そこには強さも優しさも哲学も詰まっている!大人にこそオススメしたいアンパンマン映画5選

ネジムラ89

「アンパンマンなんて子どもが楽しむもの」なんて思っていませんか?

その通り!アンパンマンは子どものもの!大の大人がこねくり回して「いや、大人のものだ!」なんて言うにはおこがましいぐらいにキッズのものであって欲しい!そう願っている筆者です。

ただ、今回は改めて“大人も楽しめる”と言う括りでアンパンマンの映画シリーズを大人の皆様に薦めさせていただきたい。

と言うのも、子どもの頃とは違って大人は厳しい現実や複雑な仕組みに加え、度重なる責任と不条理に押しつぶされそうになり枕を濡らす、なんて夜が度々来てしまうもの。そんな時にこそあなたを救ってくれるのがアンパンマンです。アンパンマンの物語には忘れちゃいけない勇気や優しさ、大事にしていきたい哲学が詰まっています。大人になるにつれて忘れてしまった大切なことを、かつて子どもだったあなたが思い出せるよう、今こそアンパンマンを見返して欲しい。

というわけで、今回はちょうど観やすく見応えがある劇場版アンパンマンシリーズから、子どもももちろん楽しめるし、なんなら大人もしっかりデトックスできるような屈指のオススメ作品を紹介します。

1.ベストアンパンマン映画筆頭!『いのちの星のドーリィ』

アンパンマン映画では最有力!と言っても過言ではないほど、シリーズに詳しい人が名前を挙げる作品が2006年に公開された劇場版第18弾『それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ』です。

この映画は、ゲストキャラクターである人形のドーリィがいのちの星から命を与えられたことから始まる物語です。命を与えられたドーリィは生きることの楽しさを知り、自由を謳歌するわけですが、ついつい自分勝手をしてしまいます。そんなドーリィがアンパンマンたちと共に暮らす中で、生きる上での大切なことを知り、「アンパンマンのマーチ」ではおなじみの一説“何のために生まれて 何をして生きるのか”を考えた末にクライマックスである行動に踏み切ると言う人生を説く映画となっています。そりゃ面白くならないわけがありません。

また、ドーリィに命を与えた「いのちの星」も実は知る人ぞ知るアンパンマンの重要アイテム。何を隠そう、いのちの星こそがただのアンパンに命を与え、アンパンマンが生まれたという、アンパンマンのルーツに関わる存在だったりします。そんないのちの星にスポットが当たっただけに、今作ではアンパンマンがいのちの星の力を抜き出されそうになるという窮地を迎えるのも見所。実質、アンパンマンの「死」までをも描く結果となったある意味で問題作です。

2.アンパンマン界を代表するなんか小さくてかわいそうなやつが主役!『ゴミラの星』

アンパンマンの無数に居るキャラクターの中でも屈指のお気に入りキャラクターがいまして、それがゴミラです。見た目はカモノハシのようなくちばしと小柄な体が特徴なのですが、ゴミラと言う名前の通りゴミを食べることで怪獣よろしく巨大な姿へと変貌してしまいます。そんな特徴のせいか、ゴミラはみんなに迷惑をかけないように、一人で古城に暮らしていると言う、なんともかわいそうな設定を抱えたキャラクターです。

そんな小さくてかわいそうなゴミラに救いの手を差し伸べた映画が2001年に公開された劇場版第13弾『それいけ!アンパンマン  ゴミラの星』です。本作では宇宙のお掃除星であるヤーダ星がゴミでいっぱいになってしまったために、その星のヤーダ姫が助けを求めにやってくるというストーリー。そしてゴミ処理ならばと駆り出されるのが、我らがゴミラ。優しいゴミラはアンパンマンやヤーダ姫とヤーダ星に向かうのですが、その裏ではばいきんまんがヤーダ星をアンパンマンの星にぶつけようとするという凶悪な作戦を企てており、それに対抗していくことになります。

おとなしくて優しいのに、体が巨大化してしまうという体質のせいで孤独でかわいそうなゴミラ。そんなゴミラを孤独から救おうと、手を差し伸べてくれたのがこの映画でした。

ちなみに本作のゲストキャラクターであるヤーダ姫を演じているのは酒井法子さん。酒井さんがナレーターを務めた映画『ピチューとピカチュウ』(2000)はワケあってDVD化も果たせずある時期からお蔵入り状態になっていますが、本作はしっかりディスクリリースも果たし、映像配信サービスなどでもフツーに観ることができます。

さらに余談ですが、アンパンマンの世界にはヤーダ星とは別にヤーダ国という国も存在しており、そこにもヤーダ姫という別人ながら同名のキャラクターが存在します。そんな別のヤーダ姫が登場するのが劇場版第2弾『それいけ!アンパンマン ばいきんまんの逆襲』(1990)。よりによって同じ映画シリーズでキャラ被り事故を発生させてしまうのも衝撃的です。

3.アンパンマンの名曲をフィーチャー!『ブラックノーズと魔法の歌』

公開当時、映画館でボロ泣きさせられてしまった映画が劇場版第22弾『それいけ!アンパンマン ブラックノーズと魔法の歌』(2010)です。

本作のテーマはタイトルにもあるように「歌」!ヒナ鳥の化身であるカーナが、育ての親である闇の女王・ブラックノーズの命令でアンパンマンの世界から幸せを奪う暗闇の笛を吹かされることになるのですが、そんなカーナを導いてくれるのが我らがアンパンマン。今作でも「アンパンマンのマーチ」をがっつりフィーチャーして“なにが君のしあわせ なにをしてよろこぶ わからないまま終わる そんなのはいやだ”の一節が胸が苦しくなるほどに沁みるクライマックスを用意してくれています。

長寿アニメは数あれどアンパンマンほど頑なにオープニング主題歌を「アンパンマンのマーチ」から変えない作品も珍しいのですが。改めて考えると、この主題歌にこそアンパンマンの根源的なメッセージが詰まっているとも言えます。すでに半世紀という歴史を持つアンパンマンですが、100年、200年……と「アンパンマンのマーチ」は歌い継がれていって欲しい
とつくづく思う、そんな映画です。

4.アンパンマンのまさかの行動にビビる衝撃作『ココリンと奇跡の星』

アンパンマンと言えば、お腹の空いた人に顔をちぎって恵んでくれる行動でもおなじみのキャラクターですが、あの行動がいくとこまでいったらどうなるのか、という疑問に答えてくれるのが劇場版第23弾『それいけ!アンパンマン すくえ!ココリンと奇跡の星』です。

本作のテーマは「食」。星のエネルギーが枯渇しているヘンテ星から宇宙人・ココリンが星を救うべくアンパンマンの星へやってきて、ジャムおじさんのもとでパン作りを学ぶというストーリー。映画の後半では舞台をヘンテ星へと移し、ばいきんまんによってココリンが凶暴化しブラックココリンとなって暴れてしまうクライマックスへと物語が進んでいくのですが、注目はこのクライマックスでのアンパンマンの“ある行動”です。

アンパンマンが顔をちぎって食べさせてくれるシーンは多くの人が見たことがあるでしょうが、流石に原型がわからなくなる程に食べられることはなく、大抵新しい顔を焼いてもらって回復するのがお決まりです。しかし原作絵本では実はアンパンマンが顔をすべて食べられてしまう描写なども存在しているのですが、画的にショッキングな描写になってしまうせいかアニメシリーズではその表現は避けられてきました
しかし今作は違う!
アンパンマンがどこまで自分の身を犠牲にできるのかに迫る、衝撃の行動が用意されていました。アンパンマンのある意味タブーに踏み込む衝撃作となっています。アンパンマンはどこまで食べさせてくれるのか。その答えがこの映画には用意されています。

5.その歴史の1ページ目を垣間見るべし!『キラキラ星の涙』

そして最後に紹介したいのが、劇場版第1弾『それいけ!アンパンマン キラキラ星の涙』(1989)です。アニメに関わらず多くのシリーズ作品が第1作目は記念すべき作品としてそこそこの知名度を持つことになるのですが、ことアンパンマンに関しては意外と知られていないのが実際です。

だからこそ本作をまだ見たことがないという人にオススメしたいのが、アンパンマンの劇場版シリーズをある程度の本数を観てからこの第1作目を観てみること。近年のアンパンマンの劇場版シリーズはアンパンマンがゲストキャラクターとの世界との邂逅が描かれるという形式が定番で、ある意味型(かた)ができてしまっているのですが、さすが一本目というだけあって、近年の映画に比べると冒険の密度もアクションの多さも全然違い、ストーリーも音楽も美術も「こんな時代があったのか」と驚かされるものとなっています。

今でこそ未就学児向け映画の筆頭として君臨しているアンパンマンですが、この頃はまだそういったターゲティングも手探り状態なのか、やや実験的にも思える演出や展開も多く、おなじみのキャラクターにもまだぎこちなさが残る不思議な体験となっています。

アンパンマンにもこんな時代があったのか、ということ。そして今とは違うアンパンマンでも、昔から変わらない愛と勇気が備わっていたこと。それをこの映画からぜひ感じ取って欲しいです。

2023年も新作アンパンマン映画が公開だ!

そして今年2023年は映画とテレビの35周年と絵本の誕生から50年という節目を記念して6月30日からついに劇場版第34弾にあたる『それいけ!アンパンマン ロボリィとぽかぽかプレゼント』が公開されます。

今回紹介した映画を観ておくと、アンパンマン映画の“見応え”の部分が知れるはずなので、大人の人でも今回の映画を「どう楽しんだらいいのか」みたいな糸口が見つかるでしょう。

未就学児向け作品と言うジャンルで戦うアンパンマンは、多くの人が幼い頃にお世話になっていながら、成長していくにつれて卒業していってしまうという悲しい宿命を背負っています。お子さんが生まれたりしない限り、なかなか自発的に最新エピソードを観るなんてことはないとは思いますが、そんな人こそたまにはあえて映画館でアンパンマン体験をしに行くというのもいいのではないでしょうか。スクリーンであの頃と変わらない強さと優しさを見せてくれるアンパンマンと、そんなアンパンマンの活躍に目を輝かせる子どもたちの姿は、他の映画にはない“映画館体験”をもたらしてくれるはずです。私もそんな体験を楽しみに今年“も”映画館へ足を運ぼうと思います。

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