実はあの監督も出身だった!ドラえもんやクレヨンしんちゃんを生んだ“シンエイ動画”が優秀すぎる!?

日本人の多くが知っているジブリや東映アニメーション、最近のTVアニメで話題作を担うMAPPAやUfotableなど、日本には無数のアニメーションスタジオがあるわけですが、もっと話題になっていいんじゃないの?もっと知名度があってもいいんじゃないの?と勝手に思っているスタジオがあります。それがシンエイ動画ですよ。

https://youtu.be/NPhRAguwqRs

あの「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」という二大国民的長寿アニメーションを制作している会社です。しかし、一方で前述のアニメーション会社と比較すると意外とピックアップされることも多くないのがシンエイ動画。改めてシンエイ動画が“どうすごい会社”なのかをぜひ多くの人に知っていただきたいのです。実はシンエイ動画は数多くの名監督を生み出してきた優秀なアニメーション制作会社だったのです

君はシンエイ動画を知っているか!?

西東京市田無町の巨大な青い建物……それが「シンエイ動画」の本社です。
『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『からかい上手の高木さん』などなど数多くのアニメーションがここで生まれています。

wikipediaより引用

シンエイ動画の始まりはTVアニメの黎明期にまで遡ります。『鉄腕アトム』をきっかけに生まれたTVアニメブームの流れの中で対抗会社として登場した東京ムービー──の制作部門としてシンエイ動画の前身であるAプロこと有限会社エイプロダクションが生まれました。『オバケのQ太郎』、『巨人の星』、『アタックNo.1』、『ど根性ガエル』などなど数々の往年のヒット作を次々と生み出していきノウハウを蓄積した末、1976年に独立し「シンエイ動画」として新たなスタートを切ります。

そして1979年に放送を開始したTVアニメ『ドラえもん』をきっかけに国民的アニメの制作元として現在まで続く確固な地位を獲得することになります。これだけの躍進のきっかけとなった存在なだけに、そりゃあ本社も真っ青にするわけです。

どんな作品を作ってきたのか?

シンエイ動画の歩みを遡るとわかるように、『ドラえもん』という大ヒット作の存在が大きいわけですが他にも多くの名作や傑作そして結果を残し、それを現在進行形で続けていると言えます。具体的にシンエイ動画はどんな作品を作ってきた会社なのでしょうか?

藤子不二雄原作作品

2011 SHIN-EI ANIMATION Co. Ltd. copyright All Rights Reserved.

シンエイ動画と言われて一定の世代の人が想像するのではないかというのが、藤子不二雄作品の印象でしょう。『ドラえもん』のヒットを皮切りに『怪物くん』『忍者ハットリくん』『パーマン』『エスパー魔美』『笑ゥせぇるすまん』などなど80年〜90年代にかけて挙げればキリがないほど数多くの藤子不二雄の原作作品のアニメーション版を制作しています。かつては「藤子不二雄劇場」など藤子不二雄作品の放送枠が確立されていたほどでした。ちなみに今でこそ藤子・F・不二雄さんと藤子不二雄Aさんへと名義が別れてますが、コンビが解消される87年までは藤子不二雄名義だったんですよね。

長編映画ドラえもんシリーズ

©藤子プロ・小学館・テレビ朝日 1983

『ドラえもん』もTVアニメ以外でも功績を残していると言えます。それが長編映画シリーズです。1980年に公開された『ドラえもん のび太の恐竜』以降、ほぼ毎年新作が公開され、2023年には42作目の長編が公開されました。『ドラえもん』ほど長きに渡って映画シリーズが続いている作品はありません。今でこそ『名探偵コナン』や『クレヨンしんちゃん』、少し前だと『ポケットモンスター』シリーズなど毎年恒例のアニメーション映画が制作されていますが、その流れを作ったのは外でもない『ドラえもん』なのは間違いないでしょう。

コロコロコミック出身作品

©すがやみつる/シンエイ

藤子不二雄作品が『ドラえもん』の縦のつながりと捉えるのなら、横のつながりと言えるのがコロコロコミックで当時連載されていた漫画を原作にしたアニメ作品です。『ゲームセンターあらし』『つるピカハゲ丸くん』『おぼっちゃまくん』『怪盗ジョーカー』など『ドラえもん』が掲載されていた月刊誌コロコロコミック出身の作品も数多くをシンエイ動画が担当してきました。

クレヨンしんちゃん

© 臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

「シンエイ動画と言えば藤子不二雄作品」というイメージに新たな風を吹かせたのが、1992年に登場したクレヨンしんちゃんです。当初は現在のような長寿アニメを狙った企画ではなかったのですが、どんどん視聴率が上がっていき“社会現象”と称されるような人気作品となります。その後は『ドラえもん』と同じく劇場版シリーズも作られるようになり、シンエイ動画の二つ目の柱として、現在にも続く人気タイトルとして新作が作られ続けています。

実は他の意外な作品も……?

© 2022 山本崇一朗・小学館/劇場版からかい上手の高木さん製作委員会

実はこれ以外にも、実はあの作品も実はシンエイ動画だった!という作品も多いです。
少年ガンガン発のギャグ漫画でOVAシリーズまで作られることとなった『ジャングルはいつもハレのちグゥ』や劇場版まで制作されるほどの長期放送作品となった『あたしンち』、さらに最近ではラブコメディ作品である『からかい上手の高木さん』やストップモーション・アニメーション作品である『PUIPUIモルカー』など、従来の「シンエイ動画と言えば……」という作品とは一味違ったヒット作も続々と登場しています。

直近の作品で活躍するあの人もかつてはシンエイ動画で活躍していた!

作品だけでも名だたる作品が並んでいるわけですが、シンエイ動画が輩出してきた製作陣も名だたる人物が名を連ねています。近年のヒット映画を作った監督も実はもともとシンエイ動画出身だったりします。そんな

原恵一『かがみの孤城』

2022年に映画『かがみの孤城』を監督した原恵一監督もルーツをたどるとシンエイ動画にたどり着きます。というのも知っている人には当たり前ですが、原恵一監督の名が広く知られるきっかけとなったのがほかでもない映画クレヨンしんちゃんシリーズの『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』です。

原恵一監督といえばしんちゃんの印象が強いという人も多いかもしれませんが、実は『エスパー魔美』や『ドラミちゃん』の劇場版シリーズなど藤子不二雄作品にも多く携わっていました。『ドラえもん』のTVアニメシリーズの演出も多く担当しており、「あれ?いつもと違う!?」と思わせる印象的なエピソードの数々を生み出しています。

湯浅政明『犬王』

2022年に公開された監督作、映画『犬王』が海外の映画賞やアニメーション賞で高い評価を獲得するなど、今や日本を代表するアニメーション監督の一人として世界スケールで活躍する湯浅政明監督も、一時期はシンエイ動画の作品に従事していました。

中でもやはり特筆すべきは『クレヨンしんちゃん』での活躍です。映画シリーズでは『ヘンダーランドの大冒険』のクライマックスでオカマ魔女と繰り広げる躍動感のある追いかけっこや、初期映画シリーズでは設定までも担当していました。監督作こそありませんでしたが、『クレヨンしんちゃん』の映画シリーズを語る上では欠かせない人物です。

渡辺歩『漁港の肉子ちゃん』

2019年に『海獣の子供』、2021年に『漁港の肉子ちゃん』を監督して世界的な評価を獲得した渡辺歩監督も、今でこそSTUDIO4℃作品の印象が強いですが、かつては『ドラえもん』で活躍した方。

ちょうど『ドラえもん』が声優交代などを行いリニューアルをする前後の時期を大きく支えた一人で、リニューアル前の劇場公開作品では『帰ってきたドラえもん』『のび太の結婚前夜』といった感動短編シリーズを監督し、リニューアル後は『のび太の恐竜2006』『のび太と緑の巨人伝』などリニューアル直後の長編監督という難しい役割を担いました。
『ドラえもん』リニューアル直前のTVアニメの演出担当回である「ぼーナス」や「ためしにさようなら」が傑作なのですが、タイミング的にソフト化を果たしていないのがもったいないです。

水島努『劇場版ガールズ&パンツァー』

今や『ガールズ&パンツァー』や『SHIROBAKO』、『荒野のコトブキ飛行隊』など劇場版が制作されるほどのオリジナル企画を立て続けに成功させている名監督である水島努監督も、もともとはシンエイ動画出身です。

原恵一監督によって映画クレヨンしんちゃんシリーズが“感動作”として認知され始めたタイミングで『嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード』を監督し“ギャグ重視”へ大きく舵を切った張本人が水島努監督。そのイズムは『ジャングルはいつもハレのちグゥ』、『侵略!イカ娘』、『よんでますよ、アザゼルさん』といった作品でも発揮され、今日のヒットメイカーがいるわけです。ちなみに2023年は『ガールズ&パンツァー最終章』の第4話の劇場上映も発表されておりこちらにも注目です。

2023年の作品ではどんな人が活躍するのか?

では、かつてのシンエイ動画ではなく現在のシンエイ動画はどうなのか?最後に直近のシンエイ動画の動向を紹介しておきます。

まずは長編ドラえもん映画シリーズ。
3月3日より『映画ドラえもんのび太と空の理想郷(ユートピア)』が公開をスタートしています。『リーガルハイ』や『コンフィデンスマンJP』の脚本で知られる古沢良太さんを迎えて、空に隠された誰もがパーフェクトになれる楽園“パラダピア”を天性の落第生のび太が訪れたらどうなるのか…..を「なるほど」という切り口で描きます。

本作の監督を務めるのは、TVアニメシリーズに2010年代後半から絵コンテや演出として参加してきた堂山卓見さんが長編映画シリーズに初登板。映画シリーズに携わるのは今回が初めてとのことですが、これまでの映画ドラえもんシリーズと比較して見るのも面白いでしょう。

そして映画クレヨンしんちゃんシリーズ。
おなじみのゴールデンウィークシーズンの上映を今年はスキップして、なんと8月4日公開の夏休み興行に挑みます。そんな挑戦作が『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦〜とべとべ手巻き寿司〜』

7年の制作期間を経て、しんちゃんが3DCGアニメーションへとビジュアルを一新!『STAND BY ME ドラえもん』でシンエイ動画とタッグを組んだ白組と、実写映画『バクマン。』やドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』などを手がけてきた大根仁さんを監督に迎えた新たな体制で新たなしんちゃんを生み出す企画が控えています。

またTVアニメでは、2022年に『劇場版からかい上手の高木さん』を監督したばかりの赤城博昭さんが“アニメ化してほしいマンガ”第1位を獲得したこともある『僕の心のヤバイやつ』を満を持してTVアニメ化。2023年4月よりテレビ朝日系列のNUMAnimation枠で放送を開始します。シンエイ動画の新たな色として青春ラブコメがこれから確立していくのかもしれません。

長く続く作品もマンネリ化しないよう新たな挑戦を続け、さらには従来とは違った路線も開拓しようとしている様子が見られます。これからも次々と名作や名監督が生まれていくことを期待して、ぜひシンエイ動画も“推し”てみてはいかがでしょうか。

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