東京国際映画祭「アジア交流ラウンジ」イベントレポ!お茶目なポン・ジュノとウキウキな細田守を拝む

11月7日ポン・ジュノ監督×細田守監督の対談が実現

11月7日、東京は日比谷、有楽町、銀座地区で開催された「第34回東京国際映画祭」の「アジア交流ラウンジ」にて、ポン・ジュノ監督と細田守監督の対談が実現。

筆者は取材枠としてイベントを訪れましたが、ポン・ジュノ監督が手がける新作アニメの話をとにかく楽しそうに聞く細田監督や、『竜とそばかすの姫』など細田監督作への愛が止まらないお茶目なポン・ジュノ監督を拝められた取材となりました。

細田守、ポン・ジュノの近況報告

まずはアイスブレイクもかねて、お互いの近況を報告しあう両者。細田守監督とポン・ジュノ監督が最後に会ったのは映画『パラサイト 半地下の家族』のキャンペーン以来とのこと。その後、細田監督は『竜とそばかすの姫』を発表、ポン監督はシナリオを2本書き、そのうち1作はなんとアニメ映画だと明かします!ポン監督はアニメ映画の作法を細田監督からいろいろ教わりたいと、興味津々の様子。

『パラサイト 半地下の家族』のキャンペーン後は世界的なパンデミックにより、それぞれ映画の向き合い方にも色々感じることがあったと語ります。

細田監督は「パンデミックによって(『竜とそばかすの姫』)の制作がずれたけど、偶然にもカンヌ国際映画祭もずれて、映画祭に出すことができました。そこで改めて“自由を再認識しよう”という空気で本作の上映ができて、映画の力の大きさを知れました」と振り返りました。

 一方、ポン監督は2022年に撮影目標の新作のため、現在はロサンゼルスに滞在中。もうひとつ制作を控えている作品は、韓国のスタッフと作るCGアニメだと話します。これを聞いた細田監督もいろいろ聞きたいことが出てきたようでした。

作品の設定とリンクした『竜とそばかすの姫』の制作背景

『竜とそばかすの姫』を鑑賞したポン・ジュノ監督は「最近は映画祭でもオンラインを積極的に活用するようになったけど、パンデミックの終息後はオフラインの機会を主流にするのか迷うところ」と話します。

その葛藤は『竜とそばかすの姫』にも表れていたと話し、特にヒロインのすずが“ある人物”とハグをシーンは、仮想世界を舞台にした本作の中でも特に感動したと明かしました。

ポン監督の感想を聞いた細田監督は『竜とそばかすの姫』がパンデミックの前から考えていた作品だとしながらも、制作現場では作中の設定にリンクするような手法を取ったと話します。仮想世界<U>や海外のキャラクターのデザイン担当者をネットで探し、気に入った人に声をかける手法を取ったとのこと。

細田監督は「ネットで才能が花開いたすずのように、今回オファーした人たちは、何の映画経験もない人たちなんです」と明かしました。これにはポン監督も「映画と同じアプローチを取ったんですね」と感動した様子。細田監督も「こうした才能に出会えるのも、現代における可能性かもしれません」と語りました。

気になるポン・ジュノ監督の次回作はCGアニメ

話題はポン・ジュノ監督の次回作であるアニメーション映画に移り、ここで驚きの事実が明らかになります。ポン監督はおもむろに「これは公式には紹介していないんですけど、生まれて初めて作った映画が短編のストップモーションなんです」と明かし、これには細田監督も驚きと喜びを爆発させていました。

ポン監督は92年に大学のサークルで『楽園を探して』というタイトルの短編アニメを制作。しかしどれだけ頑張ってもストップモーションの性質上、1日に1,2秒のシーンしか撮影できないことから、俳優を動かして撮影する実写作品に移っていったそう。

このエピソードを聞いた細田監督は『グエムル 漢江の怪物』『オクジャ okja』を観たときに「ほかの実写監督とは違う!」と感じた理由に「ポン監督のアニメスピリットがあったからこそ」と納得した様子でした。

次回作のCGアニメに関しては「深海」というフランスの科学本を読んだことが出発点になっていると話し「深海に住む生物たちの独特なカラーは、既にアニメのキャラクターのようでした」と感銘を受けた様子。

この書籍から着想を得たポン監督は、自作のCGアニメの内容について「あまり見たことのないトーンやビジュアルを作りたいです。CGだけど、手で触りたくなるような感触を表現できるのではないかと考えています」と話しました。ポン監督は「細田監督のキャンペーンが終わったら、ぜひ直接ご指導受けたい!」と熱い想いを打ち明け、細田監督も嬉しそう!

映画におけるキャスティング論

そして話題は両者のキャスティング論に。ポン・ジュノ監督の作品といえば『パラサイト 半地下の家族』や『殺人の追憶』に出演する俳優ソン・ガンホの存在が大きいといえるでしょう。

細田監督は「凄い表現力のある俳優さんを起用して、作品ごとに違う顔を見せるためにどんな演出をしているのか教えてほしいですね」と尋ねると、ポン監督は「『パラサイト』では(ソン・ガンホ演じる)父親をはじめ、その息子、そして家政婦役はシナリオを書く前に役者に会っているので、当て書きをしています」と返答。

それを聞いた細田監督も「ポン監督の作品には『この人は本当に存在しているのではないか?』という、リアリティとかそういう次元じゃない存在感があって、フィクションを実話のように見せる手法がすごいと思います」と感激していました。

お茶目なポン・ジュノ節もさく裂

淡々とした表情から飛び出すお茶目な言動にファンも多いポン・ジュノ監督。今回のトークショーでもユーモア溢れる発言が多数ありましたので、一挙ご紹介します!

絶対に人生で初めて作った短編を見せたくないポン・ジュノ

公式には明かされていなかったポン・ジュノ監督の短編アニメの話題が出た際、多くの人が気になったのは「その作品を観る方法」です。

細田監督も「何とか見る方法はないんですか?」と興奮気味に尋ねますが、ポン監督は「家に(アーカイブが)ありますが…外部への公開は絶対に阻止したいです。これが世に出ようものなら大災害級です…」とコメントし、会場も笑いに包まれました。そんな見られたくないのか…笑 

現時点ではポン・ジュノの家族になる以外に観る手段はなさそうです。

『竜とそばかすの姫』に感動して焼き魚を食べたポン・ジュノ

とにかくトークショーで『竜とそばかすの姫』に感動したことを熱弁するポン・ジュノ監督。あらゆるシーンにおいて具体的な感想を述べるため、どんどん歯止めが利かなくなり、トークショーの終了時間が若干押したほどです笑

なかでも主人公のすずが父親と交わした数少ない会話シーンにて、父親が「焼き魚を食べるか?」とすずに尋ねるシーンがあります。小さな出来事だけど、大きな感動・情感を感じたと語ったポン監督は「映画を見終わってから、私も焼き魚を食べました」と話し、細田監督も満面の笑みでした。

役所広司に演じてほしい役が奇抜すぎるポン・ジュノ

すずの父親の声優を務めるのは、細田監督作品では『バケモノの子』で熊徹の声を担当した役所広司。ポン・ジュノ監督はかねてから役所広司を起用して映画を撮りたいと考えているようで、渇望するあまり役所広司とタッグを組むことが多い監督に嫉妬さえ覚えるそうです笑

そんな願望を抱くポン監督ですが、役所広司に演じてほしい役について「若い漫画家の門下生として苦労するストーリーで、役所広司さんにはその漫画家に虐待される年老いたアシスタントを演じてほしいです」とあまりにも奇抜な設定を明かしました。

細田監督をはじめ会場も(謎の)盛り上がりを見せ、細田監督も「凄いことを考えますねー!」と驚きを隠せない様子でした。(マジで実現してほしい…)

終始平和なムードでイベントは行われました

今回は両監督ともオンラインの参加となりましたが、終始和やかなムードでトークショーは行われました。ポン・ジュノ監督と細田守監督が終始キャッキャしながら、お互いの好きな話を延々と続ける様子はとにかく平和で、2人の監督に可愛らしさすら覚えました。

取材陣の要望に応じて同じポーズをしたり、画面越しにハグをしてくれる両監督。可愛いは正義…。いつかリアルハグする姿が見られる日を楽しみにしています。

今回のトークショーではポン・ジュノ監督が細田守監督の作品を熱く語る姿が印象的でしたが、ポン監督が新作のCGアニメを完成させた日には、ぜひ細田監督の熱いコメントが聞きたいですね!

※11月19日午後6時(日本時間)まで期間限定の見逃し配信あり

https://youtu.be/8WWFUZwbaDo
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