『KARATE KILL カラテ・キル』殺人カラテでUSAに殴り込み!【カラテ・マザーファッカー!】

誰もが知る伝統的武術「空手」

それに殺傷能力を加えた「殺人カラテ」を武器に、アメリカのカルト集団を捻り潰すアクションB級映画『KARATE KILL カラテ・キル』を観ました。

メインビジュアルを見ると「どうせ過剰な演出でしょ…」と思うかもしれませんが、『女体銃 ガン・ウーマン GUN WOMAN』(14)などを手掛けてきた監督の光武蔵人氏はロス在中。ほとんどアメリカで撮影を行っており、メインビジュアルまんまの世界観が繰り広げられています…!

あらすじ

幼い頃に両親を亡くし、妹・マユミ(紗倉まな)を守るために空手を極めたケンジ(ハヤテ)。彼はロサンゼルスに留学しているマユミの学費を送るため、バイトをいくつも掛け持ちしながら生活をしていた。しかしマユミが音信不通となり、妹の安否を確かめるため、ケンジは単身アメリカに降り立つ。そこでケンジは、マユミが「キャピタル・メサイヤ」と呼ばれるカルト集団に誘拐されたと知る。カルト集団は本物のスナッフビデオをネットに配信しており、ケンジはマユミを救うため、「殺人カラテ」を駆使してカルト教団に立ち向かう!

B級らしからぬ主人公の哀愁とストイックさがすごい

『KARATE KILL カラテ・キル』』を観て1番驚いたのが、主人公・ケンジの抱える哀愁とストイックなオーラが半端じゃないことです。

ケンジは空手の腕前が最強クラスにも関わらず、妹の学費のためにバイトを4つ掛け持ちするというスーパーアルバイター。それでもお金が足りず、バイト先の店長からお金をもらうというシーンは、開始数分にも関わらず胸が締め付けれます…。(店長が財布から気前よく全額渡すかと思いきや、1枚だけお札を財布に戻すもどかしさも含む)

(C)2016 TORIN, INC.

また、カツカツの状態でアメリカに飛んだせいか、敵のアジトを掴んでも足がないのでヒッチハイクをしている姿もまた切ない…。普通なら車でバーンッ!とアジトに突っ込んでもいいくらいなのですが。

ただ、こうしたケンジの哀愁もあって、彼の極限のストイックさがより引き立たされているのも事実。「おりゃー!」といった気合の掛け声もほとんどあげず、淡々とかつキレッキレの殺人カラテで、ギャーギャーやかましい敵陣を倒していく様は圧巻。こんなにカッコいい「口より先に手が出る」キャラはなかなかいないのではないでしょうか。

ちなみにストイックなケンジが、アメリカのバーでコーラを注文しているのは、ちょっとかわいいなと思いました。

ムカデ人間の”あの人”も出演!

アメリカでケンジが最初に出会う日本人青年を演じるのは、今や伝説的カルト映画『ムカデ人間』で、”先頭”を演じた北村昭博さん。「出会う」と書くとなんかフレンドリーですが、当時マユミが住んでいた部屋にいた事から、ケンジにボコボコにされます。

しかし噛ませ犬キャラといえば、1回ぶん殴られたらすぐ降参して情報をべらべら喋るものなのに、北村昭博さん演じる日本人青年は「殴られる→降参する→白状する→反撃する→殴られる」というプロセスを何度も続けます。全然折れない。いや、折れるんですけど立ち直りがクソ早い。結局1回も殴り返せないまま倒されちゃうんですが…。

(C)2016 TORIN, INC.

最後にはズタボロなのに、ものすごいシリアス顔で「そっちにやべえやつが行くぞ…」と仲間に伝えるシーンの説得力たるや。全然噛ませ犬の顔してない。

他の出演者にはケンジの妹・マユミを紗倉まなさん、「キャピタル・メサイヤ」に復讐を誓う女性・ケイコを亜紗美さんが登場するなど、B級ならではのエロシーンもきちんと入っています。出し惜しみしないおっぱ○が何度も拝める反面、何故か男性陣もやたら脱ぎたがります。

(C)2016 TORIN, INC.

ちなみに北村昭博さん演じる日本人青年は最初から最後までパンツ一丁でした。”お楽しみ中”でしたからね。これはしょうがない。

一方ケンジ役のハヤテさんはほとんど脱ぎません。1箇所だけ脱ぎますが、全然アクションとは関係ないシーンでした。殺人カラテの使い手は、裸の安売りをしないのだーー。

ありそうでなかった「殺人カラテ」というジャンル

(C)2016 TORIN, INC.

「殺人カラテ」の殺傷能力はすさまじく、打撃というよりは突き刺すタイプの刃物に近い破壊力を持っています。そのキレの良さは『ザ・レイド』(11)のシラットに近いものを感じました。ただし、『KARATE KILL カラテ・キル』でケンジは一切武器を使いません。全部素手で相手を倒し、殺します。さらには銃弾を避けたり、剣豪とガチンコバトルを繰り広げるなど、空手の既成概念をことごとく覆していました。

ちなみに冒頭のビジュアルに書いてあるキャッチコピーの「手(ティー)」とは、アメリカ人が発音しているとかではなく、空手よりも前に存在したと伝えられている、琉球時代の武術だそうです。

手(城之手)とは、空手が発祥する以前から、琉球王朝時代に伝えられてきた武術で、素手や無手を基本とし武器術があり、空手の様な型や分解組手はなく、その人個人が持つ心身感覚を呼び覚まし、磨きあげて、流れる様に、踊っているかのように動きの中で、相手の攻撃などを捌き、攻撃し、投げ、極めていく武術です。

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(C)2016 TORIN, INC.

「手(ティー)」のルーツは諸説ありますが、本編でケンジが披露する「殺人カラテ」は木刀とかも簡単にへし折るだけでなく、引き金を引く筋肉の動きで銃弾を避けるなど、もはや空手以上のステージに達しています。恐るべし…。

ケンジの寡黙かつストイックなキャラクターや、無駄な要素が全く無い「殺人カラテ」の魅力が見事にマッチし、これまでにないB級映画の世界観が楽しめます。

大味なB級映画とはちょっと違った、ハードボイルドな『KARATE KILL カラテ・キル』を是非…!(アマゾンプライムで見れるよ!※2020年、6/20現在)

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