

前回、生まれて初めて『男たちの挽歌』を鑑賞し、「なんかちょっと変なトコロあるな」と思いつつ、男たちの不器用な生き方、哀しみ、凄惨な銃撃シーンなどには充分に心打たれ、楽しむことができました。
明くる日の昼、同じミニシアターには続編『男たちの挽歌Ⅱ』が上映されたので続けて鑑賞したのですが……。
いや えっ なんか変だなこの映画……。
いや……おいだいぶ変だな!?!?!?!?!?!?!
えっ!?!?!?! どうなってんのこの映画!?!?!?!?
無法のストーリー展開
前作の銃撃戦の末に服役中のホー。その恩師で、いまは足を洗ったロンに偽札製造の嫌疑がかかっており、ホーは捜査協力を求められる。
最初はメンツも気にして断るホーだが、弟のキットが潜入捜査していることを知ると渋々承諾。再会したロンはやはり潔白だったが、身内の裏切りに合い殺人犯に仕立て上げられ香港からニューヨークへ高飛びする……。
と、序盤のあらすじはこんな感じで……なるほど、まだ正気だ。いいストーリーだ。
兄弟の確執を乗り越えたホーに、恩師という新キャラを作ることで新たなドラマを提供し、そしてまたもや危険に乗り出す弟・キットをきっかけとして、前作とは違い「二人で協力して潜入捜査を進める」という捻りを加えている。真っ当な続編だ。続編らしい、いい発展の仕方だと思う。が、ここから徐々に本作は狂い始める……。
前作で偽札印刷所で働いていたオッサンが何故か再登場したと思ったら「前作の君たちの活躍をマンガにしてみたよ!」とか言い出すので驚いた。なにいい空気吸ってんだオッサン!?






さらにオッサンは「マークには瓜二つの弟がいたんだ!」と言い出す。なんでアンタがそんなこと知ってんだよ!?


と、いうわけでマークそっくりというかチョウ・ユンファそのものな弟、ケンが大登場。すげえ。剛腕すぎる。人気キャラを殺しちゃったので弟としてまた登場させる! ズルすぎるだろ! 『ガンダム00』のロックオン兄弟の元ネタってコレだったんですか?
で、このあたりから尺の使い方とか整合性とかが狂い始める。
ケンがニューヨークで経営してる店が現地のマフィアに因縁つけられるくだりはなんか長い……長くない? いつまでやるんですかこのくだり? いや、もちろんケンという新キャラの自己紹介パートとして必要なのはわかる わかるんだが……。なんか長くない!?




ケンの仲間たちがマークの伝説を知ってる風なのも妙だ。つまりケンもマークのいろいろを知っているということ? 足引きずって三合会の雑用係してた3年間も知らぬ存ぜぬでニューヨークでメシ屋やってたってこと? それとも偽札オヤジのマンガが全世界中でヒットして最近アメリカでも知られたとかそういうことなんだろうか……。
いっぽう、ロンさんは高跳びしたニューヨークで身を隠していた教会が敵の襲撃を受ける。銃撃戦に巻き込まれ旧友は死んじゃって子どもたちも撃たれ……と悲惨すぎる目にあって精神崩壊してしまう。


それはいい(良かないよ)んだけどなぜかそれをケンが助けにくる! 何故!?




なぜロンさんの弟分だったホーがその存在を知らなかったケンがロンさんの「過去」を知ってるんだ!?!?!?!
いや待て ホーはケンがマフィアに襲われる直前にケンに電話をかけていた。もしかしたらホーさんがケンに、ロンさんの保護をお願いしたのかもしれない……。




って思ってたのに帰国したらなにも知らない風だし!! 何!?!?
このあたりは正直剛腕 剛腕というか 剛腕は正直褒めすぎというかガバガバすぎて混乱したぞ!!! ケンの店のくだりを削ってこのへんの整合性合わせる努力をしてくれよ!!
ほかにもロンさんの娘はあまりに雑に殺されるし!
前作で「カタギとして生きるのが大事だ!」とか言ってたキンさんはめちゃくちゃ闇商売してるし!!


いやお話的には今回は、カタギとして生きる決意をしたホーとロンさん、警察のキット、ケンがそれぞれ巨悪に立ち向かう…という話なので「ヤクザに協力してるぜ!」って話にはなってないんだけど「高跳びの支援」とか「銃火器の供給」はどう考えてもカタギの仕事じゃねえよお! タクシー会社どうしたんだよキンさん!!


ロンさんの娘が死んだことについてはなんかあっさり流したのに対して


キットが殺されたら「復讐じゃあ!!!」ってなるのもなんか……いやわかるよ!? そういう話だもんね? 男と男の絆……黒社会……ハードボイルド……みたいな話ではあるんだけどなんか なんか全体的にレオンさんの娘とかキットの嫁さんとか女性陣の扱いがあんまりすぎると感じてしまうのは2026年に1986年の映画を見ている弊害なんでしょうか???
いやでもなんか チャーミングですよ いいとこいっぱいあるよ
なんか変! 雑! ってことばかり列挙してしまったが、じゃあ本作はクソ映画なのか? というと全然そんなことはない。むしろおもしろい……いや、そこに「変だろ!」というツッコミどころへのおもしろさが発生してしまっているのは否定できないし、変さを無視して「香港ノワール史に燦然と輝く傑作だ!」とか言ってしまうのも欺瞞すぎる(そもそも私個人は香港ノワールものを全然見られてないわけですが)。
が、例えばケンの快活なキャラクターは、どこか悲壮な雰囲気を常に携えていたマークに比べて渋さは足りないが非常に陽的で見ていて楽しい。どんなに危険な場所でも敵地のどまんなかでもユーモアを忘れてない生き方はいい意味でマークと対照的で、とても好感が持てた。


個人的にキットとふたりで「弟コンビ」みたいになっていたのがとても良かったので、もっとこの二人の絡みを見たかったなあ……という気持ちが湧いたし、そんなケンがキットを看取るのは短い時間のあいだにいいキャラといい関係性を構築できたな! と舌を巻いた。
なんかまったくストーリーに関わらないし名前も出ないグラサンがずっと最強の敵キャラなのもCOOLだし


キットの死とキットの子どもの誕生が連動して描写されるのも悲しくも美しい対比って感じで非常によかった。


マークが残した弾痕だらけのコートの穴をケンがグレネード引っ掛けるのに使うのもいいアイディアだ
そしてなによりもラストの銃撃戦!!


10分くらいずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと人殺してる!!!! ヤバすぎ!


もうこのシーンもあまりにもガバガバで、ホーさんロンさんとかまったく狙いがつけられてないんだけど撃てば撃つほど人が死ぬし、名前のないキャラが撃たれるためにドタドタ走りできて死ぬ! の繰り返しで冷静に見るとしょうもないと言えばしょうもないんだけど!


でももうこんだけ撃ちまくり死にまくり見せてもらったらしょうがないじゃないですか! 『コマンドー』のクライマックスにツッコミを入れはすれど、ケチをつけたりしないだろ? 「クレイモアの爆発すごすぎだろ!」はツッコミであって文句じゃないんですよ! 『男たちの挽歌Ⅱ』もそう!


仮に戦争だったらアウトな殺し方だと思う
ロンさんとキンさんが何発撃たれても死ななかったり……いやだって老兵ポジションとかさ、非戦闘員が撃たれたら「死んだ! なんてこった! この人でなし!」って思うだろ!?


最後の大修羅場だからド根性で命を繋ぎ止めてるんだよ! って描写にも見えるけどなんか「なんで死なないのッッ!?!?!」が強く出てしまった。でもいいんだ。銃撃しまくりでうれしいから……。


やはり正直前作に比べると粗がある。雑。変すぎるし一貫性とか筋が通ってるとかそういう美しさに欠けていると言わざるを得ない。が、しかしそれで良くない映画と切り捨てるには魅力がありすぎる不思議な映画でしたね『男たちの挽歌Ⅱ』は……。言うなればチャーミングな映画と言えようか。で、ここまで散々言っておきながら私は正直こっちのほうが好きです。すまんな、やんちゃな映画が大好きなんだ。
……そういえば両作ともハト飛ばなかったな……








