『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』レビュー/TVシリーズにノれなかった人にこそ見て欲しい傑作

『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』

あらすじ

2019年9月から20年8月まで放送され、令和仮面ライダーシリーズ1作目となった「仮面ライダーゼロワン」の劇場版。テレビシリーズ最終回に突如登場して反響を呼んだ謎の男エスが、最強の敵として飛電或人/仮面ライダーゼロワンらの前に立ちふさがり、世界滅亡までの60分間のタイムリミットの中で戦う或人たちの姿が描かれる。世界滅亡を企み、信者を集めて「楽園ガーディア」の創造主と名乗るエス/仮面ライダーエデン。「神が6日で世界を創造したのなら、私は60分でそれを破壊し、楽園を創造する」と宣言するエスは、数千人の信者とともに世界同時多発テロを引き起こす。多くの人が倒れ、世界中が大混乱に陥る中、エスを止めるべく或人が立ち上がり、不破諫/仮面ライダーバルカン、刃唯阿/仮面ライダーバルキリー、天津垓/仮面ライダーサウザー、そして「滅亡迅雷.net」の仮面ライダーたちも、それぞれが真相を究明し、世界を救おうと奮闘する。

令和初の仮面ライダーとして多くの注目を集めた「仮面ライダーゼロワン」のTV最終話から繋がる最終章が遂に公開された。
本作は本来2020年7月公開予定の「夏映画」だったが、新型コロナウイルスの影響により12月公開となり、例年のスーパー戦隊作品との同時上映ではなく、現行の「仮面ライダーセイバー」短編作品との併映となった。

伊藤英明演じるエスと名乗る男が率いる武装集団が謎のガスを散布するテロ行為を世界中で行うというスケールの大きい内容、かつ映画内の60分のタイムリミットが実際の時間とリンクする形式が特徴的なライダー映画だったが、これが本当に面白かった

ゼロワンの問題点を解消し、シンプルに楽しいヒーロー活劇に

ゼロワンのTVシリーズは、キャラクターの魅力や現実に即したテーマ「人類とAI(テクノロジー)の共存」が面白い作品だったが、その反面、作品のテーマとその描き方の食い違いや、そうした表現がヒーローが活躍する物語としての面白さに直結しなかった部分が目立ってしまった作品でもあった。

現実で話題になることの多い、人間が行う仕事をAIが取って代わることで起こる弊害や劇中の重要な要素「人間の悪意」と物語上の展開がうまく噛み合わなかった結果「お仕事5番勝負」といった展開が生まれてしまったことが代表的だが、テクノロジーと人類の共存、テクノロジーが人類に与える恩恵について「仕事・職業」にフォーカスし過ぎた結果、テーマと表現のブレが生まれたり、ヒーローものとしての純粋な面白さが感じづらかった点が非常に惜しい作品だったゼロワン。
しかし、劇場版『REAL×TIME』では、ヒューマギアとは異なるテクノロジーが新たに登場し、それを利用したテロリストに人類とヒューマギアが協力して立ち向かうという非常にシンプルな内容ながらゼロワンのテーマを上手く描いている。

スーパーヒーロープロジェクト (C) 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

「人間の悪意」の体現として新たに登場する武装集団(仮面ライダーアバドン)の実態が非常に面白く、後述する現実に即した問題点を描き出す。
それに対抗する、人類(仮面ライダー/AIMS)と滅亡迅雷.netの共闘は、TVシリーズを全て観た視聴者へのご褒美のようなもので、シンプルに熱く盛り上がる展開を楽しめる。

スーパーヒーロープロジェクト (C) 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

作品テーマの描き方・フィーチャーする点をTVシリーズとは変えることで、ゼロワンのテーマを総括し凝縮したうえで「カッコイイ」ヒーローの活躍を楽しめる作品として仕上がっているのと同時に、TVシリーズで描いた内容も昇華させた「その後の話」としても非常に面白い作品に仕上がっている。

杉原監督の手腕が光る、怒涛のアクションシーン

映画序盤で繰り広げられるテロ集団との戦闘描写では、仮面ライダーらしさを感じるアクションと、あまり仮面ライダーでは見られないようなアクションが共存しており、一気に引き込まれると同時にテロ集団の規模の大きさが描写され物語のスケール感が伝わってくる。

スーパーヒーロープロジェクト (C) 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

特に目を引いたのは、『仮面ライダークウガ』におけるゴ・バダー・バとの闘いを彷彿とさせるような激しいバイクアクションが盛り込まれたシーン。TVシリーズでは強化形態も登場せず不遇な扱いだった「仮面ライダーバルキリー」がその鬱憤を晴らすかのようなカッコイイバイクアクションを見せる。

スーパーヒーロープロジェクト (C) 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

また、敵組織は戦闘機も保有しており、躊躇なく銃撃してくる。
それに対抗すべく、素手で戦闘機にぶら下がるバルカンや、バーニングファルコンで高速空中戦を行う迅が描かれるシーンでは、空中戦の派手なカッコ良さと同時に、不破と迅の掛け合いも面白く、本編終了後ならではのキャラクター描写を楽しむことができる。

もちろん主人公ゼロワン(ゼロツー)特有の、まるで瞬間移動のような演出を取り入れた高速戦闘描写も健在で、仮面ライダーエデンとの闘いも見逃せない。

『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』やゼロワン本編で360度カメラを使用した演出を取り入れ、斬新なカメラワークやアクション演出に定評のある杉原輝昭監督による濃厚なアクションシーンも本作を大いに盛りあげている。

敵組織の描き方(ネタバレ注意)

ここからは敵組織の実態についてネタバレ内容を含むため、気になる方は読み飛ばすことを推奨します。

本作は伊藤英明演じるエスと名乗る男が画策したテロ活動が描かれるが、実動部隊として世界中でガスのようなものを散布する「仮面ライダーアバドン」が登場する。

劇場版仮面ライダー555の1万人ライダー部隊を彷彿とさせるような量産型の仮面ライダーだが、部隊を率いる隊長格の人物がビジュアルだけでもクセが強い

スーパーヒーロープロジェクト (C) 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

エスを信奉する信者として描かれる白装束の集団、その実態は「シンクネット」と呼ばれる破滅願望を持つ者が集うSNSのようなサイトで繋がる集団であることが中盤で明らかになる。

シンクネットのユーザーは、本作の物語の中心となるテクノロジーを用いて自らのアバターを実体化させテロ活動を行っており、ユーザー自身は自宅やネカフェなどでそのアバターを操作している。
現実の自身の姿と近いアバターもいるようだが、大きくかけ離れた姿のアバターも存在する。

近年、仮装世界をアバターで体験するネットサービスがVR技術の発展に伴いユーザー数を増やしていることも顕著だが、SNSやMMOなど以前より存在するサービスが多くの人にとって以前より身近なものとなっている。
仮想世界やインターネット上では、自分でキャラクター(外見的にも性格的にも)を作り、本来の人格とは異なる人格を演じることができる。
それは「なりたい自分になれる」ポジティブな働きと同時に、安全圏から他者を貶める・傷つけることや、ネット越しに向き合う存在を人間扱いしないようなユーザーの存在などネガティブな側面が多いことは否めない。

「ゼロワン」で描かれる悲劇の元凶は「人間の悪意」であり、本作ではその表現として、こうした近年発達したテクノロジー由来の悪意を用いており、テレビシリーズよりも身近で、共感できるものとなっているのも本作の見所の一つである。

まとめ

公開時期の変更など、例年とは異なる苦難がありつつも公開を迎えた『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』。
ゼロワン本編では消化不良だった点の解消や、「コレが見たかった!」と思えるような展開が多く非常に楽しめる内容となっていた。
また、滅亡迅雷.netの「滅・迅」は非常に活躍ポイントが多かったものの、「亡・雷」は出番が少なくやや残念だったなぁと思っていたところ、スピンオフ作品が発表されまだまだゼロワンワールドを楽しめることが明らかとなり期待が高まる。

ゼロワンのテーマと面白さを凝縮して描ききった『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』はテレビシリーズにノれなかった方にこそオススメしたい映画作品として仕上がっていた。

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