今更だけどアレ見よう『トゥルーマン・ショー』/ミラナ・ラヴィーナ

ミラナ・ラヴィーナ

こんにちは!映画好きVtuberのミラナ・ラヴィーナです!

本日も観る機会を逃していた名作映画の感想を書いてまいります。
今回のタイトルは『トゥルーマン・ショー(98)』です!

コメディっぽさの中にある怖さ

『トゥルーマン・ショー(98)』と言えば「なんか主人公の生活が勝手に全世界に配信されてるやつ」というキャッチーなあらすじだけを知っていて、いくらコメディの王様ジム・キャリー主演作と言えど、ぜっっったいに笑える話にはならなくない?!と、ホラーとかサスペンスっぽい展開に期待して観たというのが正直なところでした。

まず主人公は生まれた瞬間からその人生を世界中に生中継されており(!?)、名前はトゥルーマン(!?)。史上初、企業に養子縁組をされた(!?)孤児です。
周辺の人物は全員俳優(!?)。自分では普通に生活しているつもりですが、生活のすべてをテレビ会社にコントロールされています(!?)。

はいもう既に恐怖要素が5つも出てきてしまいました。
でもまだあります。

トゥルーマンは幼少期に父親を水難事故で失って水恐怖症になってしまったのですが、これももちろんテレビ側が組んだ展開で、父親役の男性は普通に生きているのです。
トゥルーマンが水恐怖症になったら旅行などに行けないから番組セットに閉じ込めておけて楽ですからね。知らないのはトゥルーマンだけ。

いや怖すぎ。「人権」って言葉、知らんか?

てっきり本作は今まで普通に生活していた男性の限られた期間の話だと思っていたので、そこまで徹底して人生丸ごとコンテンツにさせられてたの?!というヤバさがマジで怖かったですね。
企画が出た時点で誰もそれヤバくねって言わなかったのか?!

一応作中にはトゥルーマンの解放を主張する団体もいるので、普通にヤバいことやってるものとして作られてる映画というのは分かります。
その辺はメディアの過激さみたいなものへの風刺もあるのかも。

とはいえ、何も知らないトゥルーマンがニコニコ生きてるからなんかそんなに怖い感じがしないんですよ。
演出もあるだろうけどジム・キャリーって本当にすげえんだ。悲惨さが全然無いんです。
でも中盤、周囲がおかしいことに気付き始めたトゥルーマンが親友(もちろんその役を演じているだけの俳優)に相談したとき「君には絶対に嘘をつかないよ」と言われるのですが、その言葉自体がプロデューサーがインカムから指示していた台本だったという展開だけはさすがにヒエ~(怖)でした。
笑えんわ!

今見てもヒヤリとする切れ味鋭い皮肉

本作は1998年の作品ではありますが現代にも通じる皮肉が描かれており、そこには名作たる凄みを感じました。

印象的だったのはやっぱり会話の途中に挟み込まれる広告のシーン。有名なのでこのシーンのスクショだけ見たことある人とかもいそう。

どういうことかと言うと、トゥルーマンショーは24時間365日、1分も途切れず生中継されているのでスポンサーのCMを流す時間が無いんですよね。でも広告は流さないといけない。

ということで、トゥルーマンと会話をする俳優たちは画角にスポンサーのポスターが入るようにトゥルーマンの位置を誘導したり、特売で買った〇〇社のこの商品はこういう機能があるよ!と会話の最中にセールスポイントを差し込んだり、飲み物のラベルが見えるように缶を飲んだり……。
あまりにもあの手この手すぎて、不自然さがいい塩梅に不穏なのです。めっちゃ良かったな~。

大ステマ時代の現代、こうなる日もそう遠くないかもな……なんて思っちゃったりしてね。
そのうちChatGPTが回答に広告を織り交ぜてくるようになる、なんてツイートもバズってましたからね。(そしてトゥルーマンショーが例に挙げられていた)

そして最後、彼は自分の人生が番組だったことに気が付きセットから脱出するのですが、その脱出までの奮闘ももちろん生中継されています。
で、彼が脱出し、番組が終わった直後、映画の本当に最後のセリフ、これがトゥルーマンショーを見ていた視聴者の「で、番組表は?」なんです。

この視聴者の身勝手な「消費」の感じ!
人間1人の人生がめちゃくちゃになっているのに、それを数十年楽しんできたのに、彼の脱出までの奮闘のすべてを直前まで拳を握って応援していたのに!番組が終わった瞬間興味は別の対象へ移ってしまう……。

すさまじい皮肉であると同時に、「個人」がコンテンツとなっているこのSNS時代でも完璧に通用するオチだと思いました。
当たり前ではありますが、画面の向こうには自分と同じ人間がいることを忘れずにインターネットと付き合っていきたいと改めて思いましたね。

無いと思いきやしっかりあった、男と男

はい、では男と男の話をします。
前回の記事のラストでさすがに今回は男と男無いでしょと言ったのですが、すみません、びっくりするほど綺麗な前フリでした……。

トゥルーマンショーはテレビ番組ですから、プロデューサーがいるわけですね。
プロデューサーはトゥルーマンが生まれたときからトゥルーマンを見守り、その人生のすべてを操作してきた張本人なわけです。
ここにさあ……”感情”が無いわけがなくない?ってことなんですよ。

トゥルーマンが番組セットから脱出しようとする直前にプロデューサーが「君の人生をすべて見てきた、誰よりも君のことを知っている。私が作ったこの世界だけが真実。ここは安全だけど外は虚構だらけだよ!」みたいなことを言うんですが、どうですこのキショさ。
わたしは震えたね、あまりのキショさと重さに。

まあ男と男というよりは疑似親子というか、モロに毒親的関係でもあるのでいつもの気持ちい~!萌え~~!(グルグル目)って感じではないんです。
でも、プロデューサーは仕事としてトゥルーマンショーをやっているんだと思っていたので、トゥルーマンに(めっちゃ歪んでるけど)愛着あるんだ…っていうのが最後の最後に分かったところでちょっとこう、不意打ちで来ちゃったんですよね……。

で、当のトゥルーマンが1ミリも迷うことなく虚構の世界とおさらばする決断をして、ちょっと小粋な幕引きをするところもよかったです、オタク的に。
屈折した異常感情をド直球でぶつけられても怯むことなく輝き続ける陽の存在って最高!
この辺はエド・ハリスとジム・キャリーという配役がめっちゃ合っていたことも萌えの後押しをしてくれていたように感じます。
いやあ……萌えってあるもんだな、どんな作品にも……。(こじつけ大魔神)

ということで現代に通ずる皮肉アリ、不意打ち萌えアリの大満足な名作でした。
次回は『フィリップ、君を愛してる!(09)』を観る予定です。そうです、次もジム・キャリーです。そしてこじつけるまでもなく男と男の話です。やった~!

トゥルーマン・ショー作品情報

トゥルーマンは保険会社の平凡なセールスマン。しかし彼は自分の生活が少し変だと思い始めた。もし自分の人生が、実は“演出された作りもの”だったら…? 鬼才ピーター・ウェアー監督のもと、才人ジム・キャリーが絶妙な名演技を見せて絶賛されたヒューマン・コメディの傑作。

原題:The Truman Show
製作年:1998年
上映時間:102分
監督:ピーター・ウィアー
キャスト:ジム・キャリー, ローラ・リニー, エド・ハリス

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