』に『ドラゴンボール』に『SDガンダム』と当時人気のあったものを、どんどん取り入れる柔軟さ。ぜひ見習いたいものである(本当に見習っちゃだめだー!)。

そして韓国特撮にありがちなことだが、作品は低予算であることが見え見えである。着ぐるみはガンダムだけで、敵の予算はなかったのか、出演する敵はコスプレやメイクで怪人感を演出しているだけだし、敵を撃破した際の爆発シーンを既存のフッテージで使いまわしているというシーンもある(これがなんとも自然破壊しているようにしか見えない)。それどころか某日本特撮作品の巨大な敵が登場する特撮シーンを使いまわして、編集でガンダムと戦っているように見せかけているシーンすらある。

だが、その分、役者が危険なアクションを見せてくれるのもガンダグファイターの魅力だ。

例えば火薬の量が多いのは特筆すべき特徴だ。しかも火薬にガソリンを混ぜているのか、赤い派手な爆発が多い。飛び散った火がガンダグファイターの身体に燃え移ることもある。火が燃えているままアクションをするガンダグファイターの姿を観ていると中の人は大丈夫なのかと心配になるのだ。

大陸である韓国だけに冬の寒さも大変きつそうだが、雪の積もる中撮影しているシーンもある。それだけならまだしも、氷が張った(厚そうだ!)池の中に敵の役者がダイブするシーンもある。心臓は大丈夫なのか!? と観ていて心配になる根性だ。

なお危険なシーンという訳ではないが、ガンダムの着ぐるみは大柄なので、狭い所は通ることが出来ず、隙間から逃げた敵を追いかける事が出来ず、そのまま何もできないというシーンもある。これはギャグとして笑っていいんでしょうか?

また土木工事機械を使ったアクションもある。第三巻では敵がブルドーザーに乗って襲ってくる。ガンダグファイターの着ぐるみは見るからに動きづらそうだ。そんな着ぐるみを身につけて至近距離でブルドーザーと戦うという演技。非常に危険であることが分かる。それなのに襲って来るブルドーザーに対して立ち向かうガンダグファイターは素敵だ。

ドキドキ過ぎる。

CGが使えない時代は無茶なことをしていたのだなあ……。

さらにワイヤーアクションも多用される。地上十数メートルに吊り上げられる役者たち。こうした場面も危険な香りがする。

といった具合に寄せ鍋的に様々な要素が集まった作風に、危険なアクションが加わり韓国特撮の中でも独特なテンションを持った異様な作品となっているのだ。

監督であるワン・リョンは韓国で作られた実写版の『ドラゴンボール』や『北斗の拳』、『幽遊白書』などで知られている。韓国特撮『ファイティングマン』の監督でもある。武道俳優出身の人物である。なので意外と格闘シーンは本格的だ。

実写版作品群は韓国が著作権を保護するベルヌ条約に加盟する前の作品だが著作権はどうなっているんだ?
と現地でも議論を呼んだのだという。

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