今でこそ、韓国映画は非常にレベルが高い作品が多い。しかし、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではなかったはずだ。
レベルの低いものもあっただろう。ましてや、当時評価されていたとは言い難い子供向けの特撮作品では……。
発展途上という言葉に相応しい作品を紹介したい。それが1987年に韓国で製作された『マカリアンGO』だ。
ストーリーは簡単に言うと、竹島(韓国で作られた映画だから当然、「独島」という事になる)の海の下にある海底都市(といっても単なる洞窟にしか見えない)に眠る、莫大な破壊力を持った石を巡って、天才少年トリと、宇宙平和を願う宇宙人アリアン姫たちが、悪の女宇宙人カリマが率いる一団と戦いを繰り広げるというものだ。
トリの仲間には少女と、ゆかいなおじさん(でも戦いで結構活躍するのである、足技でカリマの部下を倒すのが格好いい)、そしてロボットが配置されているのも当時の韓国特撮らしくていい。
石を巡る戦いという設定だが、重要なハズの、この石が、本当にそこらで拾ってきたような、あるいは小道具担当が適当に造形したようなモノで、ありがたみがないのも味である。あと戦闘シーンではトリやアリアン姫は敵に全く容赦がない。レーザー銃でバンバン敵を倒しまくるのも特徴だ。子供向け作品なのだが良いのか?
また登場する宇宙人や宇宙人の搭乗する宇宙船のデザインは確かに格好いい。
しかし待てよ?
こいつらのデザインは、どこかで見たことがあるぞ……。そうだ、日本のアニメで観たのだ。
宇宙人のデザインは『亜空大作戦スラングル』に登場した敵司令官キャラクターそのまんまだし、アリアン姫のお供は『超攻速ガルビオン』のインカだし、宇宙船は『百獣王ゴライオン』の戦艦サダックのデザインだ(配色が変わっていて一見わかりづらい)。
この戦艦サダックモドキは凶悪で、韓国の首都であるソウル市に現れて、その象徴であるソウルタワーを破壊する。やめてくれ、ソウルタワーは観光名所として好きな場所なのだ!
なお『百獣王ゴライオン』の戦艦サダックのデザインは韓国アニメ『無敵鉄人ランポート』でも流用されている。
80年代までは、こうしたデザインの流用は、よく見られるものだった。日本のアニメーション制作会社から、韓国に下請に出した際に、設定書が海を渡り、現地で使用されたものだろう。ある意味、自分たちでデザインをする必要がなく、合理的だが、それで良かっただろうか。まあ35年も前の話だが、気になって仕方がない。
その分、実写で登場するロボットのデザインが適当である。ところで、この作品はカテゴリーとしては特撮作品なのである。
実際に、主人公トリたちが空を飛んだり、カリマの部下たちと空中戦を繰り広げるといったシーンでは、特撮が使用されている。しかし、この作品ではアニメーションも多用されている。
例えば宇宙船が活躍するシーンや宇宙のシーン、アリアン姫が空を飛ぶシーンなど、撮影が難しいシーンに、お金がかかりそうなシーンなどは実写から突然アニメーションに代わるのである。例えば、先に挙げた戦艦サダックモドキはミニチュアがあるわけではなく、登場シーンになるとアニメーションで処理されるのである。
また海底都市で石が発光するシーンなどもアニメーションで処理されている。すべてが特撮で処理されているわけではないのであった。これを手抜きと観るか斬新な手法と観るかはあなた次第(いや、ほとんどは前者と観るだろう)。
ただ『マカリアンGO』を弁護するわけではないが、ここには当時の韓国特撮の制作技法を巡る歴史があるのである。
当時の韓国では『宇宙から来たウレメ』シリーズが大ヒットしており、このウレメではロボットの登場シーンなどお金がかかるシーンになるとアニメーションになるという手法が使われていて(ただし実写とアニメーションを併用した作品はウレメ以前にもあり『ロボット王サンシャーク』が嚆矢と言われている)、このヒット作をマネして作られた作品が多くあったのである。
『マカリアンGO』も、その一つだろう。みんながやっていた事を当作品でも実行しただけなのであろう。なにより、お金がかからないし。
作品を揶揄するようなことばかり書いたので少し良い点を述べると、トリとアリアン姫、そして仲間たちの様子が仲良さそうで楽しそうに描写されている。これは子供向けの作品としてはプラスだろう。
ラストは非常にあっけないもの。
マカリアンの謎を解いた天才少年トリの「マカリアン、ゴー!」という掛け声とともにマカリアンが覚醒し、石が亀の様なモンスターに変身し、カリマ一行はいうに及ばず(カリマはマカリアンの攻撃で頭部が骨になってしまうのだ!)、カリマの乗る宇宙船も海底都市もすべて破壊されて終わるというものだった。乱暴にも程がある。
トリたちはラスト、自分で戦う訳でもなくマカリアン任せだ。ちょっと爽快感がない。そして脱出したトリと仲間たちは空を飛んで家に帰るというシーンでエンド。とはいえタイトルの『マカリアンGO』を回収しているので、良し、としたい。
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