マッツ・ミケルセンが妻を亡くし、復讐に燃える軍人を演じた映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』が1月21日(金)より公開されます!
映画『アナザーラウンド』の好演も記憶に新しく、来年4月公開予定の『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』ではグリンデルバルド役として出演するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いのマッツがこれまたユニークな作品に出演しました。
復讐鬼と化したマッツをサポートするのは戦いのエキスパートたち…ではなく、数字に強いオジサンと、ハッキングが得意なオジサンと、顔認証が得意なオジサンの“リケおじ”トリオ。3人ともただの民間人ですが、そんなメンツでホントに敵を倒せるの…?ストーリーをはじめ、キャラもジャンルも予測不能な本作の魅力に迫ります!
映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』概要
妻が列車事故で亡くなったという報せを受け、軍人のマークスはアフガニスタンでの任務を離れ娘の元へ帰国する。悲しみに暮れる娘を前に無力感にさいなまれるマークスだったが、彼の元を二人の男が訪ねてくる。その中の一人、妻と同じ列車に乗っていたという数学者のオットーは、事故は“ライダーズ・オブ・ジャスティス”と言う犯罪組織が、殺人事件の重要な証人を暗殺するために周到に計画された事件だとマークスに告げる。怒りに打ち震えるマークスは妻の無念を晴らすため、オットーらの協力を得て復讐に身を投じてゆくが事態は思わぬ方向に…。(公式予告より)
主な登場人物
マークス:口より先に手が出る軍人。妻の仇だろうが娘の彼氏だろうが殴る。強い。
オットー:マッツの妻子が事故に遭った電車に乗り合わせた統計のプロ。仕事をクビにされた日に電車の事故に遭遇する。
レナート:オットーの仕事仲間。ハッキングのスペシャリスト。それ以外はガサツでデリバリーのピザ箱を平気で縦にしたりする。
エメンタール:顔認証のスペシャリスト。短気でレナートとは犬猿の仲。手先が器用。
こうした武力1:知力3というメンツで犯罪組織「ROJ」こと「ライダーズ・オブ・ジャスティス」に立ち向かいます。ドラクエのパーティーだったらバフばっかで全然敵を倒せなさそうですが…果たしてどうなるのか…?
予測不能なのはストーリーだけでなくジャンルも!
予測不能な作品として謳われる『ライダーズ・オブ・ジャスティス』ですが、ストーリーはもちろん、登場するキャラクターやジャンルにも言えます。
「ライダーズ・オブ・ジャスティス」に復讐を誓うマークスの寡黙で凶暴な役どころはシビレますが、リケおじトリオが彼の復讐計画に加担しはじめると「復讐映画」のジャンルには収まらない展開が続くのです。
例えば母親を失って悲しむマークスの娘に対して、リケおじたちは下心など一切ない、純粋な協力を惜しみません。娘にセラピーをしてあげたり、自己肯定感を高めるトレーニングを行なったり…。ひとり復讐に燃えるマーカスをよそに、娘とリケおじはどんどん仲良しになるのです。復讐も遊びも全力。
さらには娘の彼氏や、「ライダーズ・オブ・ジャスティス」の一味に捕まっていた青年など、どういうわけかマーカスの自宅にはいろんな人間が集まってきます。(おそらく)マーカスは一人になりたいんだろうけど、ぜんぜんその要望が叶わないのがどこか可笑しくもあります。
一方で、リケおじたちもマーカスと同様に悲しい過去やトラウマを抱えており、シリアスとユーモアのコントラストが絶妙です。ほかにも顔認証のプロ・エメンタールだけなぜか敵を倒したがる武闘派な一面を見せるなど、キャラクターの意外な一面も描いております。特にエメンタールは銃の訓練において、マークスも驚く才能を見せる一面も…?
ストーリーはもちろん、ジャンルやキャラにも「予測不能」が当てはまる見どころある映画でした!
『ライダーズ・オブ・ジャスティス』と『アナザーラウンド』の共通点
マッツ・ミケルセンの主演作で北欧映画といえば、数カ月前に公開された『アナザーラウンド』が記憶に新しいのではないでしょうか?
同作を鑑賞した筆者はTwitterにこんな感想を投稿しました。
雑と言いつつ、実は『ライダーズ・オブ・ジャスティス』と『アナザーラウンド』には共通点がちゃんとあるんです。
登場人物がおじさん4人
『ライダーズ・オブ・ジャスティス』と『アナザーラウンド』主要人物はマッツを含むおじさん4人。前者はマッツ以外が理系おじさんなのに対し、後者は全員教師。若干強引ではありますが、教師と言っても音楽や体育、歴史などそれぞれ専門の授業があるので『ライダーズ・オブ・ジャスティス』のように統計に強い人もいれば、ハッキングのプロもいるなど、得意分野がはっきりしている点が共通しています。
登場人物それぞれが問題を抱えている
『アナザーラウンド』ではマッツをはじめ、4人それぞれが「中年の危機」とも言える悩みを抱えています。家族関係が冷え切っていたり、上手く人づきあいが出来なかったり…。『ライダーズ・オブ・ジャスティス』は妻を失ったマッツだけが闇を抱えているように見えて、実は他の3人にも辛い過去があります。その過去は人から語られることもあれば、時折彼らが見せる異様な行動にも表れるなど、演出のバリエーションの多さも印象的でした。この点は『アナザーラウンド』よりもずっとシリアスです。
全員で問題解決に取り組む
中年の危機を血中アルコール濃度における仮説で乗り越えようとする4人を描いた『アナザーラウンド』と同様に、『ライダーズ・オブ・ジャスティス』も4人で犯罪組織に立ち向かうこととなります。直接的な因果関係を持つのはマッツのみですが、他のリケおじたちも真面目に仕事をしているのに解雇されたり、純粋に犯罪者が野放しになっていることが許せなかったりと、各々の動機でマッツに協力します。そういう意味でも『ライダーズ・オブ・ジャスティス』は酒の代わりに銃と数字で問題解決に挑む『アナザーラウンド』ともいえるのです。
「数字に強い人は仕事ができる」を『ライダーズ・オブ・ジャスティス』が証明する?
今作では統計のスペシャリストでありながら、会社からその実力を理解してもらえず解雇されたオットーをもう一人の主人公として見ることができます。
電車の事故に巻き込まれたオットーは、その列車に公判を控えた「ライダーズ・オブ・ジャスティス」の一味が乗り合わせて死んだことから「仕組まれた事故」だと推測。オットー曰く「公判13日前のギャングが事故死する確率を数字にすると2億3428万7121分の1」らしいです。ひぇ~。これ「会社のイベントを風邪で休む確率」とか絶対数字にしないでほしい。こんな感じでオットーは持ち前のスキルを駆使して、今回の事故が仕組まれたものかを「数字」で説得していきます。やはり数字の飛び交う映画は内容に説得力が増してグッと締まるので良いです。
今作では「偶然」「必然」に対する考え方も見られ、オットーは「あらゆる物事は一連の流れの結果であって、データが不十分だとそれは“偶然”と片づけられる」という持論を持っています。事件が偶然ではなかったことを証明する彼の活躍にも注目してほしい作品です。
復讐映画でありながら、おじさんたちの交流などお茶目なシーンも多数ある本作。攻撃を仕掛けられた「ライダーズ・オブ・ジャスティス」が血眼になって探しているのをよそに、リケおじたちは呑気に料理したりボードゲームしてますからね…。
笑える要素も結構あって、個人的にはラストでマッツが着ていた衣装がゲームのボーナスコンテンツみたいで面白かったです。いろんな意味で予測不能かつ不思議な映画でした!
映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』作品情報
監督・脚本:アナス・トマス・イェンセン
撮影:キャスパー・トゥクセン
編集:ニコライ・モンベウ、アナス・エスビャウ・クレステンスン
音楽:イエッペ・コース
出演:マッツ・ミケルセン、ニコライ・リー・コース、アンドレア・ハイク・ガデベルグ、ラース・ブリグマン、ニコラス・ブロ、グスタフ・リンド、ローラン・ムラ
2020年|デンマーク・スウェーデン・フィンランド|カラー|シネスコ|5.1ch|116分|デンマーク語ほか|日本語字幕:平井かおり|原題:RETFÆRDIGHEDENS RYTTERE|
英題:RIDERS OF JUSTICE|PG12|
配給:クロックワークス
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