初代ゴジラ原作、香山滋版のゴジラを読もう。今。

ナ月

 ゴジラシリーズ待望の新作、「ゴジラ-1.0」(ゴジラマイナスワン)が発表された。楽しみで仕方がないぜ。

 舞台はなんと第二次世界大戦直後の日本。ボッコボコの焼け野原の日本にゴジラが上陸したらマジで最悪だよなあ〜という作品らしい。超面白そうだ。
 初代ゴジラ以前の年代を舞台にすることで、山崎貴監督の得意な土俵へ持ち込みつつ、ゴジラシリーズとしても目新しさを感じさせていて感心してしまった。その手があったか〜。
 何よりゴジラがめちゃめちゃ怖そうで良い。ヒーロー然としたゴジラはモンスターバースに任せて、国産はバリバリ人類を脅かして欲しい。どっちの路線も好きだけど。

「ゴジラ-1.0」はおそらくなんの予習をしなくても楽しめる作品になるのではないかと予想している。しかしそれでも、初代ゴジラだけは触れておいて損はないだろう。

 これは俺の部屋に貼ってある初代のポスター。かっこいい。
 今更語るまでもないが、初代ゴジラはすごい。何よりもすごい点は、初代ゴジラが生まれるまではこの世界にゴジラが存在しなかったというところだ。当たり前のことを言っているようだが、ゴジラが誕生しなかった世界というのを今や誰も想像できないだろう。
 元ヤンキースの松井秀樹選手のあだ名も全然違うものになっていたに違いない。ムキムキとか。

 初代ゴジラを生み出すにあたって、上のポスターを見るだけでも多くの人が携わっていることがわかる。

 ところでこのゴジラの「原作」ってなんだと思ったことはないだろうか。ゴジラは映像化前に何か元になった小説などがあるわけではない。じゃあ原作ってなんだ。脚本とは違うのか。違う。脚本家のところには別の名前がある。
 ここでいう原作とは「映画のストーリーを作った人」だ。初代ゴジラ「原作」の香山滋さん。彼の書いた原液そのままのゴジラはこの本で読むことができる。

 ちくま文庫『ゴジラ』だ。
 …………わかる。めちゃめちゃ偽物みたいな表紙で不安だろう。表紙に肝心のゴジラもいないし、題字もポスターみたいな迫力があるフォントじゃないし。だが中身は本物だ。

 背表紙はお馴染みのちくま文庫。本棚の文庫コーナーに是非おきたい一冊。
 本書は以下の内容からなっている。

・ゴジラ
・ゴジラの逆襲
・トーク&エッセイ
・G作品検討用台本
・獣人雪男

ゴジラ

TM & ©1954 TOHO CO., LTD.

 本書の初めの「ゴジラ」「ゴジラの逆襲」は映画を元にした原作者直々の「ノヴェライズ」だ。ややこしいが、映画の原作とは別の「小説版」になる。映画をノヴェライズするという文化の走りであるとも言われている。なんかそんな感じのことが書いてあった。
 ストーリーは映画版と概ね同じだが、やはり小説ならではの演出として登場人物の心情の描かれ方がめちゃめちゃ濃密だ。山根博士や芹沢博士などメインの登場人物たちの深い葛藤はもちろん、映画冒頭で一瞬にしてゴジラに沈められる船の乗組員たちにもこんなドラマがあったのかと深く知ることができる。いうまでもなく超面白い。
 あと小説版オリジナルの要素として「東京ゴジラ団」なる存在が出てくる。ゴジラを「我等の主領大ゴジラさま」と信奉する団なのだが……こいつらが何なのかは是非読んで確かめてほしい。
 シン・ゴジラで「ゴジラは神だ!」って言ってた連中のルーツかもしれない。

ゴジラの逆襲

TM & ©1955 TOHO CO., LTD.

「ゴジラ」の続編「ゴジラの逆襲」のノヴェライズだ。ゴジラファンはご存知、ゴジラが初めて他の怪獣と戦う作品。みんな大好きアンギラスのデビュー作だ。
 これも内容はほとんど映画と同じ物語だ。『ゴジラ』同様、より深い登場人物の心理描写を楽しめる。また怪獣大好きとしての注目ポイントとしては、この小説版ではアンギラスも口から白熱光を吐く。お前も吐けたんだな。つまり大阪は映画以上にめちゃめちゃになる。最高。怪獣ものは街がメチャメチャになればなるだけ良いからな。

トーク&エッセイ

 香山滋氏によるゴジラにまつわるエッセイなどをまとめたもの。めっちゃめちゃ面白い。ゴジラの物語を完成させる産みの苦労、そして完成させた後の苦労が軽妙に面白おかしく書かれている。
 ゴジラ以降ゴジラ的なものをたくさん求められる苦労は想像に難くない。香山氏も香山氏でマンモスとゴジラを掛け合わせた「マンモジーラ」とか、ライオンとゴリラを掛け合わせた「獣人ゴリオン」などの苦し紛れのアイデアをたくさん残していて、それはそれでめちゃめちゃ面白そうだと思ってしまう。
 また一作目で殺してしまったゴジラを「逆襲」でどうやってもう一度出してもう一度倒すのかの苦悩なども読み応えがある。

G作品検討用台本

 これ!! これが香山氏が映画「ゴジラ」のために書いた物語の原型!! 映画や小説版と見比べるとその違いが本当に面白い。
 映画と見比べながら「この表現をこういう映像にしたのか、すご〜い」「この表現は泣く泣くカットしたのかもしれないな〜」などと想像をめぐらすとかなり楽しい。
 概ねのストーリーの骨組みはほとんどこの検討用台本の時点で出来上がっているが、山根博士がこの時点ではややマッドサイエンティストよりの人間だったり、「ここでこんな感じのユーモアを入れてはどうか」みたいな提案がめちゃめちゃ入っていたりする。
 この検討用台本がそのまま映像化されたらもっと明るい雰囲気の映画になっていたのかもしれない。いうまでもなく初代「ゴジラ」はケチのつけようがない名作だが、それはそれで見てみたい気もする。

獣人雪男

 ゴジラとほぼ同じスタッフで制作されている東宝特撮映画の「獣人雪男」という作品がある。本作でも原作を勤めた香山滋氏によるノヴェライズ作品が本書に収録されている。雪男が人間を襲ったりするモンスターパニック作品だ。かなり面白くてぜひ映画版を見てみたいと思ったが、映画「獣人雪男」は現在国内での視聴がだいぶ困難らしい。
 海外では「HALF HUMAN」のタイトルでDVD化されているらしいので個人輸入すればなんとかなる……かもしれない……。国内でもフリマサイトやオークションなどに神経質に張り付いていれば見つかるかもしれない……。

買おう

 香山滋氏の『ゴジラ』もしまだ手に取ったことがなければぜひ買おう。読もう。
 初代ゴジラの副読本としての良さはもちろん、もっと単純に怪獣小説としての面白さも素晴らしいぞ。

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 ゴジラ関連小説といえばこれもめちゃめちゃ良い。読もう。

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